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【年代順】大人になった今だからこそ読みたいおすすめSF小説15選:通勤を言葉で彩る名作がズラり

大倉怜士

2015/11/16(最終更新日:2015/11/16)


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出典: Amazon.co.jp
 SF - Science Fiction - という世界は夢の塊だ。これまでに未来の世界を創造し、言葉として紡がれてきたSF小説というものは数多生み出されてきた。SF小説は我々に未来の世界へ連れ出し、そして“今”を伝える至高の小説だ。

 皆様は通勤時間をどのようにお過ごしだろうか。スマホばかり眺めていても、学べることは少ないのでは? ノーベル賞作家ヘルマン・ヘッセは言う。「書物そのものは、君に幸福をもたらすわけではない。ただ書物は、君が君自身の中へ帰るのを助けてくれる」と。

 何もSF小説ばかりを好き好んで読む必要はないのだが、SFは「哲学的著作の最後の砦」とも呼ばれるなど、やはり内容はいささか難しく、子ども向けの小説ではない。しかしだからこそ、大人となった皆様だからこそSF小説の世界は楽しめるのだ。

 今回はそんな数あるSF小説の中から、筆者が厳選した15のSF小説を年代順にご紹介していく。以前SF小説の名作と題して書いた記事で取り上げた作品は今回省いてあるので、詳しくはこちらを確認いただきたい。また、今回は一作家一作品としている。

【40年代のおすすめSF小説】

『1984年』ジョージ・オーウェル

「〈ビッグ・ブラザー〉率いる党が支配する全体主義的近未来。ウィンストン・スミスは真理省記録局に勤務する党員で、歴史の改竄が仕事だった。しかし彼は、以前より完璧な屈従を強いる体制に不満を抱いていた。ある時、奔放な美女ジュリアと出会ったことを契機に、伝説的な裏切り者が組織したと噂される反政府地下活動に惹かれるようになるが……」

 1949年刊行のおすすめSF小説『1984年』。不朽の名作として世界中で愛されてきたジョージ・オーウェルの一冊。当時の世界情勢そのものへの危惧を暗に示したものとなっており、全体の雰囲気はいたってシビア。ありのままの未来世界をストレートに描いており、社会的な事象に興味関心の強い方におすすめだ。

【50年のおすすめSF小説】

『虎よ! 虎よ!』アルフレッド・ベスター

「“ジョウント”と呼ばれるテレポーテイションにより、世界は大きく変貌した。一瞬のうちに、人びとが自由にどこへでも行けるようになったとき、それは富と窃盗、収奪と劫略、怖るべき惑星間戦争をもたらしたのだ! この物情騒然たる25世紀を背景として、顔に異様な虎の刺青をされた野生の男ガリヴァー・フォイルの、無限の時空をまたにかけた絢爛たる〈ヴォーガ〉復讐の物語が、ここに始まる……」

 SF小説界きっての鬼才のひとりと称されるアルフレッド・ベスターとこのおすすめSF小説『虎よ! 虎よ!』は、ほぼほぼセットで語られる彼の代表作。とにかく異様な展開と語り口で、万人受けする作品ではない。だが、ある程度SFに勤しんだ人であれば、絶対に手に取ってみて欲しいおすすめ小説だ。

【60年代のおすすめSF小説】

『宇宙の戦士』ロバート・A・ハインライン

「宇宙艦〈ロジャー・ヤング〉号から発射された宇宙カプセルはいま、地球をうかがう敵惑星の地表めがけ暗黒の中を自由落下していく。勝利か降伏か、地球の運命は一に彼ら機動歩兵の活躍にかかっていた! 戦争肯定的な内容で、ベトナム戦下の米国に一大センセーションをまきおこした問題作」

 SF小説界のビッグ・スリーの内の一人であるロバート・A・ハインライン。今回おすすめする『宇宙の戦士』の他にも、『月は無慈悲な夜の女王』や『異星の客』などがある。今回、それらを差し置いてこの一冊をおすすめする理由は、このSF小説のテーマが「戦争」だからだ。日韓関係、日中関係の冷え込みが激しい昨今の日本。今一度「戦争」というものについて、自分でも考えてみて欲しい。

『世界の中心で愛を叫んだけもの』ハーラン・エリスン

「この世の中心点”クロスホエン”。この空間は、”狂気”を外部に排出することによって、安定した世界を作り上げていた。その代償として、外世界は排出された狂気に侵され、それゆえにアッティラ王は手当たり次第に攻め入り、スタログは大量殺人鬼と化したのであった。他の世界を犠牲にしていることに良心の呵責を覚えたクロスホエンの科学者センフは自らを排出することで解決をはかろうとするが、その試みは失敗してしまうのであった」

 1969年に表題作でヒューゴー賞を獲得した、ハーラン・エリスン『世界の中心で愛を叫んだけもの』。科学的根拠に基づいた世界観とストーリー展開で、世界中から高い評価を受けているおすすめのSF小説。エヴァ・フリークであればハッとしたかもしれないが、この小説は『新世紀エヴァンゲリオン』の最終話のサブタイトルの元ネタでもある。

