1. 「ものづくり業界の救世主」ガレージスミダ設立者・浜野慶一が語る、町工場の下請け脱却への展望とは

「ものづくり業界の救世主」ガレージスミダ設立者・浜野慶一が語る、町工場の下請け脱却への展望とは

出典:www.garage-sumida.jp
 1960年代、高度経済成長期の真っただ中であった日本では様々な工業が活発化していた。大量生産時代であった各産業にとって、町工場は必要不可欠な存在であったため、東京都墨田区だけでも約1万の町工場が存在し、大手企業の躍進を支えた。町工場のものづくりの技術なくして、日本の高度経済成長はなかったと言っても過言ではないのだ。

 しかし、1970年代前半になると、高度経済成長の勢いが止まり、日本経済は不況の時代を迎えた。大手企業はコストを削減すべく、国内の町工場に依存していた部品作りをより安く手に入れることができる海外に着目した。結果的に町工場が請け負っていた仕事は大幅に減少し、町工場の後継ぎ問題が発生するまでに至った。また、約1万あった墨田区の町工場も約2500まで減ってしまったのだ。優れた技術を持っているにも関わらず、町工場は冬の時代を迎えているのだ。

 今回は、1月19日(火)放送予定の『ガイアの夜明け』に合わせて、日本のものづくりを守るべく設立されたガレージスミダと、ガレージスミダの生みの親である浜野製作所社長・浜野慶一の日本のものづくりや町工場への想いに迫るとしよう。

日本ものづくりの救世主、ガレージスミダとは

出典:www.garage-sumida.jp
 運営会社:株式会社 浜野製作所
 代表者:代表取締役社長 浜野慶一
 所在地:東京都墨田区八広4-36-21
 設立:2014年4月16日
 
 ガレージスミダを運営する浜野製作所は創業40年以上の歴史を持ち、東京の墨田区で金属加工業を営む企業だ。ガレージスミダは、3Dプリンターやレーザーカッターなどのデジタル工作機器を備えている施設で、誰でも利用申請が承認されれば、ガレージスミダの工作機器を利用することができる。また、工作機器の利用だけでなく、ものづくりの相談にも乗ってくれる。つまり、町工場の交流の場としても機能することができるのだ。

 ガレージスミダを運営する浜野製作所の技術とノウハウを他の町工場に提供することで、労働力不足や技術力不足など様々な問題を抱えていた町工場が、満足に企画・開発・設計を行う環境を手にすることができたのだ。実際、町工場だけでなく、大手企業の事業開発部門やベンチャー企業の利用も多い。日本のものづくり業界がどれだけガレージスミダのような施設を必要としていたか伺える。では、ガレージスミダがものづくり業界に寄与するインキュベーションの特徴をご紹介しよう。

ガレージスミダのインキュベーションの特徴①:Fab

ガレージスミダはデジタル工作機器を完備している上に、驚くことに、スタートアップ企業がデジタル工作機器を無料で利用することができるのだ。ガレージスミダが日本のものづくりを支えようとしている思いを感じずにはいられない。

 ガレージスミダのような環境は、短時間で急激な成長を狙うスタートアップ企業にとって理想的なことだろう。今後も、ガレージスミダを拠点としたスタートアップ企業の増加が見込まれる。

ガレージスミダのインキュベーションの特徴②:試作支援

 ガレージスミダのサービスは工作機器の開放に留まらない。なんと自分が開発したいモノについて、町工場の職人であるガレージスミダのスタッフがアドバイスをしてくれるのだ。

 つまり、ガレージスミダの利用者は、40年以上の歴史を持つ浜野製作所の技術とノウハウを提供されつつ、町工場の機器を利用して試作することができる。他の企業のものづくりをここまでサポートしてくれる施設は、ガレージスミダを置いて他にない。

ガレージスミダのインキュベーションの特徴③:シェアオフィス

 どんな企業も工作をすることができる場だけでは、経営していくことはできない。他企業との交渉や社内会議などができるオフィスが必要だ。しかし、経営が不安定なスタートアップ企業や町工場は、オフィスを整えることも難しい。

