1. 「タダで温泉デビューできる」と若者に話題! さとり世代を動かしたリクルートの『お湯マジ!』とは?

「タダで温泉デビューできる」と若者に話題! さとり世代を動かしたリクルートの『お湯マジ!』とは?

 リクルートの観光に関する調査研究・地域振興機関「じゃらんリサーチセンター(以下、JRC)」が展開するプロジェクト『お湯マジ!~ONSEN MAGIC~』の人気が上昇中だ。

 19歳~21歳ならアプリ「マジ☆部」をダウンロード&無料会員登録するだけで全国180ヵ所超の温泉の立ち寄り入浴料が無料になるお得さがウケ、2015年9月のサービス開始以来、会員は2016年2月現在で、すでに10万人を超えている。

 Twitterで「お湯マジ」を検索したり、ハッシュタグ「#お湯マジ」には「お湯マジ!を使って、初めて箱根の温泉に行ってきたよ」「お湯マジ!で友達誘って今週2回目の温泉。サイコー!」等、ユーザーたちの楽しげな投稿がずらりと並んでいるという。

日本の温泉ニーズに黄色信号。  温泉を盛り上げるために生まれた『お湯マジ!』

『お湯マジ!22 in おんせん県おおいた』オープニングイベントの様子
 もともと『お湯マジ!』プロジェクトの始まりは、リクルートライフスタイルと大分県の共同プロジェクト『お湯マジ!22 in おんせん県おおいた』(以下『お湯マジ!22』と略)から。22歳限定で大分県の約100施設の日帰り入浴を無料にする企画として、2014年11月~2015年3月にスタート(現在、2期目を、3月末まで実施中)。大学生活最後の年を迎え卒業旅行ニーズが高い22歳を対象に、大分県外から訪問するきっかけを提供し、将来的な大分県リピーターの獲得が狙いとなっている。

 そしてこの『お湯マジ!22』の初年度は、結果、大成功。会員登録者数は約1万2505人、述べ2万6298人もの若者を動かす一大プロジェクトとなった

 その結果を受けて、リクルートライフスタイルでは、さらに温泉好きな若者を育て、ニーズを拡散させていこうと19歳~21歳まで対象とした全国版『お湯マジ!』をスタートさせた。若者の温泉ニーズについて、JRC研究員の山本氏は、次のように説明する。

「JRCが2014年に行った独自調査で、高校卒業~22歳までの間に自主的な温泉旅行に出かけた人は社会人になってからも温泉旅行に行く確率が高いことがわかりました。つまり、今どきの若者たちが大人になってからもよく温泉旅行に行く層になるかどうかは、22歳までに温泉旅行を経験し、温泉の魅力に気づいたかどうか?が1つの分かれ目。そこで未来の温泉旅行リピーターの育成のために、若者をターゲットにすることが有効だと考えたのです」(山本氏)

さとり世代を動かす「お得感」とSNSでの口コミ拡散

『お湯マジ!22 in おんせん県おおいた』参加者たち
 しかし、いまどきの若者たちは「さとり世代」と呼ばれ、買い物や旅行への関心や消費意欲が低いとされる世代。なのに、なぜ『お湯マジ!』『お湯マジ!22』はこんなに多くの若者たちから支持されているのだろうか。

「確かに若者層の宿泊旅行者数は減り続けています。ただ、だからといって彼らの旅行への潜在的な興味やニーズが減っているかというと必ずしもそうではありません。彼らは物心ついたころから、ネット上で価格比較して一番安く買える店を探したり、クーポンや無料サービスを活用したりするのに長けていて、定価で購入しないのが当たり前という世代。コスパ意識が高い上に、上の世代と比較してまだモノやサービスの値段に対する相場観をあまり持っていないのが特徴だと考えています」と山本氏は分析する。

「ですから僕ら大人にとっては普通の『日帰り入浴1000円』という価格に、『え~!?なんでお風呂に入るだけで1000円もするの?家で入ればタダなのに』と、消費を躊躇してしまうことになると考えています。でも温泉への興味や関心がないわけではないので『お湯マジ!なら無料で入れるよ』というと、『タダなら行ってみよう』となるわけです。そしてその様子をハッシュタグを付けてTwitterやInstagramで頻繁に発信してくれるので、『お湯マジ!』は特に大々的なプロモーション等を打ち出さずとも、口コミで若者たちの間にごく自然に広がることができています」(山本氏)

