1. 一杯のコーヒーが教えてくれる、日常の経済学入門『スタバではグランデを買え!―価格と生活の経済学』

一杯のコーヒーが教えてくれる、日常の経済学入門『スタバではグランデを買え!―価格と生活の経済学』

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 「モノ」の値段から社会のしくみが見えてくるーー。『スタバではグランデを買え!―価格と生活の経済学』を執筆した経済学者の吉本佳生氏は、本の見返し部分にそう記した。

 「そういうものだ」なんて漠然と思っていたシステムに、経済学というフィルターを通してみれば、驚くべき“理由”が見えてくるのだそうだ。学問として見ると難解な印象の経済学も、日常の些細な疑問から紐解けるのである。

 経済学の入門書をお探しのあなたには、生活を通して経済学を学ばせてくれる本書は大変おすすめだ。社会という壮大なシステムの一部として日々暮らしていることを思い出しながら、ゆっくり本記事に目を通していってほしい。経済学という壮大な学問の入門書として、本書は確かな実績を果たしてくれることだろう。

同じ「モノ」の値段が違う? ー 経済学入門編

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 経済学の入門として、生活の些細な疑問を取り上げた筆者の着眼点はまさに脱帽ものである。考えてみれば、同じ「モノ」であっても買う場所によって値段が異なることがある。例えば500mlのペットボトル飲料を購入する際、コンビニ/100円ショップ/自動販売機では、それぞれ微妙に値段が異なっている......などが身近な例だ。

 100円で買えるものが、別の場所では150円で売られている。入門編では、まずこのトピックから扱おう。同じ商品でもこのような価格差が出るのは、経済学的に見れば原価とは別の目に見えないコストがかかっているからなのである。

経済学の入門知識 - 水筒は節約になってない?

 日々、皆何かしらの飲料を飲むだろう。それは水やお茶であったり、コーヒーや紅茶であるかもしれない。ゆえに、「節約のため」と水筒を利用して金銭的なコストを削減している人も多いものだ。確かにそういった人々は金銭面でのコスト削減には成功しているかもしれない。しかし経済学上では決して成功とは言われないもの。なぜなら、代価として手間/時間といった目に見えないコストを支払っているからである。

 これが、同じ「モノ」であっても価格差がでる理由だ。コンビニは24時間営業で大抵どこにでもある上、商品の温度管理までしてくれている。経済学的に言えば、それがコンビニが提供している『サービス』だ。“コンビニ価格”とは、こういったサービス面でのコストが加算された値段なのである。商品の品質に差があるのではなく、我々はそのサービスに対してお金を払っているのだ。

スタバではグランデを買う!のが経済学的に“お得”

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 スターバックスのドリップコーヒーは、ショートサイズが240ml、グランデサイズが470mlで販売されている。先ほどは同じ「モノ」が異なる値段で販売されていることを述べたが、今度はその逆:“同じ「モノ」が異なる値段で売買されていること”に注目する。

 考えてみると面白い。240mlで一杯280円のコーヒーが、ほぼ倍量の470mlでは一杯360円で販売されているのだ。つまり増量分の230mlは、たった80円で販売されていることになる。企業にしてみれば存外な価格設定にも見えるが、この価格にはなんと企業・消費者両方の利益が含まれている。

経済学の入門知識 - グランデは両者にとって“お得”な商品

 企業側が懸念しているのは、兎にも角にもコストだ。しかし実は、一杯のコーヒーを淹れるのも二杯分のコーヒーを淹れるのもコスト面では大した差がない。コーヒー一杯あたりの原価は、およそ数十円程度と言われている。倍量したとしても80円以下のコストで済むのだ。さらに、グランデサイズを注文されたからといって受け渡しまでの時間が大幅に延びることもないので、人件費も増加しない。

 つまり企業としては倍量した方が利益が高くなるようになっているのだ。もちろん増量分を80円で買うわけだから、我々消費者も安い値段でより多くコーヒーを飲めることになる。グランデサイズは、企業と消費者両方にとってWin-Win(ウィンウィン)の商品なのだ

『生活』から見れば、経済学は身近なもの

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 タイトルこそスターバックスの商品を取り上げているが、本書では「携帯電話料金が複雑なわけ」や「100円ショップの安さの秘密」といった生活関連のトピックから「子供の医療費無料かは子育て支援として機能しているか」といった社会的トピックまで、入門といいつつも基礎的な経済学の知識をしっかりと身につけることができる。

 最後に、経済学の入門知識をもう一つ紹介しよう。

経済学の入門知識 - 消費の大半は『取引コスト』に支払われている

 経済学上では、実に様々なものをコストとして取り扱う。「モノ」や「サービス」の取引をする際、それらの価値以外に対して支払うコストを、本書では取引コストと呼んでいる。 

 例えば、美味しいものを食べるためにわざわざ自宅から遠い店へ行く、好みの商品を見つけるまで探す時間......などが当てはまる。多くの企業は、こういった取引コストをいかに節約できるかということを競い合っているのだ。

 つまり、他人と好みや行動パターンが同じ人は、産業の進歩に従ってより暮らしやすくなっていくということである。より大多数の人々の取引コストを、企業は削減しようと努めるからだ。自身の生活にかかるコストを見直す際は、「自分がどれだけ他人と異なる趣味趣向を持っているか」というのも大きな観点となる。


 経済学に触れるだけでなく、その知識を活かして生活を新たな視点で見ることができるのだから、入門書としてこれほど有意義なものはないだろう。特に取引コストという概念に関しては、経済学の域を超えてあなたのお財布事情に直接関わるもの。学んでおいて損はない。

 自身の生活に活かしてこそ、学問を学ぶ良さを実感できる。本記事を通して、経済学入門編としての本書の価値が、経済学を学ぼうとする読者の方々に深く伝われば幸いである。

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