1. “伝統工芸を再構築”する丸若裕俊に聞く、一週間だけオフィスを地方移転する「ポップアップオフィス」

“伝統工芸を再構築”する丸若裕俊に聞く、一週間だけオフィスを地方移転する「ポップアップオフィス」

パリ、東京、地方————それらをつなぐ株式会社丸若屋。

伝統工芸品から最先端技術まで、日本の本質的な美しさを引出し、世界に伝える各種プロジェクトを企画している。2014年はパリ・サンジェルマンにギャラリー兼ショップ「NAKANIWA」をオープンし、日本の美しい伝統のものづくりと文化が世界と出会う場所をつくっている。

2014年11月には、徳島県にて第一回ポップアップオフィスを開催。空き店舗などに突然出店(ポップアップ)し、一定期間で消えてしまう期間限定の仮店舗「ポップアップショップ」のオフィスバージョンだ。今回開催したポップアップオフィス第二弾は、高知県。8月17~21日、丸若屋の社員スタッフ数名と共に、高知県伊野町に滞在していた。

東京・青山のオフィスから、高知県伊野町へ————。働く場所を変え、社員総出で一週間オフィス移転するポップアップオフィスという活動について、丸若屋代表の丸若裕俊さんにお話を伺った。

同時に、高知でポップアップオフィスin高知を開催するきっかけにもなった、映画監督・安藤桃子さんとの対談をお届けする。

丸若裕俊 プロフィール

まるわか・ひろとし/株式会社丸若屋代表取締役。プロダクトプロデューサー。プロジェクトプランナー。 

アパレル勤務などを経て、2010年に株式会社丸若屋を設立。伝統工芸から最先端の工業技術まで今ある姿に時代の空気を取り入れて再構築、視点を変えた新たな提案を得意とする。14年、パリのサンジェルマンにギャラリーショップ『NAKANIWA』をオープン、日本の手仕事の魅力を発信している。

ポップアップオフィスは、チューニングの場

———高知にいる間は、ポップアップオフィスで東京と同じ仕事をしているんですか?

丸若  そうですね。あくまで日常業務は日常業務、その上で、高知に来るきっかけになった友人の安藤桃子さん(映画監督)をはじめ、現地の人がしっかりとスケジュールを組んでいろいろな場所を案内してくれたので、僕もスタッフも上手いこと協力しながら刺激的な体験をすることができましたね。

パソコンが使えれば1週間くらい会社にいなくても余裕で仕事ができますしね。特に僕たちの仕事では、「ちょっと角度変えてみるとこういうふうにも見えるよね?」という気持ちの切り替えが重要ですから、働く場所を変えたり、普段とは違った経験をすることで視点が変わり、いい結果が出たりします。

また出張が多く、スタッフによって出かける場所が違うので、年に何回かは社員全員で同じ場所を見て共有感覚のチューニングをしたほうがいいと思っています。

————働く場所を変えることは、社員さんへのプラスの影響が大きいんですね。

丸若  近い将来、東京でしか仕事ができないというのは考えられないです。それに、大型のショッピングモールができるだけでは地域活性化に繋がるとは思わないので、僕たちなりに地域と関わってなにかできないかなと考えたひとつがポップアップオフィスでした。
————前回(2014年8月)のポップアップイン徳島ではカフェをオフィスにしていたそうですが、今回は民家なんですね。

丸若  ちょうど空き家を活用してほしいというお話をいただいたのがきっかけです。僕としても常にワクワクしていたいから、人の家をオフィスにするのは面白いなと思いました。

高知にいる間、どこに行っても「どこに泊まってるんだ?」と聞かれるんです。ホテルだったらありきたりですけれど、「いの町の線路を渡ったところの家にいます」と言うと、この辺の農家の方たちは「え、あそこ?」と反応してくれるし、他の県民も「なんで、いの町なの?」と興味を持ってくれてコミュニケーションが生まれる。

やっぱり面白いって思ってもらった者勝ちですし、関心を持ってもらうには目線を合わせることが重要だと思っています。

————地域の人とできるだけ同じ目線になろう、と。

丸若  この土地の良いところは何なんだろうということを少しでも知りたいと思って来ているので、同じ目線にならないと何も見えないんです。

最終的な目標は、この土地の「お客さん」ではなくなることですから。高知に関してはぺーぺーだけれど、新しい仲間として受け入れてもらうためには何が必要かなと考えています。

「本物」じゃないと意味がない

———今回はなぜ高知に来ることに?

