1. 女性誌トップ『VERY』編集長・今尾朝子の仕事の流儀:出産を経たママに送る“頑張らない”スタイル

女性誌トップ『VERY』編集長・今尾朝子の仕事の流儀:出産を経たママに送る“頑張らない”スタイル

出典:NHK『プロフェッショナル〜仕事の流儀〜:『VERY』編集長・今尾朝子』
 今尾朝子という名を聞いたことがあるだろうか。結婚、出産を経たおしゃれなママたちの圧倒的な支持を得る、女性向け雑誌『VERY(ヴェリィ)』編集長、今尾朝子(いまお・あさこ)といえばピンとくる人もいるかもしれない。

 今尾朝子はフリーライターから、女性誌『STORY』の専属ライターを経て、2007年に『VERY』編集長に就任する。現在『VERY』は出版不況といわれる中でも、圧倒的な強さを誇り、広告収入だけでも5億に上る。

 現在の『VERY』をつくりあげた今尾朝子とはどんな人物なのか。実は今尾朝子の仕事に対する姿勢は、結婚、出産という経験を経て大きく変わってきている。

 1月18日(月)NHK「プロフェッショナル〜仕事の流儀〜」では、そんな今尾朝子の思いにフォーカスした放送が予定されている。放送に合わせて、『VERY』編集長・今尾朝子のその思いに迫っていこう。

これまでの今尾朝子の“頑張る”働き方

 結婚、出産を経たママたちに向けた女性誌『VERY』が発行部数を伸ばし、30代向け女性誌トップとなった裏側には、今尾朝子のプライベートの犠牲があった。結婚、出産を経たママを対象に、リアルで手が届きそうな「半歩先」を提案するというコンセプトにこだわった雑誌づくりに奔走。今尾朝子の生活は、寝ている時間を除けばいつでも仕事の態勢だった。
 
 雑誌編集の現場は夜型なこともあり、今尾朝子はじんましんが出るなどの身体の不調を経験する。部下が、自分のような働き方をロールモデルにしたいと思うわけがないと次第に感じるようになった今尾朝子は、少しずつ朝に集中して、電車があるうちに帰る日を増やす努力をするようになっていった。そんな流れの中、出産による10ヶ月の産休、育休を経て職場に復帰した今尾朝子は、これまでの働き方を大きく見直すようになったという。

出産を経て今尾朝子が感じた「頑張ることへの疑問」

 今尾朝子が出産を経て現場に復帰して感じるのは、仕事と育児の両立の難しさである。頑張って仕事をする女性が増えてはいるが、今の日本社会では、出産したママはギリギリのところでなんとかやっているだけで、この社会状況のままではよくないと今尾朝子は考えている。

 出産を経て職場復帰をしてから、今尾朝子は子どもの幼稚園の送り迎えのために17時には帰宅するようになった。今尾朝子は自分自身が働き方を大きく変えたことで、職場の空気も大きく変わりつつあると感じている。若い人が、結婚、出産をすることに対して不安をもたないですむようにしていきたいと今尾朝子は思っているのだ。

今尾朝子が結婚、出産したママたちに「伝えたいこと」

出典:NHK『プロフェッショナル〜仕事の流儀〜:『VERY』編集長・今尾朝子』

これまでの今尾朝子の「半歩先をいく」雑誌づくり

 今尾朝子は自分で想像がつくことはたかがしれている、と読者調査を大事にしてきた。今尾朝子自身が路上に立ってアンケートをすることもあれば、イベントなどで話を聞いてみたいと思った人に声をかけることもある。読者にとって面白いことを徹底的に追求しようとする姿勢を今尾朝子はもっているのだ。

 結婚、出産を経たママを対象に、かわいいよりかっこいい路線で、「半歩先」を提案してきた『VERY』は女性の心をとらえ、圧倒的支持を得る人気女性誌となった。『VERY』創刊当時はまだまだ専業主婦が多かったが、今尾朝子が編集長に就任したころから、結婚、出産を経ても働くママたちが増えていく状況があった。

 結婚、出産した後も働くことに誇りをもつママが増えていることを肌で感じた今尾朝子は、それまでの控えめで可愛らしいことをよしとする主婦像から、結婚、出産を経ても働くかっこいい女性像を描く路線を打ち出したことで成功したのである。

出産を経た今尾朝子の「頑張らない」雑誌づくり

 今尾朝子が出産のために休職している間、『VERY』は編集部の皆がそれまでの方向性に忠実な雑誌づくりを行った。舵取り役の今尾朝子が不在だったため、守りの期間になってしまっていたのである。

 結婚、出産を経たママたちに「半歩先」の新しいライフスタイルを提案するというコンセプトも、それが定着してしまえばつまらなくなる、と今尾朝子は考える。自身が出産を経て職場復帰した今、枠から外れるくらいの新しいことをやってみようと編集部を鼓舞している。

頑張らなくても大丈夫というメッセージ

 今尾朝子は、リアルな読者の声を大切にする。結婚、出産を経た読者のママたちは皆とても頑張っていて、『VERY』の世界がまぶし過ぎて疲れてしまう、という声を聞くこともあるという。頑張り過ぎてしまうママたちに、「そこまで頑張らなくても大丈夫」というメッセージを届けたいという思いで今尾朝子は新たに雑誌づくりに向き合っていこうとしている。

 それは今尾朝子自身が、出産を経て育児と仕事を両立させようとする中で、無理をしなければ、思うように育児と仕事を両立させることが難しい社会状況を目の当たりにしたことが大きく関係しているのだろう。

 今尾朝子は、出産を経て復帰した職場において、24時間仕事態勢というワークスタイルを大きく変えた。今尾朝子は、職場の若手に結婚、出産に対する不安をもたないでほしいという気持ちで、出産を経た女性としてのワークスタイルを模索しながら、職場の意識を変えていっている。それは、結婚、出産を経たママたちに「そこまで頑張らなくても大丈夫」というメッセージを送りたい気持ちと同じものなのだ。


 結婚、出産を経たママたちを対象にした『VERY』の編集長に就任したときは、今尾朝子も頑張り過ぎる姿勢で仕事に奔走した。その努力があって『VERY』は女性誌のトップを走る雑誌に成長したといえる。また、当時増えつつあった、結婚、出産を経ても働くスタイルを選択する女性の声を敏感に拾って、かっこいい女性路線を選択した今尾朝子の先見性が『VERY』の成功につながった。

 その今尾朝子が出産を経て、自身の働き方と共にまた『VERY』を大きく変えようとしている。自身が結婚、出産を経た今尾朝子がこれからどんなコンセプトを打ち出し、どんな雑誌をつくりあげていくか。これからも目が離せない。

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