1. “スーパーのレジがATM代わりに” デビットカードの新サービスに賛否両論、キャッシュアウトとは

“スーパーのレジがATM代わりに” デビットカードの新サービスに賛否両論、キャッシュアウトとは

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 私達の身の回りでもはやお馴染みとなったATM機だが、地方や郊外のような都市から離れれば離れるほどATM機の数は減っていき、不便と言わざるをえない状況にある。一方で、都市ではコンビニにもATMが置かれ、お金を引き出したい時は不自由なく便利に感じられるが、手数料をとられることに不満を感じる人は多いのではないだろうか。

 欧米ではクレジットカードよりもデビットカードが広く普及しており、スーパーのレジ店員が「何ドル必要ですか?」と聞く日本人には親しみの無い光景がよく見られる。これはキャッシュアウトサービスというもので、スーパーのレジでATMと同じように、デビットカードを用いれば口座からお金を引き出すことができるサービスだ。ATMが手数料をとるのに対して、キャッシュアウトサービスは手数料が無料だ。

 キャッシュアウトサービスが2017年に日本にも導入される見込みで、ますます口座からお金を引き出すことが便利になるだろう。しかし、キャッシュアウトサービス導入の動きは過去にも何度かあり、様々な反対の声から却下されていたのだ。ますます便利になることが見込まれるキャッシュアウトになぜ反対の声が集まるのか、そしてキャッシュアウト導入後の日本はどうなるのか迫っていこう。

キャッシュアウトサービス導入がもたらす効果

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買い物ついでに預金口座引き出しが可能に!

 キャッシュアウトの何よりの強みはATMにはない“手数料無料”だ。私達は預金口座からお金を引き出すには、キャッシュカードを街中のどこかに設置されているATMに認証させなければならない。さらに、利用している銀行のATMでなければ手数料がかかってしまう。つまり、探す手間がかかる上に余計なお金までかけてしまうのだ。

 デビットカードというものをご存じだろうか。日本人は現金を支払う習慣が根強いため、個人消費の決済手段はクレジットカードでも14~15%、デビットカードは1%しか利用されていない。しかし、欧米ではデビットカードが利用率は高く、すでにキャッシュアウトサービスも導入されている。デビットカードは、消費と同時に自身の預金口座から消費分引き落とすことができるカードだ。キャッシュアウトはデビットカードのサービスの応用版と言えるだろう。

 そもそもキャッシュアウトサービスの導入は、小売店にどのようなメリットがあるのだろうか。キャッシュアウトを利用するためには、小売店での買い物が必須だ。例えば、1万円を引き落としたい場合、スーパーで1本のペットボトル150円を一緒に購入すれば、自身の預金口座から1万150円が引き落とされ、1万は自身の手元に渡され、150円はペットボトル消費分として支払われるという仕組みだ。つまり、小売店は手数料代わりに店の商品を購入してもらうことができるのだ。

将来的には、タクシーや宅配業者もキャッシュアウト可能?

 キャッシュアウトの利便性をさらに応用しようと、金融庁は小売店だけでなくタクシーや宅配業者へのキャッシュアウト導入も視野に入れている。高齢化社会である現在、預金口座からお金を引き出すのに、高齢者がATMを探し回らなければならないのは酷だ。まして、外出の難しい高齢者もいるだろう。タクシーや宅配業者へのキャッシュアウト導入が実現されれば、高齢者は手軽にお金を引き出すことができるのだ。

 キャッシュアウトを高齢者に合わせたサービスへと応用させることで、デビットカードの普及率は爆発的に向上することが見込まれる。タクシーや宅配業者にデビットカード認証用の携帯型端末を持たせれば、キャッシュアウト導入は可能だ。日本が欧米のようなデビットカード社会に変化する時もそう遠くないように思える。

キャッシュアウトサービス導入への賛否の声とは

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キャッシュアウトサービス導入のリスク

 小売店のレジをATM代わりにするということは、レジがATM分の対応をできるだけの現金を保管しなければならないということだ。ATMに比べてレジは強盗に遭いやすいというリスクがある。さらに、ATMは機械的な取引だが、レジはレジ店員と利用者の人為的取引となるため、手違いが発生するリスクも生じてしまう。

 タクシーや宅配業者へのキャッシュアウトサービス導入についてもリスクは生じる。小売店のレジと違い、タクシーや宅配業者は常に移動し続ける上にサービス提供者も常に1名だ。つまり、保管することができる金額はATMどころかレジにも及ばないため、利用額に制限をかける必要性が生じる。また、強盗のリスクが高まることや人為的ミスが起きる可能性はレジ同様である。

