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世界に600人しかいない「ビリオネア起業家」は何を考え、どう行動し、誰と仕事をしているのか

Naoya Shishido

2016/03/10(最終更新日:2016/03/10)


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by Tracy O
 大金持ちのことを俗に億万長者と呼ぶことがあるが、個人資産10億ドル(約1000億円)を保有する本物の億万長者たちのことを「ビリオネア(Billionaire)」という。経済誌・フォーブスが発表したところによると、ビリオネアは全世界に約1800人存在する。そして、その中の600人ほどが「ビリオネア起業家」と呼ばれている人々だ。ビリオネア起業家とは、相続や結婚などの本人には関係のない理由で財をなしたのではなく、自ら事業を興し財を築いた人たちのことである。

 ビリオネア起業家が、ビリオネア全体の1/3もいるのかと思う人もいるだろうが、世界の人口から考えれば、ビリオネア自体が400万人に1人しかいないということになるのだから、ビリオネア起業家の希少性は更に上がるだろう。本書『PwC公式調査でわかった 10億ドルを自力で稼いだ人は何を考え、どう行動し、誰と仕事をしているのか』では、そんなビリオネア起業家に焦点を当て、彼らがいかにしてビリオネアになり得たのかを解説している。

 今回は本書内で紹介されているビリオネアたちの考え方や、行動指針などを5つ紹介していきたい。

1.ビリオネアは「共感力」と「想像力」を同時に使う

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出典:www.linkedin.com
 ビリオネアは、2種類の能力を同時に使ってアイデアを出している。ひとつは、顧客が求めているもの、これから求めるであろう物を感じ取る「共感力」。そしてもうひとつは、共感をベースにまだ見ぬ商品を作り上げる「想像力」だ。ビリオネアの頭の中で共感力と想像力が出会ったとき、ビリオネアたちは爆発的なアイデアを生み出すのだ。

 投資信託情報を投資家に提供する米国の大企業「モーニングスター」創業者のジョー・マンスエトは、ある日「複数のファンドの情報が、わかりやすく比較できる形でシンプルにまとめられていたら便利なのになぁ」と思ったそうだ。

 そのとき彼の頭に、投資情報誌のイメージが鮮やかに浮かんできた。それからマンエストはモーニングスター社を立ち上げた。業務内容は、投資信託にフォーカスした投資情報提供サービスだ。モーニングスター社の一般の投資家にわかりやすい情報を伝えるというビジネスには明らかな需要があった。現在、それなしで投資信託を買うことなど、もはや考えられないほどだ。

 いいアイデアを出すことは、ビリオネアといえど容易ではない。そのアイデアが正しく見抜くこともまた難しい。普通の人は素晴らしいアイデアに出会っても、くだらないといって投げ捨てるかもしれない。しかしビリオネアは、常に人々のニーズを見逃さないように共感力を磨き、それをビジネスに発展させるべく想像力を働かせている。だからビリオネアには、普通の人が気付かないチャンスを見出すことができるのだ。

2.ビリオネアは「短気」と「気長」を上手に使い分ける

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出典:www.margaretwehrenberg.com
 ビリオネアは長期的な動きをゆっくりと探りながら、短期的な行動をきわめて素早く進める。機が熟すのを誰よりも忍耐強く待ち、そのタイミングが来たら誰よりも迅速に行動するのだ。異なる時間軸を同時に操るのは、多くのビリオネアに共通する特徴である。

 ビリオネアは時間を固定したものと捉えず、自在に伸縮するものと捉えている。だからビリオネアは、目にも留まらぬスピードで動いたかと思えば、こちらがやきもきするほどゆっくりとことを進めることもある。 

 共同購入型クーポンサイト「グルーポン」の共同創業者エリック・レフコフスキーはこう語る。

「将来的には、バイオテクノロジーや生命科学の分野をやりたいと思っているんです。過去10年のインターネットと同じくらい盛り上がるはずですから。でも今はそのタイミングではないですね」

