1. 意味ある研修のかたち。前代未聞の研修から学ぶ『ヤフーとその仲間たちのすごい研修』

意味ある研修のかたち。前代未聞の研修から学ぶ『ヤフーとその仲間たちのすごい研修』

出典:www.flickr.com
 あなたは今までどんな研修を受けたことがあるだろうか。その研修にはどんな意味があって、何を得られただろう。研修が外部委託で行われる企業は少なくない。しかし外部委託の研修では、それぞれの企業のニーズにマッチしていなかったり、個々に対するきめこまやかさが足りなかったりと、たいして意味のある研修にならないことが多い。

 『ヤフーとその仲間たちのすごい研修』はそういった従来の研修に充実した意味を見いだせなかった一人、ヤフーの人事部長の思いつきから始まった前代未聞の研修の取り組みの記録である。

 今までの研修に意味を見いだせなかった人も本書を読めば、充実した意味のある研修を受けたくなるだろう。人材開発の担当者にとっては、社内の研修のあり方を考えるうえで大変意味のある一冊になるにちがいない。『ヤフーとその仲間たちのすごい研修』から意味ある研修づくりの参考になる取り組みを紹介しよう。

『ヤフーとその仲間たちのすごい研修』ハイライト

・異業種でコラボレーションすることでダイバーシティを体験してもらい、現代のスピーディーなビジネス環境のなかでも自ら課題を発見できるような人材を育てる、というのが研修の狙いだ。

• チームビルディングには、どのチームも苦労した。 意見を言いやすい場をつくることに成功したチームもあれば、コミュニケーションが停滞したチームもあった。ただ、適性に基づいて積極的に役割分担し、目的を共有してプロジェクトを楽しんでいたBチームの熱量は、終始高かった。

出典:『ヤフーとその仲間たちのすごい研修』篠原匡

意味ある研修づくりの方法

 従来の外部委託の研修に充実した意味を見いだせず、充実した意味のある研修を手づくりで行おうと思いついたのはヤフーの人事部長、本間浩輔氏である。研修の監修を東京大学准教授、中原淳に依頼し、ヤフー、インテリジェンス、日本郵便、アサヒビール、 電通北海道、美瑛町役場、6つの組織の人間が集まり、北海道の美瑛町の課題解決に取り組むという、前代未聞の研修が行われた。

異業種メンバーで意味ある研修に

 社風も業態も全く違う組織、年齢も20代前半から40代前半までバラバラで、営業担当者や技術者など職種まで異なるメンバーで研修は行われた。これには、加速していくダイバーシティを身をもって体験してもらうという意味や、自分と合わない人間とも議論を重ねてアウトプットする経験をしてもらうという意味が込められている。

期間限定で意味ある研修に

 研修は半年の期間限定で、メンバーが美瑛町を訪れる日は12日しかなかった。この高いハードルにもやはり意味がある。ビジネスにおいてスピード感が求められる昨今、意思決定にかける時間は短くなる一方である。時間的な厳しさは現実に即した試練として経験してほしいという意味が込められたのである。

地方を舞台にして意味ある研修に

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 この研修は舞台設定にも意味をもたせてある。美瑛町を舞台にしたのは、日本の中でも地方が数多くの課題を抱える地域だからだ。企業に必要なのは、課題を自ら設定し、解決策を導き出せる人材だ。様々な課題を抱える地域社会は人材開発に大きな意味を果たす舞台となるのである。

前代未聞の研修の様相

 『ヤフーとその仲間たちのすごい研修』は、充実した意味のある研修をという思いから本間氏が始めた前代未聞の研修の記録となっている。集められたメンバーがそれぞれの研修チームに振り分けられ、美瑛町の課題解決に取り組んだ、その記録を少しだけ紹介しよう。

A研修チーム、C研修チーム

 A研修チームとC研修チームは設定課題が定まらず苦労した。研修を意味あるものにと集められた異業種メンバーであったが、課題に対して本音の議論ができなかったことに問題がある。同じく意味あるものにと期間を限定した研修だったことで、メンバーの余裕が奪われてしまっていた。 

B研修チーム

 B研修チームは結成当初から熱量が高く、メンバーたちは研修チームにおける自分の役割を考えながら、激務をものともせずグループワークに取り組んだ。研修チームとしての目的もしっかり共有されていて、それぞれのメンバーにとって充実した意味のある研修となっていた。

D研修チーム

 D研修チームにはたまたまシャイな技術者が多く、コミュニケーションが停滞しがちだった。メンバーの熱量の差も研修チームに溝を生んだ。途中研修チームが崩壊しかけてしまったが、あるメンバーが議論のとりまとめに奔走し、厳しい意見も交換できるチームへと変貌したのだった。

E研修チーム

 E研修チームはチームビルディングを着実に行った。異業種のメンバーが集まっていることもあり、まずそれぞれの用語の定義を行い、コミュニケーションにずれが生まれないような工夫からはじめた。E研修チームは誰もが意見を出しやすい場づくりに成功した。


 『ヤフーとその仲間たちのすごい研修』から充実した意味をもつ研修づくりのプロセスの記録を少しだけ紹介した。研修には意味がない、研修は面白くないと思っていた人はぜひ本書を読んで、充実した意味をもつ研修の可能性を感じてほしい。人材開発を担当する人には、これからの社内での研修を意味あるものにするための参考になるはずだ。

 『ヤフーとその仲間たちのすごい研修』には研修チームづくりの失敗、生煮えのプレゼンへの酷評、研修チームのなかで誰がどう貢献し、誰がどうブレーキをかけてしまったのか、全てが赤裸々に語られる。『ヤフーとその仲間たちのすごい研修』は読み物としても興味深い一冊となっている。研修を経験したことのある全てのビジネスパーソンにおすすめする一冊である。

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