丸若  高知出身の友人がすごく熱心に高知を紹介してくれたり、友人の安藤桃子さんが移住して「高知においでよ!」と何度も呼ばれたりしたきかっけで、一昨年から5回ほど高知に訪れていたんです。そこで知り合った和紙職人さんの作品をパリに持っていったりと、徐々に縁が深まってきました。 

2回目のポップアップオフィスをするにあたって、できるだけ色濃い場所がいいなと思っていたので、縁のあった高知に決めました。僕にとって最近の「色濃いナンバーワン」は高知なんですよ

———高知のどこが色濃いですか?

丸若  出身の方たちや住んでいる方たちが色濃い(笑)。 

例えば、全国的な統計で、所得は高くないのに県民の幸福度は異常に高いというのは、東京とは価値基準が違う現れだと思うんです。まさに角度を変えて物事を見ている。僕にとっては刺激的でしたね。

なにより、ひとつひとつの物が「本物」なんです。自然や、植物や、作物や、そこにいる人々や……個々の力が強い! 人も、感情を強く持っていて隠せない人が多いんですよね、とくにお酒の席で(笑)。

僕の理想は、最終的に力が強いものが残るというシンプルなものなので、本質的にレベルが高いことが重要なんです。上手くないものを上手く見せたり、本当は高品質じゃない物を高価に見せたりするのではなく、自然の状態で強さを持っている「本物」が魅力的です。高知に来てからの一週間は、たくさんの「本物」を見せつけられてめった打ちにされましたね。
————今後も高知との繋がりは続いていくのでしょうか?

丸若  そのつもりです。すでに2年間くらい構想を練っていますが、やるなら世界中の誰が聞いてもインパクトがあることをしたいですね。 

今はパリにも拠点があり、多くのプロジェクトをしているので、同時に高知でもプロジェクトを持ちたい。自分が高知にいるのと同時間にパリでもプロジェクトをしていると興味を持ってもらいやすいし、繋がっていく。高知とパリをひとつの線として、もっと具体的に結びつけられたらいいですね。

———高知とパリを繋げる、と。

丸若  まあ、高知高知とは言っていますけど、別に高知にこだわっているわけではないんです。海外に紹介する日本らしさが凝縮しているのが高知だな、と僕が感じているだけで。だから高知県産のものを世界に紹介するというよりは、四国や北海道のものも、高知というフィルターを通すとさらに価値があがるよ……という紹介の仕方ができると思うんですよ。

これは、僕が日本のプロダクトを海外に紹介してきたなかでの実感覚だから、自信を持って言える。

———「高知県」にこだわっているわけではないんですね。

丸若  そう。だから「県」で区切るのはもういいんじゃないかと思うんです。県をまたぐのにパスポートがいるわけでもないし、県境も曖昧だから、風土のほうがよっぽど重要ですよ。同じ県のなかでも風土が違うこともあるし、逆もある。「県」というのは行政や仕組みでしかない。

僕がクリエイティブな仕事に関わる理由のひとつとして、小さな頃から、そんな線引きから解き放たれたいという気持ちがあるんです。今でも子どものように「なんで? なんでこれやっちゃいけないの?」と疑問を持つことは大切したい。

その上で物事の質が高いことは最低限の条件ですね。21世紀、質が低いものには何にも価値が残らない。一瞬の刺激はあっても文化を繋げることは出来ない。

《安藤桃子氏との対談につづく》


高知県伊野町 森木邸

Interview/Text: 河野桃子
Photo: 深田名江(人物)

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