1. 大手日本企業のイノベーション事例から学ぶ、才ある人の活かし方『突き抜けた人材“異能ベーター”』

大手日本企業のイノベーション事例から学ぶ、才ある人の活かし方『突き抜けた人材“異能ベーター”』

出典:www.flickr.com
 昨今のビジネスシーンではイノベーションが求められることが増えてきている。君は会社でイノベーションを起こしうる人材だろうか。君がイノベーションを起こしうる人材であったとして、君の会社は君が存分に能力を発揮しうる環境となっているだろうか。

 イノベーションを起こすために必要な斬新な発想力と飛び抜けた行動力を持ち合わせた“異能ベーター”が本領を発揮するには何が必要なのか。本書『突き抜けた人材“異能ベーター”』では様々な企業の具体的なイノベーション事例においてどのように“異能ベーター”が活躍したかのプロセスが描かれている。

 本記事では、いくつかのイノベーションの事例を簡単に紹介する。イノベーションを実現化させるために、マネジメントの立場からどのような環境づくりが必要なのか、イノベーションを起こす立場からどのようなプロセスを経ていけばいいのか、様々な立場のビジネスパーソンの参考になればと思う。

『突き抜けた人材“異能ベーター”』ハイライト

・社内業務を変革する「異能ベーター」は既存の物差しでは評価されづらく、社内で埋もれる可能性がある。「異端児」が能力を存分に発揮し、企業内で正当な評価を受けられる風土を作ることが大切だ。

・イノベーションを起こすには、現場のニーズと分析のシーズ(種)をマッチングさせ、ビジネスになるまで後押しする存在が必要だ。

・イノベーションを社内に波及させるには、いきなり独創的な改革に着手するのではなく、小さな改善を積み重ねて、現場の人からの信頼獲得が重要である。

出典:『突き抜けた人材“異能ベーター”』著者 川又英紀、山端宏実、加藤慶信 編集 日経情報ストラテジー

 本書の事例ではイノベーションの成功裏には“異能ベーター”の存在があったことが描かれている。それぞれのイノベーションの事例から、異能ベーターの活躍をみていきたい。『突き抜けた人材“異能ベーター”』から3つのイノベーション事例を紹介しよう。

“異能ベーター”によるイノベーション事例3つ

イノベーション事例① ネスレ日本  津田匡保氏

出典:www.flickr.com
 一つ目のイノベーション事例として、ネスレ日本が力を入れている新事業、ネスカフェアンバサダーを紹介しよう。このイノベーションの事例で活躍しているのが、ネスレ日本株式会社 コンシューマーコミュニティ開発グループ マーケティング部 部長・津田匡保氏という人物である。

 ネスカフェアンバサダーとは、職場でネスカフェを広めてくれる大使=アンバサダーにコーヒーマシンを無料提供するかわりに、専用カートリッジを継続購入してもらい、 コーヒーを飲んだ同僚から1杯の代金を徴収するという仕組みを採用している。

 津田氏は自動的にカートリッジが届くネット通販を始めるなど、アンバサダーの声にひたすら応え続け、定期購入の離脱者ゼロという結果を生んだ。夏になるとコーヒーの需要が減るという事実もアンバサダーに正直に伝えて、代わりにペットボトルのアイスコーヒーを同僚に勧めるキャンペーンを始めた。するとボトルコーヒーの販売が急増したのである。

 実はこのイノベーション事例における津田氏は、マシンの販売担当からこの新事業へと異例の社内転職を遂げている。ネスカフェアンバサダーの成功は、アンバサダーに寄り添った津田氏のアイデアが生きている。このイノベーションの成功事例から、画期的なアイデアをもたらす“異能ベーター”の存在が重要だと分かる。