 たとえ入浴料は無料でも温泉地に来る若者たちが食事をしたり買い物をしたりすれば、地元の経済の活性化に繋がると思いますし、エリア自体に活気が生まれてくれる。しかもその若者たちが将来、宿泊客やリピーターとして戻ってきてくれるかもしれないとあって、『お湯マジ!』『お湯マジ!22』にかける温泉地側の期待は大きい。

車を持たない女性ユーザーの「交通手段」改善がカギ。

 今年度スタートし、順調に会員数を伸ばし続ける全国版『お湯マジ!』だが、1つだけ想定外だったことがある。それは、実際に温泉を来訪しているユーザー数は男性が女性を圧倒的に上回っていること。男性数人のグループで訪れるケースが多く、温泉施設側も驚いているという。

「それはそれで嬉しいことなのですが、やはり消費のカギは女性を動かすことだと考えています。社会人になっても友人と頻繁に集まったり、旅行にでかけたりするのは女性の方が多いと思いますし、癒しや美容などへの関心から、女性の方が温泉の持つ効能への親和性が高いのではないかと考えています。ですので、若いうちに女性に温泉好きになってもらうことは、温泉活性化のために欠かせない戦略になるのです」(山本氏)

 では、具体的にはどのような戦略を立てれば、女性ユーザーを増やすことができるのだろうか? 山本氏が注目するのは「交通手段」の改善だ。

「『お湯マジ!』世代の女性は男性に比べて車を持たない人が多く、移動のための交通費がネックとなって温泉行きを躊躇するケースが多いのです。今後は温泉地までの交通手段をサポートするプランも検討しています」(山本氏)
 その一環として、現在全国版『お湯マジ!』では、小田急箱根ホールディングスと共同で「1泊2日で箱根をたっぷり楽しむ!キャンペーン」を実施中だ(応募期間~2016年2月15日)。

 小田急線新宿⇔箱根湯本の往復交通、箱根温泉エリア内の8つ乗り物が乗り降り自由、50以上の観光施設などの割引・特典が付いたお得な切符「箱根フリーパス」を『お湯マジ!』会員計50組100人にプレゼントするキャンペーンで、利用すれば「温泉がタダ、交通費がお得」になるとあって、予想以上の反響を呼んでいるという。

大人の「おせっかい」が、日本の温泉文化を守る!

「交通手段」と併せて、山本氏が注目する要素が「仲間づくり」だ。

「若者に『なぜ温泉に行かないの?』と聞くと、意外と多いのが『一緒に行く相手がいない』という声。実際、Twitterで「お湯マジ」と検索したり、ハッシュタグ「#お湯マジ」を見てみると『誰か一緒に温泉に行きませんか?』と仲間を募る内容の書き込みが多いのです。一人では温泉に行くきっかけがない若者同士をマッチングする機会を作れば、温泉好きの若者を増やすことができるかもしれません」(山本氏)
 今後は温泉だけでなく、ご当地グルメや周辺のスポットを網羅したオリジナルの観光プランも整備していきたいという。 交通手段をサポートしてマッチングの場や旅行プランまで演出するとは、まさに至れり尽くせり。少々若者を甘やかしすぎているのではないかという声も聞こえてきそうだが…?

「確かに、少々おせっかいかもしれませんね(笑)。でも若者の温泉離れの原因の一端は、私たちの世代が若い世代に温泉や旅の楽しみを上手く伝えきれなかったことにあるのかもしれません。少し手を貸すだけで若者が『温泉ファン」に育つ可能性が大きくなります。それが地域活性化・地方創生に繋がり、ひいては日本人が脈々と受け継いできた温泉文化を守ることに繋がると考えれば、ある程度の『おせっかい』も必要なのではないかと思います」(山本氏)

 周囲に今年度19~21歳になる若者がいたらぜひ『お湯マジ!』を、22歳の若者には『お湯マジ!22 inおんせん県おおいた』の存在を知らせてあげてほしい。その「おせっかい」が、新たな温泉ファンを生み、地域活性化への貴重なきっかけとなるかもしれない。

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