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今までの常識を覆す全く新しい「勉強のコツ」とは? 科学が解き明かす驚きの事実『脳が認める勉強法』

Naoya Shishido

2016/03/02(最終更新日:2016/03/02)


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今までの常識を覆す全く新しい「勉強のコツ」とは? 科学が解き明かす驚きの事実『脳が認める勉強法』 1番目の画像
by mer chau
 学生、社会人問わず、日々の暮らしは勉強の繰り返しだ。学術的な勉強はもちろんのこと、社会のルールや暮らしの知恵、料理のコツといったことまで、我々は“勉強”したうえで知識として脳に蓄えているのである。しかし、脳とは厄介なもので、一度勉強したことでさえも、本人の意思とは無関係に忘れていってしまうのだ。

 本書『脳が認める勉強法――「学習の科学」が明かす驚きの真実!』では、今まで常識、あるいは誰もが当たり前のように実践していた勉強法を否定し、脳科学にのっとり、脳の構造や記憶が定着するメカニズムを紐解いたうえで、全く新しい勉強のコツを紹介している。

 今回は、『ニューヨークタイムズ』のサイエンスレポーターである著者が本書の中で述べている“脳が認める”勉強のコツを、4つ紹介していく。

勉強のコツ#1:静寂の中で勉強するな!

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by The U.S. Army
  何時間も部屋にこもり、机に向かいっぱなし。静寂の中で聞こえるのは、ひたすらペンを走らせる音やたまの咳払いくらい。そんな環境で勉強している人は多いのではないだろうか。当然今までは、勉強中は周りの環境を静かに保たなければならないといったなかば強迫観念のようなものがあった。しかし、本書ではそれを真っ向から否定し、ある勉強のコツを紹介している。

 1985年、アメリカの大学である実験が行われた。学生を「静寂の中で勉強する」、「ジャズを聴きながら勉強する」、「クラシックを聴きながら勉強する」という3つのグループに分け、それぞれを違う環境下で10分間勉強させ、2日後にテストを受けさせるというものだ。テスト自体は単語を覚えるだけの単純なものだったが、テストの結果には驚きの差が生まれた。静寂の中で勉強したグループに比べ、BGMを聴きながら勉強した2つのグループのほうが、2倍近い単語を思い出したのだ。このような実験は過去に複数回行われているが、いずれも外的環境に何らかの変化があったほうが優秀な結果を修めている。

 人間の脳は、何かを思い出そうとするとき、外的環境を“手がかり”として思い出すことが多い。推理ドラマなどで、探偵が第一発見者になにかを思い出させるために当時の状況を説明するのは、この応用パターンだ。つまり私たちも勉強するときには、静寂の中よりもこの“手がかり”をいかに多く残せるかが、コツというわけだ。

勉強のコツ#2:定着させたいなら、一夜漬けを今すぐやめろ!

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by listentothemountains
 大事な試験の前日。今日は寝ないでできるだけ勉強してやるぞと、徹夜でよく勉強したものだ。しかし、これも勉強のコツとしては大間違いである。一夜漬けは結局、勉強した知識を“詰め込んでいるだけ”であり、“定着させる”には至っていない。定着させるには睡眠が必要なのだ。

 勉強時間を分散させることは、すでに勉強のコツとしては100年以上前から有効だとされてきた。だが、その効果を知る人は少ない。本書では、勉強時間を分散させることへの効果を、今まで平然と聞き流してきたであろう母親のアドバイスとともに紹介している。これを読んで、勉強時間を分散させることを勉強のコツとして使ってみてほしい。

「ねえ、一度に全部勉強するより、今晩少し勉強して明日もまた少し勉強する、というふうにした方がいいんじゃない?」

このテクニックは、分散学習や分散効果と呼ばれている。一気に集中して勉強するのと、勉強時間を「分散」するのとでは、覚える量は同じでも、脳にとどまる時間がずっと長くなるのだ。母親のアドバイスは正しい。今日少し勉強し、明日また少し勉強した方が、一度に全部するよりいい。そのほうがはるかにいい。場合によっては後から思い出す量が2倍になることもある。