 高齢者の利便性が高くなるサービスは確かに需要も大きい。しかし、こうしたサービスの登場は、新たな犯罪を生む可能性も高めてしまうのが現実だ。近年のマイナンバー制度導入の際にも、マイナンバーを利用した詐欺が発生した。今後、キャッシュアウトサービスを利用した詐欺が起きても全く不思議ではないのだ。

キャッシュアウトサービスが解決する問題

 地方郊外は高齢化や過疎化が原因で、利用率の低いATMを減らされることがある。こうした金融機関の減少により、地方郊外に住む人々は預金口座からお金を引き出すのに、大きな手間がかかってしまうのが現状だ。ATMを増やせば問題は解決するのだが、金融機関も採算のとれないATMの増加には踏み切れないだろう。キャッシュアウトサービスの導入はこうした問題の解決策として有力視されている。

キャッシュアウトの真の目的は、デビットカードの普及?

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 実はキャッシュアウトサービス導入案は最近出たものではない。2000年にゆうちょ銀行やみずほ銀行が中心となって、デビットカードを欧米のように日本でも普及させるため、Jデビットサービスを開始した。しかし、加盟店数も少なく、クレジットカード会社の協力も得られなかったデビットカードはそれほど普及しなかった。そのため、この現状の打開策として、キャッシュアウトサービス導入案が何度か提案されていた。しかし、管理面やリスク面などの問題から反対の声が多く、却下されていたのだ。

 なぜ今回、キャッシュアウトサービス導入が実現することとなったのだろうか。その理由は大きく分けて3つある。

①ゆうちょ銀行の上場に伴う経営方針の転換

 デビットカード普及の中心にいたゆうちょ銀行はこれまで半官半民のような企業であったため、一企業としての儲けよりも社会の諸問題を解決することに重きを置いていた。しかし、上場したことにより半官半民企業から民間企業へと移行しなければならなくなった。

 民間企業ともなれば、一企業としての儲けを重視しなければならない。ゆうちょ銀行が儲けを得るためには、デビットカードを普及させることが重要だ。この現金支払い習慣が根強い日本で、デビットカードを普及させるためにはデビットカードに魅力を持たせなければならない。デビットカードに魅力を持たせる画期的なサービスがキャッシュアウトなのだ。

②ビザをはじめとするデビットカードの波

 欧米では広く普及しているデビットカードだが、そのデビットカードの中でもビザが発行するビザデビットは大きなシェアを誇る。また、ブランドデビットもビザデビットに次ぐ広がりを見せている。これら海外のデビットカードに対して、日本のデビットカードはあまり普及していないのが現状だ。

 もし現在の普及率のまま、デビットカードが日本へ普及する機会が生まれたら、日本のデビットカードはビザデビットやブランドデビットには勝てない。なぜなら、ビザデビットは世界3000万の加盟店数を持ち、ブランドデビットはクレジットカードのネットワークをそのまま利用できるからだ。日本のデビットカードにはこうした汎用性がないのだ。

 ビザデビットやブランドデビットに日本が侵される前に、日本のデビットカードを普及させることが急がれる。そのため、まだビザが手をつけていないキャッシュアウトを日本に導入させることで、爆発的な普及を狙っているのだ。

③デビットカードを巡る、みずほ銀行vs三菱東京UFJ銀行

 個人や中小企業を対象とした小口金融業務を中心に取り扱うみずほ銀行は、ATMの普及を図ってきた。例えば、イオンなどの小売店にATMを設置するなどの取り組みを行ってきた。しかし、それでも利用率は低かったため、キャッシュアウトサービス導入へ踏み切った。

 みずほ銀行がJデビットというデビットカードを日本に普及させる動きの中心にいるのに対し、三菱東京UFJ銀行はビザデビットで世界中に対応するサービスを展開していくことを狙っている。三菱東京UFJ銀行のビザデビット導入の動きに対抗するためには、みずほ銀行はキャッシュアウトサービスの導入を急ぐしかなかったのだ。


 現金支払い習慣の根強い日本でも交通電子マネーの普及など、キャッシュレス化がゆっくり進んでいる。キャッシュアウトサービスが導入されれば、デビットカードの普及率は爆発的に伸びて、キャッシュレス化を一気に進めることとなるだろう。しかし、現在の日本には、まだキャッシュアウトサービスを導入するのに、越えなければならない壁がいくつも存在する。今後、これらの壁をどのように超えていくのか楽しみである。

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