1. 文学は聴く時代。“新時代の編集者”・草彅洋平が見据える、メディアミックスの未来

文学は聴く時代。“新時代の編集者”・草彅洋平が見据える、メディアミックスの未来

新進気鋭の四人組ロックバンドOKAMOTO’S。彼らがリリースした六枚目のアルバム『OPERA』に対し、その世界観を同名の小説で表現する異色のプロモーションが行われた。執筆は新時代の編集者・草彅洋平だ。コンテンツ過多の時代に人から選ばれるには、良いコンテンツ、良いデザイン、良い仕掛けが必要不可欠。そんな草彅に今回のプロモーションの経緯や、不況が叫ばれる音楽業界の行く末について話を伺った。

草彅洋平 プロフィール

くさなぎ・ようへい/株式会社東京ピストル代表取締役/編集者 
1976年、東京都生まれ。あらゆるネタに対応、きわめて高い打率で人の会話に出塁することからついたあだ名は「トークのイチロー」。インテリア会社である株式会社イデー退社後、2006年株式会社東京ピストルを設立。ブランディングからプロモーション、紙からウェブ媒体まで幅広く手がけるクリエイティブカンパニーの代表として、広告から書籍まで幅広く企画立案等を手がける次世代型編集者として活躍中。

(*下記動画)今回の「OPERA」のアナザーエンディングともいうべき曲が『Beautiful Days』。物語が音楽、小説、映像で展開された。

日本の音楽業界の危機に、ロックオペラを背負い、OKAMOTO’Sが立ち上がる。

――OKAMOTO’Sによる6枚目のアルバム『OPERA』の印象はいかがでしたか?

草彅:今度のアルバムがロックオペラだと聞いて、鋭いと思いました。The  Whoの『Tommy』というアルバムを真っ先に思い浮かべましたね。当時、The Whoはシングルこそ好調ではあったものの、アルバムを売ることが出来ていなかったんです。どうにかしてアルバムを売ろうと企画して、ロックオペラという形式にたどり着いた。

アルバム一枚を通してひとつの物語を進行させたわけです。「見えない」「聞こえない」「しゃべれない」という三重苦を持ち、幼少期に性的虐待を受けた子供が最終的に自分のアミューズメント施設を作るという物語でした。それは演劇となり、映画となり、もちろんアルバムも伝説的に売れました。

そういった背景が、とても今の時代と似ていると感じたんです。現代のリスナーはみんな150円くらいで1曲を買えてしまうから、アルバムが売れない。加えて、CDの売り上げ自体も下がっている。そんな中でアルバムを買ってもらうために、まだ24歳以下くらいの子たちが、日本の音楽界のピンチに際して色々と考えてアルバムを出してきた。すごく格好良いし面白いと思いました。

製作期間は約30日。おっさんはひと夏を燃やし尽くす。

――そこから、どうして小説化というプロモーションを選ばれたのですか?

草彅:元々ロックオペラとは物語形式なので、小説や原作を作っておいた方が賢明ではないかと考えました。それでプロモーションを相談された際、僕から提案しました。

――さらに、執筆もご自身でやってしまおうと?

草彅:最初は町田康さんや古川日出男さんとか、ロックや音楽に造詣が深い小説家に書いてもらおうと思っていましたが、納期が1ヶ月後に予算の問題もあった。これでは誰も書かないと思ったので、じゃあ僕がやってしまおうと。1ヶ月間、おっさんのひと夏を燃やし尽くして書ききった感じですね(笑)。

――たったの一か月!?  どのようにして執筆されたのですか?

草彅:ストーリーは始めから決まっていたんですね。バンドメンバーの頭の中に、だいたいの構想はあった。彼らと話して、考え方、方向性をヒアリングしていきました。その場でいろいろ中身というか、話の方向性は決まっていきましたね。 

元々僕は速筆なほうなんです。レベルを上げることを考えると、もう少し時間があった方がより良いものができるという考え方もありますが、締切があったから書き切れました。

文学は聴く時代。音楽が文学を取り込み、不協和音がメディアミックスとなる。

――音楽と小説のコラボという構想は昔から持っていたのですか?

草彅:特に音楽と小説をコラボしてやろうっていう意思が先行していたわけではないですね。今回はロックオペラという性質上、小説化というプロモーションの提案に至ったわけです。 

僕の周りは世代からか「OKAMOTO’Sという名前は知っているけれど、聴いたことがない」という人が意外に多いんですよ。せっかく良いアルバムだからこそ、書店で彼らのアルバムが小説として売られていたら、違う展開も生まれるのではないかと。

――これから、音楽と小説のコラボレーションというものが増えていく可能性はありますか?

草彅:小説以外に音楽のメディアミックスは増えていくと思います。例えば、現代ではほとんどの人が詩を読まなくなっています。じゃあ詩がどこにいったのかというと、ラッパーなんかの音楽に入っていったのだと思っています。SEKAI NO OWARIの曲なんかを、若い子たちはみんな詩として聴いているんです。

詩集を読まなくても、セカオワの曲は聴く、セカオワの歌詞は読むじゃないですか。若い子たちは曲を聴くことで、言葉を聞いているはずです。そういう時代を見ていると、文学は、すごく音楽に取り込まれたんじゃないかなと思いますね。その動きはさらに加速していくと思います。

――どうして音楽のメディアミックスは加速していくのでしょうか?

草彅:こういう不況な音楽業界において、現状が不安だから、生産者は色々な手を打っていくはずです。何から火がつくか分からないから保険をかけていくということです。音楽だけではなかなか食えない。現代の音楽の賞味期限の短さを分かっているような方々、そういう危機感がある人たちが共鳴して、幅が広がっていく。その不協和音がメディアミックスにつながっているんですね。

――実際に今回のメディアミックス企画『OPERA』に対する反応はいかがでしたか?

草彅:小説も、アルバムも両方好きになってくれている人が多くて嬉しいです。アルバムを聴いて、小説を読んで、ライブに行くとすごく感動する。そういった感想をいただきましたね。特に若い子たちは複合的に楽しんでくれているようです。アルバムを作り、それを表現するためにライブがあるわけですが、そのたたき台を作る意味でも小説が役立っていると。 

やはり、そういう意味でも、OKAMOTO’Sのファン以外の方にも是非読んでいただきたいですね。それが彼らのアルバムにもつながっていきますから。

最後に、草彅が語ったエポックメイキングな時代の到来。

草彅:いま23、24歳の世代、OKAMOTO’Sくらいの世代の若者が、次の時代を作ると勝手に思っています。僕が最近よく遊んでいるのもそういう世代の子たちですね。この世代はとにかく面白いですよ。プライベートではこの世代の連中に毎日のように一緒に飲んで、遊んでもらっています(笑)。


草彅が「若い子」「若い世代」と表現するとき、そこには彼らへの敬意があると同時に、常に新しい文化を取り入れていこうという気概が伺える。それは草彅の言う、コンテンツ過多の時代を生きるクリエイターとしての「危機感」の表れなのかもしれない。

Interview/Text: 倉持ゆうり

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