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コンビニ業界の絶対的王者・セブンイレブン:勝因は、「揺るがなさと新しさ」の2つの経営戦略にあり

蓮見彩

2016/01/05(最終更新日:2016/01/05)


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by Yuya Tamai
 全国に16,319もの店舗を展開している、コンビニエンスストア業界最大手のセブン-イレブン・ジャパン。読者の中には、「コンビニだったら、絶対にセブンを選ぶ!」という大のセブンイレブン好きもいることかと思う。

 今回は創業から40年間、多くの顧客を虜にし、今尚増益し続けるセブンイレブンの経営戦略に迫ってみたい。本記事は、セブンイレブンの経営戦略について、従来から実践している経営戦略から現在力を注いでる事業「セブンカフェ」の経営戦略まで幅広く取り扱っている。

セブンイレブンの売上高は? コンビニ業界のシェア状況は?

 昭和48年に創業したセブンイレブンだが、下記の表の通り、売り上げは創業から今に至るまで右肩上がりで伸び続けている。不景気と言われたバブル崩壊後の1991年から2001年、さらにはリーマンショック後の2008年においても、売り上げ増を達成している。このことからも、社会の不景気の波にのみこまれないセブンイレブンの強靭さが伺えるかと思う。

セブンイレブン:「チェーン全店売り上げ推移(国内)」

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出典:www.sej.co.jp
 さらに、コンビニ業界の四天王と言われる、セブンイレブン、ローソン、ファミリーマート、サークル・K・サンクスの売上高を比較しても分かるように、セブンイレブンの売上高は圧倒的である。下記は、ローソンが公表している『統合報告書2015』から引用したデータである。

コンビニエンスストア全体に占める上位4チェーン

ローソン 1961
セブン・イレブン・ジャパン 4008
ファミリーマート 1860
サークル・K・サンクス 988
(単位:10億円)

出典:アニュアルレポート|ローソン
 今年の10月に、コンビニエンスストア業界3番手のファミリーマートと同業界4番手の「サークル・K・サンクス」を持つ流通大手の「ユニーグループ」が経営統合の基本合意をしたと発表した。これによって、コンビニ業界の売り上げシェア率や店舗数は大きな変化が起きるわけだが、セブンイレブンの王座はそう揺るぎそうにない

セブンイレブンの揺るがない経営戦略

 コンビニ業界の王座として君臨しているセブンイレブンだが、そもそもどんな経営戦略が行われているのだろうか。ここでは、セブンイレブンが従来から実施している経営戦略をご紹介する。

セブンイレブンの経営戦略①「廃棄ロス」ではなく、「機会ロス」

 セブンイレブンの経営戦略は、売れ残り商品の廃棄による損失「廃棄ロス」よりも、品揃えが悪いゆえに売り上げを逃す損失「機会ロス」を避けることに重点を置いている。

 『まんがでわかるセブンイレブンの16歳からの経営学』の中では、次のようにその理由を述べている。

多くの場合、経営者は、廃棄ロスばかりを気にかけてしまいがち。だから廃棄ロスがゼロとなる『完売』だと万々歳となるお店は多い。だが、セブン‐イレブンの考え方は違う。完売は顧客にとって、その商品を買えないことを意味する。顧客は別の店に商品を探しに行くか、購入を諦めるしかない。

出典:『まんがでわかるセブン‐イレブンの16歳からの経営学』

このような売り手の満足は、顧客にとっては不満足だと考える必要があるわけだ。セブン‐イレブンが目指すのは廃棄ロスではなく機会ロスの最小化である」

出典:『まんがでわかるセブン‐イレブンの16歳からの経営学』
 とはいえ、この「機会ロス」を避ける経営戦略は、見方によっては各店舗の経営者を苦しめている戦略だとも言えるので補足を入れる。一般会計では、「廃棄ロス」となった商品のロイヤリティは支払う必要がない。(ただし、仕入れ金額を支払う必要がある)店舗側は廃棄ロスとなった商品のロイヤリティも支払う必要があるため、廃棄ロスが多く算出されても、本部は一定の利益を得られるという仕組みだ。

