1. 貨幣経済に真の“豊かさ”を問う、半自給自足生活の体験記:『ぼくはお金を使わずに生きることにした』

貨幣経済に真の“豊かさ”を問う、半自給自足生活の体験記:『ぼくはお金を使わずに生きることにした』

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出典:eskipaper.com
 「僕はお金を一銭も使わずに生きることにした。一年経ったが、暮らしは快適だ」

 こうして、一年間お金を使わずに生活する実験をした29歳の若者の記事が世界中で拡散され、大きな反響を呼んだ。今回は、豊かさを求めてお金を使わない半自給自足の生活を一年間通した著者の体験記を紹介したい。

 本書『ぼくはお金を使わずに生きることにした』では、自然と共にある生活から消費社会を見つめ直し、「分かち合い(シェア)」をベースにした新しい社会のあり方を提案、人間同士の絆とコミュニティの再生をめざしたその実体験が余すことなく収録されている。貨幣経済を根源から問い直し、真の「豊かさ」への斬新なヒントを与えてくれるであろう。

真の豊かさを問う、半自給自足生活の記録①

無一文で生活を始める。

 「豊かさ」=「お金の多さ」なのかを問い直すために、あえてお金を持たない生活に浸かったのだろう。光の豊かさを知りたければ、影と比較すればいいように、豊かさとお金の関係について考え直したければ、お金に触れない生活をしようと思ったのだろう。

 一般的にお金を使わない生活については、大きく分けて二つの賛否論がある。「お金が人を動かし、テクノロジーを発展させ、文明に豊かさを加えた」に対して、「お金で犯罪が起き、豊かさを損ねてきた」だ。

 いずれにせよ、豊かさの定義すらままならない状態では、議論も平行線をたどりがちだ。そんな不毛な議論をせず、実際にフリーエコノミー生活をしてみて、豊かさの意味を見つけようとしたのだ。

真の豊かさを問う、半自給自足生活の記録②

石油なし生活を始める。

 石油なし生活とは具体的に、車を使わずに自転車で移動したそうだ。つまりテクノロジーを使わないのだ。

 テクノロジーから離れることにも、大まかに二つの賛否論がある。「浪費をせず、石油の豊かさを損なわずに済む」に対し、「テクノロジーが進歩すれば、石油は枯渇せずに済ませられる」だ。

 豊かさの先が循環社会にあるとすれば、どちらも間違ってはいない。ただし前者のように、現代の感じる豊かさを生み出す石油を浪費しないことは、現代人には酷である。著者は、そういった困難にあえて挑んでいる。

 また、「豊かさを保全できる進歩はいつ訪れるのか?」と聞かれれば、後者の進歩論ではコメントできない。筆者はそこで、「産油国の環境を破壊し、石油を奪うような企業に金を貢がなくていい」と提言している。つまり、環境の豊かさを損なう方向に加担はしていないと。

真の豊かさを問う、半自給自足生活の記録③

レストランの残り物をもらう。

出典:www.amazon.co.jp
 レストランの残り物であれば、自身のお金の豊かさは減らない。

 ここにも、豊かさを巡って大まかに二つの対論がある。「コストがかからず、お金の豊かさは減らない」に対し、「好きなものを食べられないし、なんだか後ろめたいので、心理的豊かさは減る」だ。

 前者については問題ない。自身の資金の豊かさは削がれない。また、レストラン側に目を転じてみても、残り物を引き取ってくれるので、処理費用がかからない。つまり、双方とも資金の豊かさを維持できるWin-Winな関係である。

 後者については、心の豊かさは維持できるのではないか考える。というのは、レストランでは残り物が豊富なのだ。なので、選べることで心の豊かさは保てるだろう。残るは、後ろめたさだ。それについても「慣れる」ことで、心の豊かさをガードできる。面識を得れば、習慣化されてさほど奇妙にも映らない。

真の豊かさを問う、半自給自足生活の記録④

田舎で生活する。

 田舎は物価が安い。なので、お金の損失が少ないと考えたのだろう。

 ここでも、豊かさを巡る大きく二つの論がある。「田舎の方がコストが安いので正解」に対して、「皆がそのようにしたら、物価も上がるのでは?」だ。

 ここでも、言わせていただこう。前者においては、安いのは一目瞭然である。ゆえにお金の豊かさの消費は減らすことができる。

 後者においては、まずありえない。なぜなら、田舎の方が物価が低いことは変わらないからである。人々は、それでも都心に住もうとするからである。しかし心の豊かさは、都心で損なわれる。人が過密し、自然と満員電車・犯罪等がつきものだからだ。それら、確実に心の豊かさを削ぐ。少なくとも、そういった不安要素を削ぐことにはなる。

 ただ、田舎でも損なわれる心の豊かさは存在する。それは田舎につきものである虫だ。都会で生活し、虫と共存するようなことができない人にとっては、心の豊かさが損なわれる主因となりかねない。


 以上、豊かさについて考えてきた。分類するとそれはお金、環境、心に大別されるようだ。無論、これ以外のカテゴリをもっている読者もいるだろう。だが、それでいいのだ。豊かさに答えはない。大事なことは、考えを深めることで豊かさをクリエイトすることである。お金=豊かさではないことを知るには、本書は格好のきっかけになるであろう。

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