1. クールジャパンで再び湧き立つスキー場の賑わい。再興するゲレンデの軌跡

クールジャパンで再び湧き立つスキー場の賑わい。再興するゲレンデの軌跡

 スキーは、もはや終わったスポーツなのか。

 映画『私をスキーに連れてって』の公開に端を発した90年代前半の「空前のスキーブーム」は、今なお人々の記憶に強烈に残っている。同時に、そのブームが過ぎ去ったあと、日本国内のスキー場の多くが窮地に立たされたのも記憶に新しい。この一連の物語を知る者なら、こう呟いても不思議はないだろう。「スキーは、もはや終わったスポーツなのか」と。しかし、当時のブームが「異常」だっただけなのかもしれない。ちょうどバブル景気が「異常」だったように。

 実は数年前から、国内のスキー場が再興の兆しを見せているのをご存知だろうか。そこに浮かび上がるキーワードが「クールジャパン」だ。

「海外のスキーヤーたちは、日本のスキー場を『クールジャパン』と位置付けて熱心線を注いでいる」

 こう話すのは、これまで幾多のスキー場を復活に導き、現在は株式会社マックアースで、新潟県にある神立高原スキー場の再生を手掛ける越山進一氏だ。今回は、越山氏に「クールジャパンで再興するゲレンデの軌跡」について語ってもらった。

世界のスキーヤーが押し寄せる「日本のスキー場が秘める5つの魅力」

新潟県平成26年度本県外国人宿泊数調査結果をもとに作成
 こんなデータがある。新潟県では、平成26年度の外国人宿泊数が過去最高となった。県調査としてこれまで最高だった25年度を上回り、対前年度比46.3%増という驚異的な伸び率を見せている。その要因となっていのが、スノーシーズンにおける観光客の増加だ。

 また、中国の商業施設運営会社が、北海道のスキー場「星野リゾートトマム」の株式100%を買収したというニュースも舞い込んできた。取得額は183億円にも上るが、中国人観光客による収益の拡大が見込まれてのことだという。

中国の商業施設運営会社、上海豫園旅游商城は北海道のスキー場、星野リゾートトマム(北海道占冠村)の株式100%を買収すると発表した。取得額は183億円。11日に契約を結ぶ。中国人観光客に人気の北海道のリゾート買収により、収益を拡大できると判断した。

出典:星野リゾートトマム、中国企業が買収 183億円で :日本経済新聞

 今、世界のスキーヤーたちが日本各地に押し寄せている。それには「日本のスキー場が秘める5つの魅力」が関係していると越山氏は分析する。
by iamarkus

人気の秘訣(1)パウダースノー

 数日間も雪が降り続ける日本のスキー場では、新雪に当たるケースが非常に高く、パウダースノーを求めるスキーヤーたちの「聖地」となっている。

人気の秘訣(2)寒すぎない気候

  海外には氷点下10~20度を記録するスキー場が多いが、それに比べて日本国内のスキー場の気温は氷点下10度以上が一般的。

人気の秘訣(3)適度な高度

 海外では標高2,000m~3,000mにスキー場が設置される傾向にあるようだが、日本には標高700m~1,000mほどの場所にスキー場が豊富にあるため、高山病を発症するリスクが少ない。
by iamarkus

人気の秘訣(4)都市部からの利便性

 東京から2時間圏内に天然雪のスキー場があることに海外のスキーヤーたちは舌を巻くという。

人気の秘訣(5)リーズナブルな価格設定

 これは昨今の円安の影響もあるだろうが、リフト券や食事の価格が海外の相場よりも安く感じられているようだ。

 日本のスキー場は、世界のスキーヤーたちにとって、まさに「理想の環境」というわけだ。

「ブーム再燃」ではなく「進化」。国内でもスキー人口が増加傾向に

by Rudy Herman
 そして、海外からの需要の高まりを受け、さらに熱を帯びてきたスキー場の自助努力も見逃せないと越山氏は指摘する。

 例えば、新潟県のGARA湯沢や上越国際は、スキー板の名ブランド「サロモン」と提携し、レンタルサービスの充実を図っている。しかも、最新モデルばかりを取り揃え、利用客が手ぶらで来ても話題のモデルで存分にスキーを楽しむことができる。
 また、ゲレンデに無料Wi-Fi環境を整えたり、仕事帰りのビジネスマンをターゲットに朝4:00までナイター営業を展開するなどして、スキーヤーの多様なニーズに応える格好だ。他にも、ご当地グルメに力を入れたり、アニメ『ドラゴンボール』とタイアップをしたりと、スキー以外のエンターテイメントでスキー場への誘致を促す策も盛んになっている。

 こうした数々の取り組みは、海外だけではなく、日本国内向けにも功を奏している。というのも、数年前から国内のスキー人口は徐々に増加傾向にあるのだ。この状況について越山氏は、「ブーム再燃」ではなく「進化」と表現した。日本という恵まれた自然環境を生かしつつ、それに胡坐を掻くことなく、弛まぬ集客努力を積み重ねてきたことで、スキー場の地力は着実に底上げされているという。
by Travis Hornung
 ブームは、いつか終焉を迎えるもの。それ以降に、その真価が問われることになるが、日本のスキー場は見事に再興を遂げた。過去に巻き起こったようなブームは今はない。しかし、そこには、スキーを心から愛し滑走する人たちの姿が確かにあるのだ。

 今回、お話を伺った越山氏が代表を務める「神立高原スキー場」は、東京駅から上越新幹線で66分でゲレンデに到着できる、首都圏から最も近い天然雪のスキー場だ。世界が羨む環境で、心おきなくスキーを楽しんでみてはいかがだろうか。スキーは、大人の趣味として実にかっこいいものなのだ。


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