セブンイレブンの経営戦略②:「プライベートブランド(PB)の確立」

 セブンイレブンと言えば、「セブンプレミアム」と「セブンゴールド」といったプライベートブランド(PB)。コンビニエンスストアと言えば、スーパーで並ぶ商品より割高というイメージがあると思うが、自社ブランド商品を作ることで他の店と変わらない安い商品提供が可能となっている。例えば、「マルちゃん正麺5食パック」の販売価格は398円程度だが、セブンイレブンのPB「セブンゴールド金の麺5食入り」の価格は345円である。セブンイレブンのPB経営戦略は、従来のコンビニは緊急事態時に使う割高なお店というイメージを一蹴し、普段から多くの顧客が利用できる価格設定に幅のあるお店というイメージを確立した。

セブンイレブンの経営戦略③:四国に進出の裏にあった「ドミナント戦略」

 町中を歩いていると、数百メートルおきに同じコンビニを目にすることはないだろうか。一見同業同士の足の奪い合いのような気がするが、実はこれも経営戦略の1つである。セブンイレブンはお客が多そうなエリアに出店を集中させることで、そのエリアの収益を独占的なものとしている。2013年にセブンイレブンは四国への進出も果たしたが、まさに四国のお客を独占的に取り入れようとしたのが狙いだ。

新しい経営戦略:「セブンカフェ」はなぜ好調なのか?

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出典:www.sej.co.jp
 2013年から運用開始をした「セブンカフェ」。翌年には、販売数4億5,000万杯を達成した。この数字はマクドナルドの初年度販売数3億杯を軽く越えていることからも驚異的な数字だということが理解できる。このセブンの新しい経営戦略の「コーヒーカフェ」だが、ここまで世間的大ブームを起こした原因は次の2つである。

新しい経営戦略が成功した原因①:日本では空前絶後のコーヒーブーム

 全日本コーヒー協会は、日本国内のコーヒー消費量に関して「コーヒーは消費量では昭和50年半ばに緑茶を上回っている。このデータからも、多くの日本人が従来の伝統的な緑茶に代わり、コーヒーを嗜好するようになったことが分かる。コーヒー需要の高まりに着眼し、セブンカフェを打ち出したことが、大きな成功に繋がったと言える。

新しい経営戦略が成功した原因②:セルフ式のドリップコーヒー

 セブンイレブンの「セブンカフェ」は、本格的なドリップ式コーヒーが楽しめるように、顧客がセルフでコーヒーを淹れられるという仕組みだ。ここで重要な点は、ドリップ式コーヒーを採用したこと。日本の水は軟水のため、ヨーロッパで主流となっているエスプレッソ式のマシンだと、良いコーヒーの味が引き出せないのだ。また朝の通勤時にサクッとコーヒーを購入、焙煎ができるように、(佐藤可士和のデザインに賛否両論はあるものの)できるだけ操作方法の分かりやすいマシンを作り上げた。

 
 ここまで、セブンイレブンの売り上げの推移から、セブンイレブン独自の経営戦略を広くご紹介してきた。セブンイレブンが絶対的な王者として君臨している理由は、従来から実践していた経営戦略と、世のブームを見据えて打ち出した新しい経営戦略を融合したところにある。片方の経営戦略だけを重点的に伸ばそうとしても、セブンイレブンの成功は成り立たなかったであろう。

 とはいえ、セブンイレブンがいくら絶対的王者であったとしても、コンビニの敵がコンビニ業界だけにいるとは限らない。セブンイレブンがコーヒーによってカフェから顧客を奪ったように、セブンイレブンも安心できるわけではない。今後、セブンイレブンがコンビニでありつつも、コンビニに縛られない独自の戦略とマーケットリーダーとしての揺るがない戦略に、命運がかかっている。

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