1. 「好きなことを仕事にするな」の真意とは 〜CyberZ代表取締役・山内隆裕のビジネスコラム〜

「好きなことを仕事にするな」の真意とは 〜CyberZ代表取締役・山内隆裕のビジネスコラム〜

  20代の若さで初めてサイバーエージェントの取締役になった山内 隆裕(やまうち たかひろ)。スマートフォンのマーケティングに従事する株式会社CyberZの代表取締役も兼務している。若くして経営者として活躍する山内氏とは、どんな男なのか。すぐに役立つ彼のビジネスノウハウをインタビューするこの企画。

  今回は、彼のところに「好きなことを仕事にするには?」と相談に訪れる、若手の起業家や学生たちに喝を入れる。

好きなことを仕事にするのは夢物語

————「好きなことを仕事にするな」とは、いきなりパンチの効いた言葉ですが、どんな意図をお持ちですか?

  最近、「自分のやりたいことをしたい」という若者が多いんです。私のところにも、「好きなことを仕事にしたいんですが、どうすればいいですか?」と、相談に来る若手の起業家や学生が大勢います。

  でも、それは無理だと私は思っています。ビジネスって競争なんです。やりたいことも、やりたくないことでもして食いつなぎ、儲けていかないことには、ヒトもモノもカネも集まらないし、数年後まで生き残れません。

————では、山内さんは仕事に関して「好きなことをしている」という感覚はないんですか?

  あんまりないですね、向いているとは思うのですが。成功したい、ただそれだけなんです。成功っていうのは、成長を継続させること、そして、業界シェアナンバー1になることを意味します。経営を続けていけば、社員が増える。社員が増えると、「倒産させてはいけない」という責任感も強まる。

  とはいえ、倒産させないための経営だけではダメ。でも、好きなことだけやりたいっていうタイプの人って、その意識すらないんですよ。いいことばかり見て、夢物語を語っているだけのイメージですね。歌が好きっていう人は、世の中にたくさんいると思いますが、歌を仕事にするってなるとどれくらいでしょうか。飯食っていくには、歌いたい歌だけ歌うのでは通用しません。ただ好きってだけだったら続かないでしょう。

 “夢”ではなく“目標”をもつべき

————山内さんの言葉を聞いてギクッとした人、多いと思います。その人たちに、救いの手を差し伸べるとしたら?

  好きなことを諦めろ、と言っているわけではありません。やるにはそれなりの覚悟がいるよってことなんです。“夢”も大事ですが、“目標”をもってほしいんです。“目標”をもつと期限が決まるし、数字も出ます。仮に口で大きなことを言っても、地に足をつけてやるっていうのが大事です。コツコツ地道に経営すれば、資産もノウハウも増えていきます。

  そうすると、次のチャレンジが可能になるんです。例えば、音楽で仕事をしたい人がいるとして、夢として語るだけなのと、目標にして行動するのとは違いますよね? 要するに、覚悟を決めてコツコツ儲かる事業を続けていけば、蓄積された社員と資産とノウハウを活かし、いつか音楽事業を始められるって話です。

————コツコツやっても結果が出ないこと、ありますよね? そんなとき、山内さんならどうしますか?

  当然、結果が出るまでには時間がかかります。あたりどころのいい事業を探したり、タイミングをはかったり、やり続けないとわからないことも多いです。当たるまでチャレンジをやめないことが大事なんだと思います。よく成功したところだけがフォーカスされますが、実際しゃがんでる期間の方が長いのが経営です。

  また、「一歩下がったら落ちる」っていうところまで自分を追い込んで、必死にやり続けたときこそ、経営者としての高い能力が得られます。好きなことだけやりたいっていう人の多くは、そういう場面に向き合うことすらしないんですよ。

————どうしてもうまくいかなくて、一度やり始めた事業に見切りをつけるということはないんですか?

  それは、ありますよ。やっていくうちに、「あ、無理だな」とだいたいわかるので。であれば、成功のために方向転換しなくてはなりません。朝令暮改でも恐れてはいけません。だれから何を言われようと、関係ないですし、人に嫌われる覚悟は、経営者に必要な資質。いいことばかり見ている人は、そういう覚悟ができないでしょうね。

孤独感や虚無感…心の隙間が私の源

————山内さんのそのストイックさの源は何なのでしょうか?

  要素の一つには、育った環境があると思います。私は母子家庭で育ち、ほとんど祖父母の家にいました。進路を決めるにも、だれにも相談できない環境。家にいても学校にいても、常に孤独感や虚無感を感じていたんです。

  そんな心の隙間をうめるために、ずっとバスケをやっていました。バスケが好きだったわけではなく、バスケしかなかったんです。だからこそ一番になって、自分の存在意義を確かめたかったのだと思います。人は「好き」という気持ちより、「これしかない」という気持ちがあったほうが、ハングリー精神をもって戦えるのかなと思ってます。

————過去にあった心の隙間が、今の山内さんをつくったんですね。では、逆に何でも満たされて育った人は、どうすれば山内さんのようになれるのでしょうか?

  最終的には、リスクを負う“覚悟”でしょうね。リスクを負わずしてリターンを得ることはありえません。普通の人が「これ以上やると怖い」と、不安を感じるようなことにどれだけ挑めるか。ただ、ギャンブルのようなリスクではなく、成功の可能性を上げるような質の高いリスクを選ぶセンスは必要です。

  あとは、アレコレ考えず、まずチャレンジしてみることだと思います。例えば、起業してみるのが手っ取り早いかもしれません。起業では後ろ盾のない環境下で、すべての責任は自分に返ってきます。責任の大きさは成長に比例しますので、おすすめです。


  山内氏が話す「好きなことを仕事にするな」の言葉のもとには、私たちが生き抜くために必要な力を出し切るための教えがあった。豊かな現代を生きる今だからこそ、忘れてはならないハングリー精神。今一度、すべての働く人たちが、絞り出すべきなのではないだろうか。

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