1. たった数日で市場を破壊するイノベーションから生き残った事例とは?:『ビッグバン・イノベーション』

たった数日で市場を破壊するイノベーションから生き残った事例とは?:『ビッグバン・イノベーション』

出典:www.thegeniusworks.com
 ビデオカメラ、ウォークマン、スケジュール帳、ポケベル。これらはある1つのイノベーションによって犠牲となって姿を消したか、今まさに犠牲になろうとしている製品である。そのイノベーションとは、今では誰もが使っている「スマートフォン」である。

 私たちは、今までも幾度となくイノベーションの恩恵を受けてきた。その一方で、新たなイノベーションによって消えていった物も数多く存在する。「スマートフォン」の事例はその典型である。

 本書『ビッグバン・イノベーション――一夜にして爆発的成長から衰退に転じる超破壊的変化から生き延びよ』では、従来の製品を全く新しい価値で一掃しうるイノベーションを“破壊的イノベーション”と呼んでいる。そこで今回は、過去の破壊的イノベーションの事例を挙げ、具体的な当時の状況を踏まえ、どうすれば破壊的イノベーションを乗り越えられたのか、そして、過去の破壊的イノベーションから学ぶべきことをいくつかの事例とともに紹介していく。

破壊的イノベーションの事例#1:蒸気自動車

by ~Morgin~
 1980年代、自動車産業は、蒸気かガソリンか電気かを巡り、熱い戦いを繰り広げていた。結果的に勝利したのは、現在まで活躍しているガソリン自動車であるが、当初優勢に立っていたのは、蒸気自動車だった。

 ところが当時、蒸気自動車の1大メーカーだったスタンレー社は、蒸気自動車を“贅沢品”と位置付け、価格設定を誤るという致命的なミスを犯したのである。それに加え、同時期に口蹄疫が発生する。当時、馬用の公共の飼い葉桶(飼い葉を入れる桶)を給水用に利用していた蒸気自動車は、高額な価格設定も相まって、大打撃を受ける。

 一方で、ガソリン自動車がここまで普及した理由は、そのような戦略ミスをせず、技術的な問題も回避したことにある。人気が高まるにつれ、生産コストが下がり、量産体制に入ったガソリン自動車を止める術はなく、蒸気自動車は敗れ去った。

 今回のイノベーションの事例で、もしスタンレー社が自動車の市場価値を理解し、蒸気自動車を適正な価格に設定し、専用の給水所を用意していれば、現在も道路を走る車の多くは、蒸気で走っていたかもしれない。

破壊的イノベーションの事例#2:コンビニカフェ

by Infomastern
  次の事例は、近年台湾で起きた破壊的イノベーションの事例だ。台湾のファミリーマート内で、2000店ものコーヒーキオスクを運営するレッツカフェは、枠にとらわれない経営戦略で、破壊的イノベーションを乗り越えた。近年台湾では、街中におしゃれなカフェが急増している。そんなコーヒー専門店とコンビニカフェでは、雰囲気では張り合えない。街角のおしゃれなカフェでは、バリスタが芸術的なラテアートを披露している。レッツカフェは、撤退の危機に追い込まれたのだ。

 ところがレッツカフェは、よりよく、より安く、しかも徹底的にカスタマイズしたユーザー体験を提供することでこの危機を乗り越えた。レッツカフェを訪れた客は、まず自分や友達の顔をスマートフォンで撮影して、そのデータを店内の専用プリンタにアップロードする。そしてコーヒーをセットすると、ラテの白い泡に、茶色いパウダーで客の顔を鮮明に描き出すという仕組みを作り上げたのだ。

 この独創的なアイデアは、ソーシャルメディアで拡散し、計り知れない口コミ効果をもたらした。枠にはまらず、個々の客に対応するという究極のカスタマイゼーションで、破壊的イノベーションを乗り越えたのである。

破壊的イノベーションの事例#3:液晶テレビ

出典:www.rnib.org.uk
 近年、私たちに大きな影響を与えた破壊的イノベーションの事例と言えば、液晶テレビだろう。かつて消費者は、最先端の大画面ディスプレイにプレミアムな価格を支払った。ところが、サムスンやLGといった外資系のメーカーが日本市場に参入すると、状況は一変する。基本部品技術がイノベーションによって進化すると、消費者はハイエンドなブランド品と、低価格な製品との差異を理解できなくなる。そして、安価な商品を連発する、サムスンやLGにテレビ市場は独占されてしまったのだ。シャープやソニー、パナソニックといった、長らくこの業界に君臨してきた日本の大企業は追い落とされてしまったのである。

 今回の事例では、多くのメーカーが同じ技術を利用し、急速にその質が向上するという状況下で破壊的イノベーションが起きた。何か一つの革新的な技術が発明されたのではなく、共通の技術が急速に発達するという破壊的イノベーションの事例だ。

 日本のメーカーは、ブランドや技術力の高さにしがみつき、市場で勝負できる価格帯を見失ってしまった。確かに、日本のメーカーと外資系メーカーに、技術力の差は存在する。しかし、それは消費者から見たら認識できない程度の差なのだ。このような事例を避けるためには、技術力の向上よりもむしろ、消費者のニーズにより近づくということが重要なのだ。

 
 『ビッグバン・イノベーション――一夜にして爆発的成長から衰退に転じる超破壊的変化から生き延びよ』から、3つの過去の事例を紹介してきたが、いかがだっただろうか。ビジネスマンだけでなく、私たちの生活は、常にイノベーションに支えられてきた。多くのイノベーションが日々起こり、その恩恵を受けて生きている。しかし、私たち消費者こそ、しっかりとイノベーションに目を向けなければいけないのではないだろうか。

 時代こそ違えど、今回紹介した破壊的イノベーションの事例の中心にいるのは、私たち消費者である。イノベーションは、いつの時代も、私たちの生活の中で起きているのだ。だからこそ、イノベーションの恩恵を受けるだけでなく、イノベーションの本質を見ようとすることが重要なのではないだろうか。

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