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会議には、あえて“答え”をもたずに参加せよ 〜CyberZ代表取締役・山内隆裕のビジネスコラム〜

U-NOTE編集部

2016/05/12(最終更新日:2016/05/12)


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山内隆裕(やまうち・たかひろ) CyberZ 代表取締役社長
 サイバーエージェントで初めて、20代の若さで取締役になった山内 隆裕(やまうち たかひろ)。スマートフォンのマーケティングに従事する株式会社CyberZの代表取締役も兼務している。若くして経営者として活躍する山内 隆裕とは、一体どんな男なのか。本企画では、すぐに役立つ彼のビジネスノウハウに迫っていく――。

 今回は、どの企業でも必ず行っているであろう「会議」について、その生産性を高めるヒントを与えてくれた。

会議は“言える化”が鍵

 会議の生産性を高めること。それは、組織の規模にかかわらず、多くの企業が抱えている課題の一つではないでしょうか。だれか一人の独壇場になったり、ただの報告会になったりするのでは、やる意味がありません。余裕のない責任者は、こうした会議のやり方をしてしまいがちです。

 最近ですと、会議の生産性を上げるためにアジェンダや時間、目的を必ず決めるなどの「きまり」を作る施策などをネットでよく見かけますが、それらも勿論重要なことだと思います。
 
 しかし、私が会議を開催するときに意識しているのは、あえて“答え”をもたないこと。心のなかにある“答え”を、言わないようにしています。本来、責任者として人一倍いろいろなことを考えていて、多くのものが見えている分、早く物事を進めたくなる。そこを、グッと堪え、“答え”を言わずして臨むのです。
 
 責任者である私が「コレがいい」と発言すると、それが正解だと思い、だれも発言できなくなってしまうからです。一寸の隙もないような場になってしまうのです。逆に、疑問系で発言を終えてみたり、「コレについてどう思う?」と問いかければ、みんなで考え、発言しあえる場となります。時には、トップダウンで進める局面もありますが、会議本来の役割を考えれば、各人の知識や考えを皆で出し合って、よりよい決議ができるようにすることが重要です。これを私は、会議の“言える化”と呼んでいます。

 “言える化”は、全員が能動的に物事を進める雰囲気をつくりだしてくれます。これがとても大事なのです。会議は、物事を決定することが目的の一つですが、決定したことを実行に移すことで、初めて意味のあるものになります。会議の場を、みんなが能動的に考え、団結して進めていける場にしていく。そうすることが、社員の団結力や実行力を高め、育成にもつながるのです。

“立場”より“役割”

 “言える化”は、責任者として開催する会議だけでなく、参加者として出席する会議においても同じように重要です。例えば、一参加者として臨む役員会で発言するとき。一般的に、こういう機会って見栄を張るではないですが、つい完ぺきな報告をしてしまいがちです。「これについて、私はこう考えていて、このようにうまくいっていて、課題についてはこういうふうに対応していきます」というように。

 私は、会議において、あえて“完璧な報告”をすることにこだわらないことにしています。「これって、どうなんでしょうか?」と、あえて最後に疑問を投げかけて終わらせるのです。自分が責任を負っている分掌にもかかわらず、そのような発言をすれば、無責任な役員だと捉えられてしまいかねない表裏一体の行為といえるかもしれません。

 経験値の高い人が集まる場では、より多くの意見を引き出すことでヒントを得たり、ネガティブチェックをしたりすることができます。自らのことには熱くなってしまい、第三者的視点からの意見に盲目になりがちなため、そうならないように気を付けています。会議を“言える化”して活性させることで、その効果を最大限に活かせるのです。極論、私がどう思われようと関係ありません。大切なのは、自分の立場を守ることより、事業を成功させるための役割を果たすことですから。

プライドや正論、分厚い資料は不要

 立場に関係なく、役割を演じきること。これは、どの社員にも意識してやってほしいことです。会議は、一人ひとりが事業を成功させるための役割を意識し、フラットかつ円滑に進めようというマインドをもつと、決議の質が上がります。

 立場に固執する人は、プライドを守るために正論を盾にしたり、人の意見を受け入れられなかったりしがち。それは、会議の流れをせきとめてしまう一大阻害要素といえます。完ぺきかつ分厚い資料も、ときに会議を阻害します。自信のない発表者が、安心材料として用意していることが多く、的を射ていないことがあるからです。

 また、会議を進める上で、正論は阻害要素にしかなりません。ビジネスに矛盾はつきものです。理屈だけで解決できるほど単純ではなく、ビジネスが拡大すれば様々なしがらみを抱えることになり、それぞれに筋を通しながら事を進めるのは一筋縄ではいかないものです。そういった現実から目をそらさず、丁寧に問題を解決していかねば、事業は前へ進めないのです。正論は、聞こえが良い分、考える力を失わせてしまいます。綺麗に整った答えを目の前にすれば、厳しい現実から逃れたい一心で、その正論に飛びついてしまうことも少なくないからです。ただ、正論に飛びついても、良いことなんて一つもないですし、問題を先送りしているにすぎません。会議を円滑に進めるには、“先送りをさせてなるものか”と正論を撲滅するマインドセットが必要なのかもしれません。

 最後に、気をつけてほしいのは、「“答え”をもたない」ということがどういうことか。これは、本当に何ももっていないのではなく、心のなかにある“答え”をあえて言わないことを意味します。事業を成功へと導くための役割を意識し、生産性の高い会議を心がけていけば、事業の生産性も大きく変わるのではないでしょうか。

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 うまくいかない会議には、他人の意見に耳を貸さない人、当事者意識をもてない人、自分の意見を発言しない人など、さまざまなタイプの人間が参加しているだろう。彼らは、一様に自分の“立場”に固執し、“役割”を考えていないのかもしれない。同氏のメッセージを参考に、会議に臨む姿勢を一新することを勧めたい。

サイバーエージェント最年少取締役の「生産性を高める会議」

  • 責任者があえて答えを言わないことにより、各人の知識や考えを皆で出し合い、会議を“言える化”する
  • あえて“完璧な報告”をすることにこだわらず、経験値の高い人から、より多くの意見を引き出す
  • “課題の先送りをさせてなるものか”と正論を撲滅するマインドセットを持つ

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