詰め込みは無意味だと言いたいのではない。徹夜で勉強することの効果は、翌日の試験の点数が向上するという記録が昔からあるので実証ずみだ。ただし、徹夜のラストスパートの信頼性については、荷物を詰め込みすぎた安物のスーツケースみたいなところがある。入りはするが、しばらくするとすべて落ちてしまう。

出典:『脳が認める勉強法――「学習の科学」が明かす驚きの真実!』、著ベネディクト・キャリー、ダイヤモンド社

勉強のコツ#3:反復学習ではなく、差し込み学習を行え!

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by Thomas Hawk
 人は、自分のアイデンティティにとって重要だと決めたことを必死で習得しようとする。それは勉強かもしれないし、絵を描くことかもしれないし、スポーツかもしれない。そんなとき人は、とにかく反復練習をするのだ。覚えるまで、描けるようになるまで、できるようになるまで、とにかく何度も挑戦する。反復学習への信頼は、いつの時代も消え去ることはない。

 本書では、反復学習の効果を否定し、“インターリーブ”という勉強のコツを紹介している。インターリーブとは、簡単に言ってしまえば「差し込み勉強法」のことである。何を差し込むのかというと、勉強していることに関連する何かだ。例えば、歴史の勉強をしている最中に地理の勉強を差し込んでみたり、バスケのフリースローの練習をしている最中に3Pシュートの練習を差し込むなどである。

 反復学習のすべてを否定しているわけではない。新たな技術の習得には、繰り返しやってみるという行為が必ず必要だし、最も効果的だ。しかし、ある一定のレベルに達すると、反復学習は効果を失ってしまう。もう一歩先に進みたいという人にはおすすめの勉強のコツだ。インターリーブは勉強以外のコツとしても使えるので、是非実践してみてほしい。

勉強のコツ#4:眠りながら勉強しろ!

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by mrehan
 「勉強のコツ#2」で少し触れたとおり、睡眠は勉強したことを記憶として定着させる、重要なプロセスである。しかし本書では、記憶力を高めるためには、ただ単に睡眠を取るのではなく「戦略的な睡眠」こそが重要だと述べている。「戦略的な睡眠」とは、つまり「何を記憶したいかによって睡眠スタイルを変える」ことである。本書によると、睡眠の周期は以下のようになる。

睡眠の周期

  • 段階1=スタート地点
  • レム睡眠=パターン認識を強化すると思われる段階
  • 段階2=運動に関する学習にとってもっとも重要な段階
  • 段階3・段階4=記憶が最も定着する期間。新しく学習した事実、名称、年号や日付、公式などを記憶する
 一般的な睡眠は、段階1から始まり、睡眠前半はレム睡眠から段階2、3、4の波を繰り返す「深い眠り」に入る。そして、目覚める前の後半は「浅い眠り」になり、レム睡眠と段階2の期間が最も長くなる。このパターンをコツとしてに利用するなら、情報をたくさん覚えなくてはいけないテスト(外国語の単語、出来事の日付、化学構造などを問うテスト)が控えている場合は、普段どおりの時間にベッドに入って深い眠りを十分にとり、翌朝早く起きて簡単に勉強するのがベストな勉強法ということになる。

 翌日にどんなテストが控えているか、何を覚えるべきかが明確な場合は、この「戦略的な睡眠」のとり方を利用するのがお勧めなのだ。

 
 以上、本書『脳が認める勉強法――「学習の科学」が明かす驚きの真実!』から4つの勉強のコツを紹介してきた。今回紹介した4つのコツは、特別な技術などは一切不要で、誰でも明日から実践できるものばかり。これらのコツを上手に使いながら、今後も勉強に励んでほしい。

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