人の心を動かす「異動」の挨拶・スピーチの技法とは?:異動は人間関係構築の入口と出口である
- 2017/11/15
- 樋口純平

会社の人事異動は、慣れ親しんだ環境に別れを告げ、新しい人間関係を構築する機会である。
そこで今回は、異動時に行なう別れの挨拶・スピーチと、異動先での挨拶・スピーチの技法を解説する。
異動の挨拶で周囲の心をしっかり掴み、一流ビジネスマンに相応しい人間関係の構築を目指そう。
- 目次
- + + 前部署に対する異動の挨拶状の書き方と例文
- + + 全部署に対する異動の挨拶・スピーチの仕方と例文
- + + 新しい部署に対する異動の挨拶・スピーチ例文
前部署に対する異動の挨拶状の書き方と例文

ビジネスマンの常識「異動の挨拶状を書く」
異動は、お世話になった人たちとの別れと共に、新しい人間関係を構築する機会である。
異動に際してお世話になった人たちに向けて挨拶状や挨拶のメールを送ることは、もはや社会人として常識だ。
しかし、いざその場面がきたときに「異動の挨拶状に書くべき内容はどのようなものが適切なのか」と頭を抱える人も多いだろう。
以下では、異動の挨拶状に記載すべき項目について解説する。
異動の挨拶状には「お礼」「挨拶の言葉」「今後の抱負」を記載する
異動時の挨拶状を書く時に重要なのは「お礼」「挨拶の言葉」「今後の抱負」を書くという点だ。
お礼と挨拶は当然記載するべきものとして思い浮かぶが、3つ目の「今後の抱負」は抜けてしまいがちだ。
今後の抱負や目標は挨拶状に書くことで、受け取った相手に向上心を示すことができるため、ビジネスマンとして好印象を得られやすい。
そのため、異動の挨拶状を書く際には必ず「今後の抱負」も記載することをおさえておこう。
異動の際に参考にしたい「挨拶状」の例文
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拝啓 時下ますますご清祥のこととお慶び申し上げます。
さて、私こと○○は、このたびの異動により○○勤務を命ぜられ過日着任いたしました。
○○在勤中は公私にわたり格別なご厚情を賜り、ありがとうございました。厚くお礼申し上げます。
新任地におきましても精励いたす所存でございます。
今後ともご指導ご鞭撻を賜りますようお願い申し上げます まずは略儀ながらお礼かたがたご挨拶申し上げます。敬具
全部署に対する異動の挨拶・スピーチの仕方と例文

異動の挨拶・スピーチは思い出深いエピソードを盛り込む
異動時、送別会などの場で、新しい環境へと送り出してくれる人たちに向けたスピーチは、形式的なものではなく、人間味のある内容を話した方が好印象だ。
慣れ親しんだ環境での、同僚1人ひとりとの思い出を語りつつ、感謝の言葉をスピーチしよう。
しかし、長い時間をかけすぎても、ダラダラとした雰囲気になってしまうので、事前にスピーチの内容をまとめておくのがベターだ。
思い出を語りつつ、コンパクトなスピーチの例は以下の通りである。
異動の際に参考にしたい挨拶・スピーチの例文
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本日は、私のためにこのような会を開いていただきまして、本当にありがとうございます。
◯月◯日づけで◯支社へ異動になりました。◯◯さんをはじめ、皆様には大変お世話になりました。
5年間の◯◯支店での就業は、皆様のサポートがあったからこそです。
特に◯◯さんと大きなプロジェクトチームを組めたことは、私の最大の誇りです。
時には励ましあい、切磋琢磨しながら成功させた仕事は、新転地においても強みになるでしょう。
◯◯支店の皆様、これからも健康に留意し、良い仕事をしてください。
今後の皆様のご健闘をお祈り申し上げます。今日はこのような会を開いていただき本当にありがとうございました。
悲観的な異動スピーチはNG!異動先への前向きな想いを話そう
異動による別れを惜しんでしまうあまり、異動に対して悲観的な言葉を発しそうなるなるかもしれない。しかし、異動スピーチにおいて悲観的な言葉は控えた方がいい。
送り出す人達には、異動を前向きに捉えている姿勢を見せ、異動先ではどのような仕事をするのかなど、異動先での抱負や目標を伝えよう。
異動先への仕事について語ることで、「立つ鳥跡を濁さず」という言葉通りに、さっぱりと次の職場にいくことができる。
異動スピーチをする際には、悲しい別れのスピーチにならないように心がけて欲しい。
新しい部署に対する異動の挨拶・スピーチ例文

新しい環境への異動が、同じ部署内の人が異動もしくは辞職したことがきっかけであることもしばしばある。
つまり、自分の異動の前提には「前任者の存在」がある。前任者の意思を継いで、周囲の期待や信頼を得るために努力することを伝えてみよう。
異動は、人事部が自分は新しい環境に適切だと判断した上での処置であることを認識し、以下の例文を参考に自信を持った挨拶・スピーチをしてほしい。
前任者について触れる異動の挨拶・スピーチ例文
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本日はこのような会を開いていただき、本当にありがとうございます。
私こと○○は前任者の△△課長の退職に伴い、○月○日付けにて当部署○○に異動となり、本日着任いたしました。
入社して○○部に配属、その後○○支店で○年スタッフとしての仕事をしてまいりましたが、このたび初めてこちらで営業の仕事につくことになりました。
前△△課長のような活躍ができるかは分かりませんが、新入社員のような初心に戻って営業を一から学ぶ覚悟です。
慣れない仕事でご迷惑をおかけすることもあるかと思いますが、やる気だけは人一倍あります。
一生懸命頑張りますので、どうかご指導のほどよろしくお願い申し上げます。
異動先で役職に就く場合は“親しみやすさ”をアピール
異動先で地位の高い役職に就く場合、「どのような上司になるのだろうか」と異動先の人達は警戒心を持っていることがある。
異動時の挨拶やスピーチの場でその警戒心を解くには、親しみやすさをアピールする必要があるのだ。
異動先で役職に就く場合、自分に対して意見を言うことを歓迎するといった旨のスピーチするのが好ましいだろう。
異動のスピーチに限らず重要な「笑顔」
もちろん、親しみやすさをアピールするために、笑顔でスピーチすることも重要だ。異動の場に限らず、別れと出会いの挨拶やスピーチで“笑顔”は欠かさないようにしよう。
ビジネスにおいて人間関係の構築はとりわけ重要なもの。人間関係構築の基礎である挨拶は、人前で話すことが苦手な人でもできるようになるべきだろう。
また、自分の部署へ異動してくる人の挨拶やスピーチは、自分が異動の挨拶やスピーチをする時に役立つ。「このフレーズいいな」と思ったところは、後でメモするなどしておくとよいだろう。
ぜひ、これから一緒に仕事をしていく新しい人とどのように人間関係を構築していくべきか、考えながらスピーチを聞くようにしてほしい。
異動は今までと違う仕事を任されたりと、今までの知識やノウハウを活かせないこともあり、あまり好ましいことではないかもしれない。
しかし、視野を広げてみると新たな人間関係が構築できたり、新しいスキルが身についたりと、異動がチャンスに見えてくるはずだ。
異動時の挨拶やスピーチをする際に限らず、異動そのものを前向きに捉えた方が、自分にとってプラスになるはずだ。
別れは悲しいかもしれないが、記事内で紹介したスピーチ技法を胸に、新たな門出に向けて堂々と一歩踏み出してほしい。