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儲けるための戦略を知る:知って勝つ「マイケル・ポーターの競争戦略」

Erika Muranaka

2015/12/25(最終更新日:2015/12/25)


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儲けるための戦略を知る:知って勝つ「マイケル・ポーターの競争戦略」 1番目の画像
出典:www.flickr.com

マイケル・ポーターの競争戦略とは

 あなたは、マイケル・ポーターの競争戦略という言葉を聞いたことあるだろうか。マイケル・ポーターは、ハーバード大学経営大学院で教鞭をとるアメリカ合衆国の経済学者である。マイケル・ポーターが1980年に上梓し代表的著書となった『競争の戦略』は、企業戦略論の古典として、今日まで多くの経営者や経営学を学ぶ学生の間で読まれ、MBA取得者が選ぶ「おすすめ経営学書ランキング」で第1位を獲得している。

 『競争の戦略』の中で提示されるマイケル・ポーターの競争戦略が支持され続けているのは、その競争戦略の概念が「業界構造を分析するフレームワーク」として非常に有効だからである。マイケル・ポーターの競争戦略の概念は、起業や自営を考えるうえで、どうすれば儲けることができるのかを考えるうえで役に立つ。

マイケル・ポーターの競争戦略の限界

 マイケル・ポーターの競争戦略が提案された1980年から30年以上たった今では、その有効性の限界も唱えられ、その競争戦略の概念は、現代の企業競争・市場環境に適用するには産業構造の境界線があまりに固定的で明確過ぎるという批判もある。
 
 例えば、マイケル・ポーターの競争戦略においては、自動車会社は自動車会社だけと競争し、通信会社は通信会社だけと競争するというように、産業構造の境界線をかなり明確なものとして仮定している。しかし、現代では、消費者の有限の時間を巡る競争が加熱し、『自動車(ドライブする時間)』は『スマートフォン(スマホを使う時間)』とも競合するようになっているという違いが指摘されている。

 また、「儲かる位置・業種にいれば儲かる」というマイケル・ポーターの競争戦略の考え方に対して、「会社の独自資源が強ければ儲かる」という「資源論」が批判を繰り広げている。

マイケル・ポーターの競争戦略の有効性

 マイケル・ポーターの競争戦略がそれでも注目され続けているのは、完全に適応できるわけではなくても、そのフレームが、現代においても、経済における競争戦略を考える基礎になりえるからである。

 マイケル・ポーターの著した『競争の戦略』の中でも、最も有名な5Forcesと3つの基本戦略という概念について説明しよう。イメージしやすくするために、カフェ経営を考えるあなたが、どうすれば儲けられるのかという具体的な例えを用いながら説明してみよう。

マイケル・ポーターの競争戦略 5Forces 

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by haru012
 マイケル・ポーターの競争原理の中で提示された5Forcesとは、儲けることができるかどうかを業界構造を分析するために考えられた「5つの力、5つの競争要因」のことである。

マイケル・ポーターの競争戦略 5Forces:(1)業界内の競争関係

 1つめの力は、業界内の競争関係だ。カフェを経営していこうと考えるあなたにとって、同じカフェ経営者とどう競争していくかということである。

マイケル・ポーターの競争戦略  5Forces:(2)新規参入の脅威

 2つめの力は新規参入の脅威だ。次々と参入者が現れて供給能力が増え、価格競争に陥ってしまうと、利益性は低下する。カフェ経営が魅力的であっても、新たにカフェ経営を始める人が増大する脅威について考えなければならない。

マイケル・ポーターの競争戦略 5Forces:(3)代替品からの圧力

 3つめの力は代替品からの圧力だ。業界内の競争が緩やかでも、同じような機能の商品が台頭すると、需要を奪われる。カフェ同士の競争が緩やかでも、同じように癒しの空間を提供する施設やおいしい軽食を提供するレストランなどが台頭することで、それらとの競争を考えなければいけなくなる。

マイケル・ポーターの競争戦略 5Forces:(4)買い手の交渉力

 4つめの力は買い手の交渉力だ。売り手が多数で、買い手が少数という場合、需給のバランスから見て買い手の価格交渉力が高まる。ある地域にカフェが集中していたり、カフェに行きたいと思う人が少なければ少ないほど、お客の力が強くなるということだ。

マイケル・ポーターの競争戦略 5Forces:(5)売り手の交渉力

 逆の場合、売り手の価格交渉力が高まる。ある地域にカフェが少なかったり、カフェに行きたい人が多い状態のことだ。これが5つめの力、売り手の交渉力である。

マイケル・ポーターの競争戦略 3つの基本戦略  

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by akaitori
 マイケル・ポーターの競争戦略の中で提示された3つの基本戦略とは、競争相手に打ち勝つための戦略として大別された3つのパターンである。

マイケル・ポーターの競争戦略 3つの基本戦略:(1)コストのリーダーシップ

 コストのリーダーシップとは、効率化や生産性を追求することで他より低いコストを獲得し、それを価格に反映させて販売数を伸ばしたり、あるいは他と同じ価格で販売することで業界平均以上の収益を目指す戦略である。カフェ経営において、維持費や仕入れ値を抑えて、メニュー価格を安くして客数を稼ぐといったような戦略になる。

マイケル・ポーターの競争戦略  3つの基本戦略:(2) 差別化

 差別化とは、他より優れた性質を獲得することで、価格競争に巻き込まれるのを避け、平均以上の収益を目指す戦略である。一段とおいしいメニューを提供することや、インテリアにこだわるなど、他のカフェとの違いをアピールすることで、メニュー価格を落とさないで経営していく戦略になる。

マイケル・ポーターの競争戦略  3つの基本戦略:(3)集中

 集中とは、企業の経営資源を特定の顧客ニーズや特定の地域、特定の製品などに絞り込んで競争優位を獲得する戦略である。猫好きに特化した猫カフェやベジタリアンにアピールするオーガニックカフェをコンセプトとする戦略になる。


 以上、マイケル・ポーターの競争戦略について、最も知られている5Forcesと3つの基本戦略について説明した。現代においては合わない部分もあると言われているが、経営を考えるうえで、基本的に頭に入れておいた方がいいことばかりだ。

 経営をしていくのに、何と競争しなければならないのか、どうやってその競争に勝ちにいけばいいのか、5Forcesと3つの基本戦略を知ることで、そのとっかかりを得られる。
 
 ビジネスパーソンであれば、自らが、具体的、直接的に経営の仕事をしなくても、経営的な視点を求められることは少なくない。これから起業や自営を考える人だけでなく、ビジネスに関わっていく人全てにとって、マイケル・ポーターの競争戦略を知ることは儲けにつながるに違いない。


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