 彼は、バイオテクノロジーや生命科学に参入するタイミングをじっくりと待っている。遠くから目を光らせ、気が熟すのを虎視眈々と待っているのだ。

 一方、「今」やるべき分野については、彼は極めて迅速に動く。参加企業の経営陣を焚き付け、一刻も早く製品を出すように要求する。早くリリースすれば、それだけ早く経験から学ぶことができるからだ。

 ビリオネアは素早く行動するが、手当たり次第に行動するわけではない。どんなにアイデアが良くても、タイミングが間違っていれば意味がないからだ。著者のデータによると、将来を予測するという点に関して、ビリオネアは普通の人と同程度の能力しかもっていないということが分かった。

 ただし、ビリオネアは異なる時間軸を操ることで、タイミングを誰よりも上手く掴むことができる。タイミングが予測不可能であると知っているため、ビリオネアは「短気」と「気長」を上手に使い分けるのである。

3.ビリオネアはあらゆる細部にこだわりぬく

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出典:www.thetimes.co.uk
 ビリオネアにとって、独創的なアイデアを出すことは重要な能力だが、それだけではビリオネアにはなれない。それに加えて、なんとしてもやり遂げる実行力が必要だ。「こんなことができたらいいな」というイメージを、最高の形で実現するのだ。

 ビリオネアは大きな夢を見るだけでなく、小さな実行を決しておろそかにしない。ビリオネアには、ビジネスが傾いたとき、それをより良い形へと再設計できる能力を持つものが多い。つまり、ビリオネアはビジネスを最適な形に設計することに長けている。

 マイケル・ジャハリスは1972年、マイアミの製薬会社「キー・ファーマースーティカルズ」を手に入れた。主力のニトログリセリン錠の将来性に賭けたのだ。しかし、このニトリグリセリン錠が、実はほとんど効果がないということが発覚する。普通であれば効かないと分かった薬は見限って、新製品の開発を進めそうだが、ジャハリスは違った。 

 ニトログリセリンを錠剤ではなく、軟膏にして製品化したのだ。錠剤としては効果はないが、軟膏として皮膚に塗れば、1日かけてゆっくりと体内に吸収されるというニトログリセリンの特性に注目したのだ。ジャハリスはそれにとどまらず、皮膚にパッチという形態でニトログリセリンを貼れないかという考えにまで至った。パッチなら邪魔にならず、ゆっくりと成分を吸収させることができると考えたのだ。

 こうして売り出したニトログリセリンパッチは、キー・ファーマースーティカルズ社の新たな主力製品となった。会社は急速に成長し、1986年に売却した時には8億3600万ドルという莫大な価値になっていた。

 世の中に新しい価値を送り出すなら、あらゆるものを設計し直すのは必然ともいえる。製品の色や形、流通、M&Aに至るまで、全てを最適な形に設計するのだ。ビリオネアにとって設計とは、すなわち実行である。あらゆる細部を設計する注意深さがなければ、並外れた成功は掴めないのだ。

4.ビリオネアはチャンスを逃すリスクを恐れる

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出典:psytreasure.com
 ビリオネアはリスクを好まない。ただし、リスクの選び方は、ビリオネアと普通の人では少々違っているかもしれない。経済やビジネスの世界では、客観的なリスクなリスクの量に注目するのが一般的だが、実は私たちの意思決定には、「主観的」なリスクが大きな影響を及ぼしている。

 人は何かを得たいという気持ちよりも、今あるものを失う恐怖をより強く感じるという。たいていの人は失敗するリスクを過大評価し、新たなチャンスをふいにするリスクのことはあまり考えていない。だがビリオネアは逆だ。失敗するリスクよりも、チャンスを逃すリスクのほうを恐れる。

 アメリカ最大の紙類輸出会社「アメリカ・チュンナム」の創業者であるチャン・インは、香港で紙を売ることに限界を感じていた。そこで彼は、なんの確証もないままアメリカのカリフォルニアに渡った。その時のことを彼はこう語っている。

