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Popteen編集長「今の若者はつまらない」 言葉の裏にある若者への愛と“カワイイの作り方”

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2016/02/09(最終更新日:2016/02/09)


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服装だけでなく、髪型やメイクなど様々な変化をし、さらにそのスピードも速いギャル文化。

そんなギャル文化の流行を取り上げ続ける雑誌「Popteen」の編集長・森茂穂氏に、今の若者たちについての流行について話を聞いた。流行を、そして可愛い物を最先端で作り上げてきたクリエイターの脳みそは、一体どのような構造をしているのだろうか。

森茂穂 プロフィール

もり・しげほ/Popteen編集長

1978年福岡県出身。2001年に早稲田大学第一文学部を卒業。 
「東京ウォーカー」や「月刊ザテレビジョン」など情報誌の編集者としてキャリアをスタート。2010年にインフォレスト社の女性誌「Happie nuts」編集長に就任。“EVERYDAY 黒肌宣言! 可愛いだけのHappieはもう卒業。”をコンセプトにギャルブームを創り続け、休刊の危機にあった同誌をV字回復させた手腕を評価され、2014年から角川春樹事務所発刊のティーンエイジャー向け雑誌「Popteen」の編集長を務める。藤田ニコル、オクヒラテツコなどティーンに人気のアイコンを次々と生み、10代のKawaiiカルチャーの新たな発信源に「Popteen」を成長させ、編集長就任1年で約4万5千部の実売アップに成功している。

何で、どこもやらないんだろ。ベティちゃんのノベルティ作れば絶対に売れるのに。

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———目まぐるしく変化する彼女たちをどうとらえていますか?

それを面白いと思わないとダメだと思っています。そこに彼女たちの魅力があるんです。誰かに影響されたわけでも、与えられたわけでもなく、今の気分やノリで、自分たちが着たいものを着て、なりたい格好になるので、僕たちはそれを見逃してはいけないと思っています。彼女たちが「コレ良い!」と思っているものに何らかのサインがありますから。

———今、彼女たちが「コレ良い!」と思っているものを教えていただけますか?

“ベティちゃん”のようなアメリカンキャラクターです。今後これはクルと思っています。これは、様々なリサーチ結果から予想しているものですが。“ベティちゃん”にかぎらず、アメリカンキャラクターが来る(というかすでにティーンの間ではトレンドになっている)という事は、多くの人が気づいてないと思いますよ。
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by Timothy Valentine

女の子は気分で動く、それも至る所でほぼ同時に。流行を生み出すコツは、女子に通じる奇妙なシンクロニシティを感じること

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by koyaman3422
———若い子にとっての良いモノがコレだと、どのようにして感じ取っているんですか?

それこそ、彼女たちの気分を感じ取る必要があると思っています。不思議な話ですが、それは一部の女の子に限らず、女子全体で変化していってるんですよね。それにサインも出ているんです。

例えば、少女漫画で言えば、『アオハライド』と『ストロボ・エッジ』という漫画が圧倒的に人気だったんですが、ある時、急に人気の漫画が『ヒロイン失格』と『orange』に変わったんです。しかも同時多発的に。軽いシンクロニシティじゃないですけど、そんな女子全体の気分を僕らは感じ取る必要があります。それは僕らが幼いころに同じジュースや、同じ駄菓子にそこそこみんな集中していたことに何となく似ている気がしますね。

「何となく良いなぁ~」と感じているものがあって、それに合うものが世の中にポンっと出ると皆「あ!」って思い流行になるんだと思います。ちなみに彼女たちの流行は早くて、すでに人気は『黒崎くんの言いなりになんてならない』に移行しています。

———時代感と一致したりもするんですかね?

もちろん、それはあると思います。例えばひと昔前は『サンリオのキャラクター』がものすごく人気でしたけど、今はそうでもない。アナ雪からのプリンセスがトレンドになっていますけど、これにも理由があって、実は、今の若い女の子が男子と付き合う数がとても少ないことが分かっています。男性と付き合ったことが無い。どうすれば良いか 分からない。そこに妄想や想像が入ってきます。そんな彼女の理想の男性像は、王子様みたいな人になってきます。

そういった背景から、プリンセスブームっていうのは受け入れられやすいですよね。うちのメンズモデルでも、少女漫画に出てくる王子様みたいな男のコが人気になりやすいっていう現象も、こういう時代感と一致していると思うんです。

今の若い子は無茶しないから面白くない……。でも、それを作っているのは大人たちだったりする。

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by koyaman3422
———今の森さんから見た若い子はどのように映っていますか?

そうじゃないコももちろんいますが、ちょっとマジメすぎるかなぁって思います。時代や環境もあるんでしょうけど、僕らが若い頃は、バブル世代のマネを高校生のころからやっていて、イベントを自分たちで作ったり、とにかく楽しいことに貪欲だったんですけど。そこからさらに不景気も続き、新しく生まれてきた彼女たちに対して両親は、あまり無茶はさせられないと思ったり、また不況が続くかもしれないという懸念からお金を使わせようとしなくなったんだと思います。そんな環境で育った彼女たち自身も自ら無茶しようと思いませんよね。

———ちゃんとしている子が増えたって事ですか?

そうですね。バランス感覚はとても良いと思います。僕らの世代は「援助交際」をしているコがまわりにチラホラいた時代。高い洋服が欲しくてそこまでするかってぐらい欲望に忠実だった。でも今の若い子は、高い服が欲しくてもガマンしたり、「別にいらない」と言っちゃうと思いますよ。そういう意味ではちゃんとしている子が多いかもしれません。

バランス感覚が良いので、与えられたものを受け入れ、あたりさわりが無い子が多いと思います。美味しくないモノも、そこそこ美味しいですと答えてしまうような。でも、それは面白くないんです。無茶して、トライするけど失敗する、傷つく、そこからまた新しい自分になる。そこが若い子たちのおもしろさだと思っていますけどね。もっとオトナが子どもに冒険をさせないとダメだと僕は個人的に思います。

可愛い物は作れる。今までもこれからも。

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———雑誌Popteenを通じて、若者にどのような事を感じて欲しいですか。

僕は、可愛いは作れるものだと言い続けています。それはとても重要なことです。雑誌を読んで「私も可愛くなれるかもしれない」と思う。この「可愛くなれるかもしれない」と思うことがとても大事なことだと思っています。ちょっとでも藤田ニコルに近づけるかもしれない。そう思ってオシャレをすることで、ひょっとしたら彼氏ができるかもしれないし、いじめられている子は、いじめられなくなるかもそれない。Popteenには、そんなポジティブな要素がたくさんあると思っています。

若い青春の頃なんて悩んで傷ついて、そこからまた新しい自分が生まれる。そんなことを体験できる貴重な時期じゃないですか。そんな今の若い世代でしか味わえないポジティブな要因の一つになれれば良いなと思っています。

高校生のころからさまざまな活動を行ってた森にとって、“若者”への愛情は非常に深い。若者を可愛くしたい。元気にしたい。その為に大人ができることがあるなら、何でもやってやる。ギャルカルチャー、若者カルチャーを最前線で作ってきた森茂穂は若者への愛情で満ち溢れている最高に気持の良い男だった。

Interview/Text: 吉原博史



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