 ガレージスミダは、オフィスを利用者に開放している。オフィスを共用スペースとすることで、日本のものづくりに尽くす人々が提携する機会を生むことができるのだ。

ガレージスミダのインキュベーションの特徴④:経営支援・投資

 スタートアップ企業や町工場が優れたものづくりを行っていくためには、資金の調達が必要不可欠だ。また、経営を順調に行っていくためには、知識と経験が必要だ。

 ガレージスミダでは、経営支援・投資を行うグローカリンクという企業のスタッフが、スタートアップ企業や町工場などに経営のアドバイスをしてくれる。さらに、審査を通過することができれば投資もしてくれるのだ。

ガレージスミダの生みの親・浜野慶一

大手の仕事がなくなっても、個人や大学など視野を変えれば需要はある。ですが、町工場は30年も40年も、付き合いのある大手さんにしか自分の技術情報を流していないので、何をどうやって開拓すればいいか分からないんですね。だから、町工場の技術やノウハウを発信する拠点にしたいなと思って、ガレージスミダを立ち上げたんです。人や会社が集まって、市場を開拓したり作ったりする場にしたいと。

出典:ニッポンの町工場はこう生き残る:日経ビジネスオンライン

 浜野慶一が語ったこの想いの通りに、ガレージスミダはものづくりに尽くす人達の心の拠り所となっている。ものづくりの救世主とも言えるガレージスミダを生み出した浜野慶一は一体どのような人物で、なぜものづくりにここまで尽くすのだろうか。

  浜野製作所は1968年に設立され、自宅と会社を兼ねた小さな町工場だった。浜野慶一は幼い頃から、父が町工場で仕事をしている姿を見ていたが、経済的に不安定だったことから、ものづくりの仕事に対して良い印象を持っていなかった。しかし、高校卒業した頃、浜野慶一は父から、ものづくりの仕事に対する誇りを語られ、父のものづくりの仕事を継ぐことを決めた。

一番大きな問題は事業承継。墨田区の町工場の3分の1は従業員3人以下という規模です。つまり、お父さんとお母さん、息子もしくは職人さん。息子さんは「こんな儲からない仕事よりもちゃんと大学にいって勤めなさい」と幼い頃から言い聞かせられていますから、後を継ごうとは思いませんよね。

出典:ニッポンの町工場はこう生き残る:日経ビジネスオンライン
 父の後を継いだ浜野慶一は何とか経営を軌道に乗せることができた。しかし、ものづくりの仕事に取り組めば取り組むほど、町工場の実態がどれだけ厳しいものか思い知る。大手企業から請け負う仕事の数は減ることはあっても、増えることはほとんどない。ものづくり業界に今必要なものは、仕事に誇りを持つことだと浜野慶一は語る。

『このシャッターの奥で一体何が起きているんだろう』と、身を乗り出して見たくなる。そんな業種がものづくりのはずだと今でも信じている。先代の顔に泥を塗るわけにはいかない。この誇り高い仕事を、次の世代に引き継いでいくのが私の責任なんだ

出典:町工場かっこよすぎ泣いた 江戸っ子1号からベンチャー支援へ 浜野 ...
 ガレージスミダを設立することで、ものづくりに対して誇りを持つ職人が増える。そして、町工場全体がものづくりに対する活気に溢れていく。活気に溢れた町工場を見た次世代の人達が、ものづくりに惹かれていく。浜野慶一が思い浮かべるガレージスミダを中心としたものづくりの未来に、ものづくり業界は今一歩ずつ歩んでいる。


 浜野慶一が生み出したガレージスミダは「モノが作れるベンチャー育成施設」として、今日もものづくり業界をけん引している。危機が迫ったものづくり業界という現状に対して、浜野慶一が「誰かがやってくれるだろう」という気持ちでいたら、ガレージスミダは存在しない。つまり、私達は新しい潮流を待つのではなく、新しい潮流を作り出すという姿勢でなければ、前に進むことはできないのだ。

U-NOTEをフォローしておすすめ記事を購読しよう
この記事を報告する