イノベーション事例② トヨタ自動車 喜多賢二氏  

出典:www.flickr.com
 二つ目のイノベーション事例として、トヨタ自動車の農業支援を紹介する。このイノベーションの事例で活躍しているのが同社 新事業企画部 企画総括グループ 主任の喜多賢二氏である。トヨタ自動車が自動車のテレマティクスサービスで培ったIT技術を農業の現場に持ち込み、農業支援を情報サービス事業の一つに育てようとしているのである。

 農業を理解するために喜多氏は汗をかいて農業を体験し、3年間の現場経験を経て農作業の流れは行程として捉えられるということを学ぶ。田んぼでスマートフォンを使ってもらうために、入力のメリットを根気よく説明しながら現場検証を続けた。そして1年間で資材費を25%、労務費を5%削減するという結果を得たのである。

 これも津田氏と同じように、現場の声に寄り添った喜多氏が活躍することで成功したイノベーション事例である。

イノベーション事例③ DeNA(ディー・エヌ・エー) 南場智子氏、深澤優壽氏

出典:www.flickr.com
 このイノベーション事例では二人の“異能ベーター”が存在する。DeNA(ディー・エヌ・エー)のファウンダーであり取締役である南場智子氏とDeNAライフサイエンス代表取締役社長の深澤優壽氏だ。遺伝子検査サービスがDeNAのイノベーション事例である。南場氏は癌を患った夫の看病を経験し、病気にかかる可能性を早く知っていることができたらという強い思いをもってこの新事業に乗り出す。

 事業を牽引するリーダーに、すごい勢いで物事に集中できるという特性を持った深澤氏を抜擢する。当初は乗り気でなかった深澤氏も南場氏の思いに触れ、腹を決め、その能力を惜しみなく発揮する。そして2014年に遺伝子検査サービスが実現するのである。

 このイノベーション事例では強い思いをもった“異能ベーター”が存在している。しかし二人は強い思いで突っ走っただけでなく、他の二つのイノベーション事例と同じように、ユーザーに寄り添いながら判定結果の伝え方などに工夫をこらすなど、サービスの実現までには積み重ねた努力があった。

 他の二つのイノベーション事例においても、その積み重ねられた努力は強い思いがあったからこそのものなのだろうと思わされるイノベーション事例だ。


 『突き抜けた人材“異能ベーター”』から3つのイノベーション事例を紹介した。これら3つのイノベーション事例では“異能ベーター”が活躍しているが、突飛なアイデアを突然成功させているのではない。それぞれ強い思いをもって地道な努力を続け、現場の声に応えていくことでイノベーションを成功させているのである。

 この3つの事例では“異能ベーター”が活躍し、成功したイノベーションとなった。しかし“異能ベーター”は既存の物差しでは価値が理解されず、埋もれてしまいやすい存在でもある。イノベーションを成功させるには、現場のニーズと分析をマッチさせ、ビジネスになるまで後押しする存在が必要である。“異能ベーター”が動き続けることのできる環境づくりが重要となるのだ。

 さらに、イノベーションを波及させるには小さな改善を積み重ねることが大事だ。重要なのは思いつきで突っ走る独走と戦略的に攻めていく独創のバランスなのである。本記事ではイノベーション事例の概略しか紹介できなかった。具体的にイノベーションを起こすための発想や、イノベーションを実現化するまでの地道な努力のプロセス、イノベーションを成功させるまでの“異能ベーター”たちの強い思いを知りたければ『突き抜けた人材“異能ベーター”』を読んでほしい。

 これからもビジネスシーンにおいてはイノベーションが求められる場面が増えていくだろう。イノベーションというと新事業や開発ばかりをイメージしてしまうが、社内変革の領域にこそイノベーションの重要性とニーズはある。君が新事業や開発に携わっているわけではなくても、今君の現場でイノベーションが必要なのかもしれないのだ。

 本書を読んで、イノベーションを成功させる環境づくりや、自身が“異能ベーター”として活躍するための参考にしてほしい。

U-NOTEをフォローしておすすめ記事を購読しよう
この記事を報告する