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BEAMSのクリエイティブディレクターが語る「服だけではなく“生き方”を提供する方法」とは

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2016/04/29(最終更新日:2016/04/29)


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 ビームス創造研究所クリエイティブディレクターの青野賢一さん。その仕事は、執筆・PR・各種ディレクションといったクライアントワークから、DJに至るまで幅広く、聞くものを圧倒する。そんな青野さんに、ご自身の仕事内容やその取り組み方などを伺った。

青野 賢一 プロフィール

あおの・けんいち/ビームス創造研究所クリエイティブディレクター、ビームス レコーズ ディレクター
1968年東京生まれ。大学1年の夏(1987年)より原宿「インターナショナルギャラリービームス」で販売のアルバイトを開始。卒業後、株式会社ビームス入社。販売スタッフ、店次長を経て、1997年より販売促進部プレスに異動。1999年、音楽部門「ビームス レコーズ」の立ち上げに参画し、翌年店舗も設ける。2010年、個人のソフト力を主に社外のクライアントワークに生かす、社長直轄部門「ビームス創造研究所」発足に際してクリエイティブディレクターとして異動。また、執筆家として現在、「ミセス」、「オーシャンズ」、「In TheCity」、ぐるなびが運営する食のキュレーションサイト「ippin」などに連載を持つ。

服だけではなく、“生き方”を提供する。すると必然的にジャンルは広がっていく

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———ビームス創造研究所での仕事について教えて頂けますか?

ここの部署は、2010年に立ち上げられた部署です。BEAMSは小売が中心ですから、モノを売るという生業もとても重要なことですが、そうではない個人のソフト力を売り出していこうと、何人かが集められて発足しました。それぞれのメンバーが出来る仕事を前面に押し出して、個人で動いていますね。 

なので、部署と言っても、基本は個々にプレイヤーとして働いています。そのため仕事内容もバラバラだったりします。同じ部署のマゴさん(南馬越一義/ビームス創造研究所シニアクリエイティブディレクター)は、地方のものづくりをディレクションしたりもしていますが、私とは仕事そのものの内容、アプローチの仕方や仕事相手も違っています。唯一同じなのは“ビームス創造研究所”で働いているということくらいですかね。

———執筆から、音楽まで様々な事をされていますが、BEAMSさんでお仕事される前に何かしていらっしゃったんですか?

いえ、最初からBEAMSですよ。大学生の時アルバイトとして「インターナショナルギャラリー ビームス」に入りました。大学に雑誌編集のアルバイトをしていた同級生がいたり、自分も高校生の頃からマガジンハウスさんにたまにお世話になったりしていて。

そんなこともあり少しずつ編集者の方やスタイリストさん、ライターさんなどと知り合う機会が増え、バイトなのに店頭で雑誌への貸し出し業務もさせて貰えるようになって、そのまま社員として入ったという感じですね。

———BEAMSさんに入っても様々な幅広い仕事が出来たんですね

もちろん最初の方は基本的に店頭に立っての販売で、97年頃に販売促進部に移ってプレス専任になります。90年代に入ってから、BEAMSでは服だけじゃなく、雑貨や家具など、いわゆるライフスタイルを提案する業態、店舗が増えていきます。

そんな中「音楽もあっていいだろう」という話が持ち上がり、1999年に〈BEAMS RECORDS〉という音楽部門の立ち上げに参画します。その後2000年代に入ると、ネットも普及しウェブ上のサービスも重要になってきて、販売促進の一環として、ウェブのスーパーバイザーも兼務するようになり、この部署に入る前までは3つの職務を掛け持ちしていましたね。

会社に帰属しながらも、個人として活躍していいという面白い部署

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ウェブスーパーバイザーとしては、オフィシャルサイトの監修や「ビームス クラブ」の会員の方向けのウェブサイトのエディター、ライターをやりました。それまでも物書きの仕事は色々とありましたが、次第に執筆のオファーなどが増えていきましたね。

———そのようなお仕事のオファーは青野さん個人の所に来るものですか?