「香港にとどまっていたら、中国の巨大な需要を満たすことはできなかったでしょう。当時の中国では紙は輸入に頼っていたので、ビジネスチャンスは十分にあると思いました。」

 もしも失敗したら、別の仕事を探せばいいとチャンは考えた。チャンは今あるものを失うリスクよりも、大きなチャンスを逃すリスクのほうを恐れた。そのようなリスクの捉え方をしていたから、アメリカへの移住を果敢に決意できたのだ。

 普通の人であれば、一度失敗したら次も失敗するのではないかと不安になるものだ。ところがビリオネアは、たとえ大きな失敗を経験しても、再び立ち上がってタフな選択をしようとする。もしも失敗したらまた挑戦すればいいと考える。「またやれる」という自信があるから、不安に立ち止まることがないのだ。

5.ビリオネアは自分と正反対の人と組む

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by Andrea Omizzolo
 ビリオネアには、孤高の天才というイメージがつきまとう。カリスマ的人物がずば抜けた才能でビリオネアに成り上がる、というストーリーが分かりやすくて魅力的だからだ。だが、実際にはビリオネアは決して孤独ではない。孤高の天才のように見えるビリオネアの陰には、必ず実務に長けた相棒が存在している。

 多様なものを組みあらせてひとつの大きなアイデアをつくりあげる人がいれば、大きなアイデアを細部に分解して実行可能な単位に落とし込む人もいる。ビジネスを成功に導くためには、その両方の才能が不可欠だ。ビリオネアは、自分の対極にある人と組む人と組むことで、足りない能力を補完する。そうすることで互いの強みを生かしながら、一人ではなし得なかったほどの大きな仕事を実現するのだ。

 ジョン・ポール・デジョリアとポール・ミッチェルの2人は、まさに理想的な関係を築いた。高級ヘアケア製品のジョンポールミッチェルシステムズ社を設立した2人は、互いの得意分野を生かしながら、ビリオネアへの道を駆け上がった。

 優れたマーケティング手法を持つデジョリアは、サロン専用の高級シャンプーというビジネスモデルを確立し、ヴィダル・サスーンの後継者といわれるほどの美容師だったミッチェルは、技術を生かしてサロンでシャンプーの実演をしてみせた。初期の顧客がついたのはミッチェルの知名度とスキルのおかげだったし、ビジネスが継続的に利益を生んだのはデジョリアのアイデアと実行力のおかげだった。対照的な2人のコラボレーションが、大きな化学反応を生み出したのだ。

 ビリオネアは2つの相容れない考えを同時に持つことができる、と先述した。だがそれは頭の中だけで完結する問題ではない。ビリオネアの最も重要な能力とは、自分と正反対の人物を受け入れ、協力関係を築き上げる力なのである。

ビリオネア起業家は何を考え、どう行動し、誰と仕事をしているのか

  • ビリオネア起業家は、共感力と想像力を同時に使う
  • ビリオネア起業家は、「短気」と「気長」を上手に使い分ける
  • ビリオネア起業家は、あらゆる細部にこだわりぬく
  • ビリオネア起業家は、チャンスを逃すリスクを恐れる
  • ビリオネア起業家は、自分と正反対の人と組む

 以上、『PwC公式調査でわかった公式調査でわかった 10億ドルを自力で稼いだ人は何を考え、どう行動し、誰と仕事をしているのか』から、ビリオネア起業家の考え方や、ビリオネア起業家の行動指針をいくつか紹介してきた。確かに、ビリオネア起業家は特別な才能を有し、屈強な意志があったからこそ、今の成功を手にできたのかもしれない。

 しかし、スティーブ・ジョブズやマーク・ザッカーバーグには、今までの常識から脱却し、全く新しい試みをする冒険心があった。あるいは、Dyson社のジェームズ・ダイソンには、レッドオーシャンに飛び込む勇気があった。筆者は本書を読んで、ビリオネアになるための第一歩は、常識や猜疑心を捨てる決断力なのでないかと感じた。

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