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いま日本で最も必要とされている「レジリエンス」の意味とは:逆境力の鍛え方『レジリエンスとは何か』

Erika Muranaka

2016/02/03(最終更新日:2016/02/03)


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いま日本で最も必要とされている「レジリエンス」の意味とは:逆境力の鍛え方『レジリエンスとは何か』 1番目の画像
出典:www.flickr.com
 レジリエンスという言葉を聞いたことがあるだろうか? レジリエンスとは、英語で「復元力」「弾力性」「再起性」を意味する単語で、もともとは物理用語の一つだった。

広がっていったレジリエンスの意味

 しかし最近になって「外的な衝撃にもぽきっと折れてしまわず、しなやかに立ち直る強さ」という意味を持つようになり、生態系と心理学の分野で発展した。レジリエンスの意味は広がりをもち、教育、子育て、防災、地域づくり、温暖化対策などさまざまな分野で使われる言葉となっている。

  ここで紹介する『レジリエンスとは何か』の著者は、レジリエンスの意味を「何があってもしなやかに立ち直れる力」と定義し、レジリエンスに対する意識が先進的な世界各国の取り組みと、まだ途上にある日本の取り組みとを比較し、これからの時代におけるレジリエンスの意味とその重要性を説いている。

欠けていたレジリエンス 

 現代において、激化する気候変動の影響、いつ起きてもおかしくない大地震や金融危機、いじめ問題、私たちは様々な危機に直面している。何かが起こったときに切り抜けていくためには、しなやかに強く立ち直れる力が必要になってくる。

 2011年3月11日の東日本大震災では、物流や生産が完全に麻痺してしまった。工場は効率重視の方式を導入し、在庫の少ない効率的な仕組みになっていたが、この地震のように何かが起こった際、すべてがストップしてしまう構造になってしまっていた。レジリエンスが失われた状態だったのである。

レジリエンスの必要性

 世界では、しばらく前からレジリエンスへの関心が高まり、多くの研究者がこの分野での活動を進めている。異常気象や経済危機などの大きな課題に対して、レジリエンスの意味を国家に応用して考えるようになっているのだ。

 これからの時代、レジリエンスは不可欠の力になっていくだろう。これから日本でもレジリエンスを育てる取り組みが広がっていくはずである。『レジリエンスとは何か』を読み解くことで、レジリエンスの意味、これからどんな取り組みが行われていくようになるかを先読みしてみよう。

個人におけるレジリエンスの意味

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by MIKI Yoshihito (´・ω・)

心理学におけるレジリエンスの意味

 ストレスになる出来事、またはネガティブな何かが起こったとき、全員がPTSDになるわけではない。逆境にもかかわらず、上手に適応して立ち直り、逞しく生きている人もいる。心理学の分野で「障碍や逆境にも関わらず、問題を起こさない人や、そうした状況をばねにしてさらに成長している人もいるのはなぜなのか」という視点からレジリエンスの意味が問われるようになってきた。
 
 辛いことがあったときに、しなやかに立ち直り、辛い経験を糧に成長できること(=レジリエンスの意味の1つ)は本人にとっても、社会にとっても幸せなことである。心理学において、レジリエンスの意味やレジリエンスを高めるために必要なことが分かってきて、教育の分野にそれを応用する取り組みが、いくつかの国で進められている。

教育におけるレジリエンスの取り組み

 「レジリエンス教育先進国」の1つとして例に挙げられるのがオーストラリアだ。オーストラリアでは、政府が「子どもたちのレジリエンスと幸せ」の向上に力を入れている。書籍、ゲーム、映画などを教材としてレジリエンスの意味を学ぶ「バウンス・バック!」というプログラムや、ゲームを通してレジリエンスのスキルを学ぶ「マインドマスターズ」というアクティビティなどを実施している。

 アメリカやカナダも教育の現場でのレジリエンス向上プログラムに力を入れ、レジリエンス・スキルを身につけられるように取り組んでいる。日本ではレジリエンスの意味を知る人がまだ少なく、レジリエンスを育てることを謳った取り組みは、政府や教育機関、 NGOなどでもほとんどないのが現状だが、子ども問題の研究者や関心のある教員グループが合同で研究を重ねている。

都市におけるレジリエンスの意味

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by Natsu M

災害におけるレジリエンスの意味

 現代では、温暖化が進み、様々な災害が増えてくることが予測されている。自然災害だけでなく、テロや鳥インフルエンザなどの脅威にも私たちの社会は備えておかなければならない。予防策も重要だが、災害のリスクを評価し、被害を受けたときの対応を講じることで、レジリエンスを高めていく必要がある。

キューバにおけるレジリエンスの取り組み

 世界のあちこちで都市のレジリエンスを考え、対応しようとする動きが盛んになってになってきている。「防災大国」キューバでは、これまで、数え切れないほど多くの命がハリケーンの犠牲になってきた。しかし、2001年にはハリケーンによって国土50%以上のダメージを受けたにもかかわらず、死者はわずか5人。 住宅も1年も待たずに復旧された。

 その背景として、キューバでは民防衛法が制定されて、非常時計画が全国民へ浸透していることが挙げられる。全ての組織が何が脆弱で何を守るべきかを把握し、次に何をすべきか計画を立てているのだ。

世界の都市におけるレジリエンスの取り組み

 世界では個々の都市が自分たちの都市計画にレジリエンスの側面を織り込むようになっているだけでなく、都市のレジリエンス強化に関する情報や先進事例を共有することで、その動きを加速させようしている。日本でもこういった取り組みに着手し、世界のネットワークと情報や経験の交換をするところが増えてくることが待ち望まれている。

 
 『レジリエンスとは何か』から、現代におけるレジリエンスの意味とその取り組みについて、いくつかを紹介した。レジリエンスの意味が整理されただろうか。これからは日本でも、レジリエンスというワードが広がっていくことになるだろう。レジリエンスについて、その意味をさらに深く理解しようと思う人は『レジリエンスとは何か』を一読するといいだろう。


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