オファーそのものは、私個人の所に直接来ることがほとんどです。ライター仕事は編集者の方から、映画のパンフレットだったら配給会社さん、CDのライナーノーツだったらレコード会社さん、といった感じで。

紙もの以外でもウェブマガジンでエッセイやコラムを書いたりしています。ライター業の他には、創造研究所に移って最初の年にトヨタ自動車さんの車のPRの仕事もしましたね。サイトベースのプロモーションを軸に、コンテンツ作り、編集、写真撮り、テキス
ト執筆、ツイッターの中の人などを自分がやりました。

———本当に一人代理店というか、何でも屋みたいな仕事ですね!

私たちの部署のユニークな所は、個人と会社という関係性でも仕事が出来るスタイルをとっているところですね。会社と会社の取り組みだと、お互いの稟議書やハンコがいっぱい必要だったりして中々スムーズに進まないことも少なくないと思いますが、私たちの部署は会社とはいえ、あくまで個人として仕事をしている。

そうすることで実現出来ることがたくさんあります。例えば「シブカル祭。」という渋谷パルコが主催するカルチャーイベントの企画・運営も2011年から毎年やっていますが、これなどは個人で先方のイベント運営組織にコミットするというスタイルで、BEAMSの名前は出てきません。

———クライアントの方々は、どのようにして青野さんへオファーを出すのでしょうか?

これまで仕事で関係のあった方からももちろんオファーは多いのですが、会ったことのない方はどこかで探してくるのだと思いますよ。今はSNSなどをやっている人がほとんどなので、昔よりも繋がりやすい世の中になりました。それこそfacebookのメッセージから直接仕事の話が来ることもありますが、仕事の成果物をご覧頂いてオファーくださる方がほとんどなので、そんなにおかしなオファーは来ないですね。

当たり前ですが、自分の仕事内容が次の仕事に繋がっていく訳ですから、例えばライターとして書く仕事は、徹底的に調べて、クライアントに満足して頂ける内容にしていますね。

———一切の妥協をしないんですね!

切り口はインスピレーションだったりするんですけど、それを支えるものは知識なので、資料や文献はかなりの量を調べ上げます。エッセイでもなんでもそうですが、調べないとただの感想文になってしまいます。著名な方が感想文を書けば価値はあるのでしょうが、私はそういう者ではないので成果物で評価してもらえるように努めています。

雑誌の“雑”な部分が実は一番おもしろい

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———執筆の仕事ですが、全て独学で学んでいったのですか?

独学ですね。ずっとやり続けてきたことが、血となり肉となっていきました。実は、私が色々なことに興味を持ったきっかけは10代の頃に触れたファッション誌でした。それこそ90年代前半位までの雑誌は、ジャンル横断的に色んな人が寄稿していましたよね。

ファッション誌も例外ではなく、批評家や文学者、アカデミックな人たちも記事を書いているような頃があって、私はそれらの中に面白さ、ワクワクする気分を感じていました。そんな影響もあって、私のテキストはファッションの話でも全然関係ない角度から入っていったりします(笑)。

———ファッション雑誌にも、色んなことが書かれていて良いのですね。

そういうことから思いがけない情報に出合えると思います。ファッション以外の情報が載っているファッション誌があっても良いですし、それが強みになると思っています。今はそういった雑誌の“雑”の部分が薄まっている気もしますが、本当に面白い部分は余剰部分である“雑”の部分ではないのかな、と。ファッションにも同じような事が言えて、極論、ファッションは余剰部分ですよ。

雨風、寒暖をしのぐだけの衣服なら何でもいい。でも余剰である”ファッション”を大切にしないと、文化になっていかないと思います。今やっている仕事内容も、ファッションと遠いもののように思われるかもしれませんが、考え方は同じだと思いますね。
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ファッション業界にいながら、ファッションだけにとどまらないご活躍をされている青野賢一さん。しかし、考え方そのものは、どれも同じである事が分かった。仕事ひとつひとつに、丁寧かつ全力で打ち込む。そうすることで次の仕事が生まれ、それがまた次の仕事へとつながっていく。

エディターやライターといった仕事に関わらず、社会人にとって当たり前のことのように思われるが、これがなかなか難しい。ビームス創造研究所には、仕事へたゆまぬ情熱を注ぎ続ける、熱い男の姿があった。

Interview/Text: 内田雄介
Photo: 神藤剛


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