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新しい働き方で、会社を辞めずに起業家になる『僕たちは「会社」でどこまでできるのか?』

Erika Muranaka

2016/01/29(最終更新日:2016/01/29)


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新しい働き方で、会社を辞めずに起業家になる『僕たちは「会社」でどこまでできるのか?』 1番目の画像
出典:www.flickr.com
 君は自分が起業する選択肢を考えたことがあるだろうか。会社の中で働くことに息苦しさを覚え、新しい働き方を考える中で起業の選択肢が浮かんだことがある人もいるかもしれない。

 今から紹介する『僕たちは「会社」でどこまでできるのか?』の著者、塩見氏も野村證券に入社当時は、会社に毎日の仕事をやらされているような気持ちで働いていた。しかし様々な経験を経て、会社の中で起業家のように働くという新しい働き方を本書で提示するに至ったのである。

 新しい働き方として起業も一つの選択肢となる。しかし、会社で働くことの何に息苦しさを感じているのかを振り返り、会社に属したままでも新しい働き方で働くことを模索する道もある。むしろ、会社に属したまま起業家のように働くといったような、新しい働き方の中にこそ面白みがあるのではないか。

 『僕たちは「会社」でどこまでできるのか?』から、塩見氏が企業の中で新しい働き方を模索する中で得た知見を、そして実際に会社の中で新しい働き方を実践した過程を紹介する。塩見氏が興したモーニングピッチという事業自体が、起業家の新しい働き方を支援する取り組みもなっているので、それにも触れていこう。

 塩見氏の知見、取り組みを知ることが、起業家として新しい働き方を模索している君や、会社に属しながらも新しい働き方はできないかと悩んでいる君の参考になればと思う。

起業家の新しい働き方を支援するモーニングピッチ 

新しい働き方で、会社を辞めずに起業家になる『僕たちは「会社」でどこまでできるのか?』 2番目の画像
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起業家の模索する新しい働き方の実現の難しさ

 昨今の日本では、会社に属さない新しい働き方を求めて起業する起業家も増えてきている。しかし、まだ日本ではベンチャー企業が容易に資金調達できる環境が整っていない。また、資金繰りが事業の存続を決めるというプレッシャーから年間稼働日数が360日になる例もある。

 新しい働き方を求めて起業家になったはいいものの、思い描くような新しい働き方は全く実現できないといったような状況に陥っている起業家も少なくない。日本の起業家は決して良好でない起業環境に直面しているのである。

起業家の新しい働き方を支援するモーニングピッチ

 起業家を取り巻く過酷な環境を救おうと塩見氏が創り出したのがモーニングピッチという事業だ。モーニングピッチは毎週の早朝に起業家が、集った企業の事業開発担当者やメディア関係者に事業のプレゼンテーションを行うというイベントである。

 モーニングピッチの取り組みは現在も拡大していきながら、起業家と企業の橋渡しとなる大きな役割をもつようになっている。起業家はモーニングピッチに参加することで企業に新しい働き方を支援してもらえる可能性が生まれている。

 このイノベーション的な事業を興した塩見氏は野村證券に勤めている。塩見氏はモーニングピッチを成功させることができたのは、自分が大企業である野村證券に勤めているからであり、その強みを活かせたからだと考えている。塩見氏自身が実現している新しい働き方をみていこう。

新しい働き方を模索して会社がイヤになっていた日々

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 起業家の新しい働き方を支援するモーニングピッチを創り出した塩見氏は、今では大企業である野村證券に勤めていることを自身でもありがたく感じているが、入社当時は会社で働くことがイヤでたまらなかった

 毎日の仕事を会社にやらされているのような気持ちで取り組み、会社から抜け出した新しい働き方がないものかといったことも考えただろう。納得のいかない人事異動も様々な人の説得を受けて渋々引き受けるような状態だったという。

 しかしそこで覚悟を決めて、異動先で同期2位の成績を残し、考え方を改めていくようになる。会社も仕事も、結局は自分が選択したものなのだし、目標をもって毎日を無駄にしないようにするようにした。イヤなことでも受け入れることで未知の可能性が開けることもある。
 