【70年代のおすすめSF小説】

『宇宙のランデヴー』アーサー・C・クラーク

「2130年、太陽系に突如侵入した謎の物体は、直径20キロ、自転周期4分という巨大な金属筒であることが判明した。人類が長いあいだ期待し、同時に怖れてもいた宇宙からの最初の訪問者が、ついに現われたのだ!“ラーマ”と命名されたこの人工物体の調査のため派遣されたエンデヴァー号は、苦心のすえラーマとのランデヴーに成功、その内部へと入ったが…」

 SF小説界のビッグ・スリーの中でも、おそらく一番の知名度を誇っているだろうアーサー・C・クラークの一冊。『2001年宇宙の旅』や『幼年期の終わり』などの名作も遺している彼だが、スペクタクルな展開の純粋なSF文学としておすすめしたいのは、この『宇宙のランデヴー』という一冊。臨場感の伝え方が素晴らしく、SF初心者にこそおすすめしたい。

『火星年代記』レイ・ブラッドベリ

「火星への最初の探検隊は一人も帰還しなかった。火星人が探検隊を、彼らなりのやりかたでもてなしたからだ。つづく二度の探検隊も同じ運命をたどる。それでも人類は怒涛のように火星へと押し寄せた。やがて火星には地球人の町がつぎつぎに建設され、いっぽう火星人は…幻想の魔術師が、火星を舞台にオムニバス短篇で抒情豊かに謳いあげたSF史上に燦然と輝く永遠の記念碑」

 私も個人的に推している作家レイ・ブラッドベリ。『華氏461度』と並んで、彼の代表作とされている『火星年代記』という小説は、奇怪な語り口から壮大な世界観を伝える作家当人の器量の高さに驚かされる一冊。SF初心者から上級者まで、それぞれがそれぞれに楽しめるのでおすすめだ。

『ユービック』フィリップ・K・ディック

「1992年、予知能力者狩りをおこなうべく、ジョー・チップら反予知能力者が月面に到着した。だが予知能力者側の爆弾で、メンバーの半数が失われる。これを契機に、恐るべき時間退行現象が地球にもたらされた。あらゆるものが退化していく世界で、それを矯正するものは唯一ユービックのみ。その存在をチップに教えたのは、死の瞬間を引き延ばされている半死者のエラだった……」

 私がSF界で最も推している作家フィリップ・K・ディックによる代表作『ユービック』。“神の偏在”を意味するユービクイティという語から名付けられたユービック。何もかもが逆光する世界で、チップは死の瞬間に邂逅する。同作家のテーマである“虚構と現実”を見事に描き切った名作。まずは一読することをおすすめする。

【80年代のおすすめSF小説】

『ファウンデーションの彼方へ』アイザック・アシモフ

「設立から五百年、第一ファウンデーションは今、その力の絶頂にあった。野蛮な状態に逆行した周辺惑星を併合し、死にかけた帝国や恐るべき超能力を持つミュールや謎に包まれた第二ファウンデーションをも打ち負かし……天才科学者セルダンがうち立てた第二帝国建設のプランは、順調に進行しているかに見えた。だが、それを信じない人物がただ一人いたのだ」

 続いてのおすすめSF小説は、ヒューゴー賞受賞作品『ファウンデーションの彼方へ』。SF界の成功者と名高いアイザック・アシモフによる著作で、有名なファウンデーションシリーズの第4作。1982年刊行。圧倒的なストーリー展開が素晴らしく、SF初心者なら誰でもおすすめできる王道SF小説だ。

『ニューロマンサー』ウィリアム・ギブスン

「ケイスは、コンピュータ・カウボーイ能力を奪われた飢えた狼。だが、その能力を再生させる代償に、ヤバイ仕事をやらないかという話が舞いこんできた。きな臭さをかぎとりながらも、仕事を引き受けたケイスは、テクノロジーとバイオレンスの支配する世界へと否応なく引きずりこまれてゆく……」

 現代のサイバー・パンクSFブームの先駆け的存在として名高い『ニューロマンサー』。SFアニメ『攻殻機動隊』の元となった小説としても有名な本作は、SFアニメファンにとって必読の書。取っ掛かり辛い語り口ではあるが、読めば読むほど深みが出てくる一冊。ヒューゴー賞・ネピュラ賞受賞のおすすめSF小説だ。

『たったひとつの冴えたやり方』ジェイムズ・ティプトリー・ジュニア

「やった!これでようやく宇宙に行ける!16歳の誕生日に両親からプレゼントされた小型スペースクーペを改造し、連邦基地のチェックもすり抜けて、そばかす娘コーティーはあこがれの星空へ飛びたった。だが冷凍睡眠から覚めた彼女を、意外な驚きが待っていた。頭の中に、イーアというエイリアンが住みついてしまったのだ!ふたりは意気投合して〈失われた植民地〉探険にのりだすが、この脳寄生体には恐ろしい秘密があった……」

