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まるで催眠術? “相手の心理を掴んで行動を操る”方法『影響力の武器』

Erika Muranaka

2016/01/30(最終更新日:2016/01/30)


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まるで催眠術? “相手の心理を掴んで行動を操る”方法『影響力の武器』 1番目の画像
出典:www.flickr.com
 まるで催眠術を使うように、相手の心を思うように操れたらーー。そんなことを思うときがある。今回紹介する『影響力の武器』は、実験社会心理学者である筆者が「承諾の心理」を研究対象とし、人が要請を受け入れる心理的原理を 「影響力の武器」と名付けて、心理上の様々な承諾誘導のテクニックや考察を一冊にまとめた興味深い心理学の本である。

 筆者は心理学的原理から心理上の承諾誘導のテクニックを分類し、それぞれ人がどのような行動を取るのかについて説明している。ここでは心理的に相手の行動を操るテクニックといった視点から、いくつかの心理学的原理である「影響力の武器」を紹介してみよう。

『影響力の武器』から3つの心理学的原理

まるで催眠術? “相手の心理を掴んで行動を操る”方法『影響力の武器』 2番目の画像
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返報性という心理学的原理

 返報性とは、他人が何らかの恩恵を施したら似たような形でお返しをしなければならない、と考えてしまう心理状況を指す。相手に自分の要求をのんでもらう行動をしてほしいとき、その行動を求めている件とは別に、先に相手に借りを作ると成功しやすい。

 心理学者のリーガンがある実験を行った。作品評定をお願いした2人に対し、1人にだけコーラの差し入れをした。その後、2人にチケット購入をお願いしたところ、差し入れを受け取った方が多くチケットを購入したという。

 相手が行動することを拒否しそうな要求をした後に、本来してほしかった行動を要求する「拒否したら譲歩」という手法がある。これは、譲歩してくれた相手に対し自分も譲歩すべきだ、 という心理に基づく返報性の心理学的原理を応用したものである。

一貫性という心理学的原理

 実際の確率は変わらないのに、ひとたび馬券を買うという行動に出た後は、買う前より勝つ見込みが高まる気がする。これは人間の心理学的原理である、一貫性を通したい欲求によるものである。一度心に決めると、心理的にそのコミットメントと一貫した行動を取るよう圧力がかかり、前の決定を正当化すべく行動しようと考えるのだ。

 例えば玩具業界ではシリーズ物を出すことが多々あるが、これは一つを手に入れるという行動をとったら、他の物も手に入れなければいけないという気になってしまう一貫性の心理をついた商法の一つであるといえる。

 相手にして欲しい行動があるとき、事前にその行動に合致するようなイメージを相手に抱かせコミットメントさせると、その行動を心理的に誘導することができるのだ。

社会的証明という心理学的原理

 社会的証明とは他人が何を正しいと考えているかに基づき、物事が正しいかどうかを判断する心理状況を指す。テレビ関係者は、番組に効果的に録音笑いを利用する。すると視聴者はその笑いにつられ、面白い番組だと感じてしまうという。これは社会的証明という心理学的原理に基づく行動である。

 相手に行動を求めるときに、みんなもやっているからと感じさせることで、その行動を心理的に誘導できる。宗教団体の布教におけるサクラも、これが一番の売れ行きだと強調する広告も社会的証明という心理学的原理に基づいている。
 

 『影響力の武器』からいくつかの心理学的原理を紹介した。本書は、相手の行動を心理的にコントロールするためのテクニック本として書かれたものではないが、人間の心理と行動に対する理解を深められ、実生活でも応用していくことができる。さすがに催眠術師のように相手の行動を思うままに操ることは難しいが、ちょっとした交渉時なんかに「影響力の武器」を使うことで有利に話を進められるのではないだろうか。

 『影響力の武器』は人間の心理や行動、社会との関わりに対する考察が記述された社会心理学の専門書であるが、ちょっとした心の原理を知るつもりで気軽に読んでみてはどうだろう。


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