 最後には一緒に頭を下げてくれる上司や先輩というありがたいサポート環境が会社にはある。会社の決定はまずやってみて、それでもダメなら別の行動を考えればいいのではないか、と塩見氏は会社の中で新しい働き方を模索していくことになったのだ。

会社に属したまま新しい働き方で働くメリット

 会社を飛び出て新しい働き方を模索するより、会社に属したまま新しい働き方で働くほうがメリットが大きいと塩見氏は考える。その大きなメリットの一つは、会社のリソースを使って大きな仕事がしやすいという点だ。

 モーニングピッチという事業も、もともと野村證券とベンチャーをサポートする会社が共同で行っていたイベントを見直すことで生まれた。さらに、モーニングピッチという場を野村證券という大企業が支援することで、参加するベンチャー企業の信用も補完される。塩見氏が起業家のように新しい働き方を追求しながらも、野村證券に属していたことでモーニングピッチは大きく育つことができたのだ。

会社で新しい働き方を実現させるには

 会社に属したまま、新しい働き方を追求して、そんなに容易に実現できるものだろうか。塩見氏は、会社で新しい働き方を実現させるために必要なことを教えてくれる。

会社で新しい働き方を実現させるために協力を得る

 企業で評価の重要な物差しとなるのは、収益が出るかどうかである。新しい取り組みですぐに収益を出すことは難しく、会社の中で新しい働き方を実現させようとしても、仲間を見つけることは難しい。

 塩見氏は自分のビジョンに共感してくれた相手から業務時間やリソースの一部を無償で提供してもらった。相手の負担は「これくらいならダメージはそれほどない」という程度ですむようにするのがポイントだ。多くを求めず、リスクは自分で抱える。小さなイエスを積み重ねる形で協力を得ていったのである。

 上司からは、時間を使うことに対して許可を得ておく。そして上司が止めはしないけど協力もしないといった状態を作り出しておく。うまくいったときに、この状態が効いてくるのである。

会社で新しい働き方を実現させるために経営側に認められる

 経営側に敵と見られては、新しい働き方を実現していくことは難しくなる。正々堂々、正面から意見を伝え、伝わるまで訴え続ける。経営側が振り向かなければ、さらに価値を上げてから意見をもっていくというプロセスを繰り返す。

 出た杭は打たれるというが、経営側が価値を認めるまでに出過ぎた杭となれば打たれることはなくなる。

会社で新しい働き方を実現させるために自分を本流にしてしまう

 また見方を変えれば、出た杭が打たれるのは、並べた中で一本だけ高いからなのであって、周りの杭も自分の高さまで揃うようにすれば打たれることはなくなる。自分の価値観を既存のビジネスモデルに組み込んでしまい、自分の考えを本流にしてしまえば新しい働き方の実現は近づくのだ。

 
 『僕たちは「会社」でどこまでできるのか?』から、起業家の新しい働き方を支援するモーニングピッチの取り組みと、それを興した塩見氏自身が会社に属したままで新しい働き方を実現させていった過程を少しだけ紹介した。

 起業家の動きが活発になりつつある日本で、会社で働いていたとしても新しい働き方について考えてしまう人は少なくないだろう。もちろん、会社を出て起業家として新しい働き方を模索していくのも一つの道だ。実際塩見氏が始めたモーニングピッチの取り組みは大きな動きとなりつつある。日本もこれからは、起業家としてのチャンスがつかみやすい環境に変わっていくかもしれない。

 しかし、塩見氏は会社の中で起業家のように働く新しい働き方も提案してくれる。そこにあるメリットはとても大きなものだと教えてくれている。

 『僕たちは「会社」でどこまでできるのか?』を読んで、これからの自分の働き方に思いをめぐらしてみてほしい。会社の中で起業家精神をもって新しい働き方を実現させていく人が増えれば、日本経済を大きく動かすうねりが生まれるかもしれない



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