 1987年刊行。20世紀中盤の異星人襲来SFを彷彿とさせる、ジェイムズ・ティブトリー・ジュニアの『たったひとつの冴えたやり方』。ひとりの元気な少女の冒険活劇という形をとっていて、非常に読みやすい。SF初心者にこそおすすめしたい一冊だ。

【90年代のおすすめSF小説】

『ハイペリオン』ダン・シモンズ

「28世紀、宇宙に進出した人類を統べる連邦政府を震撼させる事態が発生した!時を超越する殺戮者シュライクを封じこめた謎の遺跡―ー古来より辺境の惑星ハイペリオンに存在し、人々の畏怖と信仰を集める“時間の墓標”が開きはじめたというのだ。時を同じくして、宇宙の蛮族アウスターがハイペリオンへ大挙侵攻を開始。連邦は敵よりも早く“時間の墓標”の謎を解明すべく、七人の男女をハイペリオンへと送りだしたが……」

 ヒューゴー賞・ネピュラ賞・星雲賞。名だたるSF小説賞のタイトルを総ナメにしたダン・シモンズ『ハイペリオン』。28世紀という想像もつかない世界で繰り広げられる宇宙戦争。映画『スタートレック』や『スター・ウォーズ』などが好きな諸君に、ぜひともおすすめしたいSF小説だ。

『旅のラゴス』筒井康隆

「北から南へ、そして南から北へ。突然高度な文明を失った代償として、人びとが超能力を獲得しだした「この世界」で、ひたすら旅を続ける男ラゴス。集団転移、壁抜けなどの体験を繰り返し、二度も奴隷の身に落とされながら、生涯をかけて旅をするラゴスの目的は何か? 異空間と異時間がクロスする不思議な物語世界に人間の一生と文明の消長をかっちりと構築した爽快な連作長編」

 お次におすすめするのは、SF小説でありながら軽い語り口ですっきりとして印象の筒井康隆『旅のラゴス』。吟遊詩人と謳われる筒井ならではの語り口と、重層的な表現描写。その中で語られる放浪者ラゴスの世界。真実を見抜く目を養える至高のSF小説として、SF嫌いな人にもおすすめしたい。

【ゼロ年代のおすすめSF小説】

『あなたの人生の物語』テッド・チャン

「地球を訪れたエイリアンとのコンタクトを担当した言語学者ルイーズは、まったく異なる言語を理解するにつれ、驚くべき運命にまきこまれていく……。ネビュラ賞を受賞した感動の表題作はじめ、天使の降臨とともにもたらされる災厄と奇跡を描くヒューゴー賞受賞作「地獄とは神の不在なり」、天まで届く塔を建設する驚天動地の物語--ネビュラ賞を受賞したデビュー作「バビロンの塔」ほか、本邦初訳を含む八篇を収録する傑作集」

 『あなたの人生の物語』と題され、テッド・チャンによって紡がれたSF短編集。2003年刊行。数多の賞に輝いたこのおすすめSF小説は、表題の通り、人生の一瞬を見事に描いた作品群となっている。ノスタルジー溢れる語り口で、あなたの通勤空間を異世界に飛ばしてくれることだろう。

『マジック・キングダムで落ちぶれて』コリィ・ドクトロウ

「未来の地球で人類は不老不死を達成した。すでに一世紀以上生きてきたジュールズは、ディズニー・ワールドのマジック・キングダムに住んで、スタッフとして働くという長年の夢をついに実現した。ともに働くガールフレンドのリルは、彼の15パーセントの歳で、ふたりは幸せな日々を送っている。だが、彼を思いもよらぬ事件が待ちうけていた……」

 続いておすすめしたいSF小説は、ローカス賞を受賞したコリィ・ドクトロウ『マジック・キングダムで落ちぶれて』。現代SF小説らしからぬ「不死」をテーマに据え、ユーモアに富んでいながら、世界観はいたってディストピア。異世界でありながら、我々の世界の写し鏡のような世界でもある。初心者にはあまりおすすめできないが、上級者であれば心からおすすめできる小説だ。

『虐殺器官』伊藤計劃

「9・11以降の、“テロとの戦い"は転機を迎えていた。先進諸国は徹底的な管理体制に移行してテロを一掃したが、後進諸国では内戦や大規模虐殺が急激に増加していた。米軍大尉クラヴィス・シェパードは、その混乱の陰に常に存在が囁かれる謎の男、ジョン・ポールを追ってチェコへと向かう……。彼の目的とはいったいなにか? 大量殺戮を引き起こす“虐殺の器官"とは?」

 最後にご紹介するのは、夭折の作家・伊藤計劃の処女作『虐殺器官』。ゼロ年代ベストSFにも選ばれた当SF小説。下手な言葉は要らないだろう。とにかく一読をおすすめしたい至高の一冊。伊藤計劃が遺した物語を、計画を、あなたも見てみて欲しい。


 以上、SF界きっての名作からおすすめの15選だったが、SF小説の深みには気付いて貰えただろうか。SFの世界は奥が深い。10年や20年かかっても、その全てを紐解いたとは言えないだろう。まずは、今回ご紹介した名作中の名作から、筆者おすすめの小説からSFという世界に足を踏み入れてみて欲しい。

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