1. 組織で働くリーダーが知っておきたい、人を動かす科学的アプローチ『リーダーのための行動分析学入門』

組織で働くリーダーが知っておきたい、人を動かす科学的アプローチ『リーダーのための行動分析学入門』

by DanDeChiaro
 部下の指導で悩んでいる人は数多くいる。各々の考えや主張を持っている人間をまとめることは、容易ではないだろう。チーム単位で動いているプロジェクトなら尚更である。部下に自分の期待に応えようと行動してもらうには、どのようにすればいいのだろうか。
 
 この『部下を育てる! 強いチームをつくる! リーダーのための行動分析学入門』という本は、行動分析学を専門とする筆者が送る、悩めるビジネスマンへの「行動分析学」解説書である。

人を動かす心理学「行動分析学」

 行動分析学とは、「人がなぜそのように行動するのか」について法則を見つけて探求しようとする心理学の一分野のことである。

 この分野に明るくないリーダーは世の中にたくさんいる。そもそも行動分析学を学ぼうと思い立ったり、興味を持ったりしている人は多くない。しかし、部下の行動を最大限に活かしながら業績を上げている人物は、行動分析学の側面から見て理にかなったことを行っている。

 例えば、京セラの創業者であり日本航空の再生にも大いに貢献したカリスマ経営者の
稲盛和夫氏は、「アメーバ経営」と言われる手法を行った。彼は部門別採算制を採用することで標的とする指標を明確にし、その達成に責任を持つ人数をなるべく少なくしたのだ。

 標的とする指標の達成に責任を持つ人数が少なくなることで、目標のための行動の計画を一人ひとり明確にし、各個人が目標を達成することが部門の予定達成につながるのだと実感させることで大きく結果を残したのだ。

 指標と行動の関係性(随伴性とも呼ばれる。ある行動を増やしたり、減らしたりする概念)をよりはっきりとさせるという行動は、企業にとって強力な武器となる。このように、「行動分析学」という学問を意識していなくとも、それと同じことは十分実行されているのである。

性格は行動の原因にはならない

 部下自身の性格に問題の原因を求めようとしてしまうリーダーは少なくない。業績が思うように上がらないことはよくある。そんなとき、上司や部下の性格や能力を問題視するのみで、解決のための工夫を怠ってしまうことを本書では「個人攻撃」の罠と呼んでいる。

 一方各々に弱点(人見知りであるなど)があったとしても、彼らにも出来る行動を確実に実行へと移す環境を用意することが「ポジティブな行動マネジメント」である。もし個人攻撃を行ってしまうと、ただ性格や能力の否定をしているだけで生産性のないものになってしまう。

 さらにここでいう「環境」という単語は、一般的な意味ではない。ある行動を増やしたり減らしたりする概念で、これを行動分析学では随伴性という。筆者曰く、行動は随伴性を変えると変化する

 本書では、何を話せば良いかわからず部下と話す回数が極端に少ない人物を一例に挙げている。まずは部下とコミュニケーションをとるために、「部下が働いている下の階のオフィスに足を運ばせる」という行動を、部下と話す回数が極端に少ない人物に実行してもらうのだ。

Value(業績)=行動(Behavior)

 本書では行動分析学をわかりやすく解説するために、Continuous Learning Group(以下CLG)というアメリカのコンサルティング会社の事例も多数掲載している。この会社はエネルギー、鉄道や航空、金融、食品など幅広い企業に行動分析学を用いたコンサルテーションを提供している。

 次はCLGにおける「ポジティブな行動マネジメント」で基本となる仕事の流れを紹介しよう。IMPACTモデルといい、それぞれの行動段階の頭文字に因んで名付けられている。

Identify

業績向上にとって重要な目標を選んだり、決めたりする段階。

Measure

業績向上にとって重要な目標を測定する段階。

Pinpoint

I(Identify)で選んだ目標を達成したり、指標を改善する具体的な行動を選択する段階。

Active

選んだ行動を引き起こす先行事象(その行動の直前の状況や出来事)を整備する段階。

Consequence

選んだ行動を強化する後続事象(その行動の直後の状況や出来事)を整備する段階。

Transfer

選んだ行動が他の場面で応用されたり、維持、継続されるようにその行動を増やしたり、減らしたりする段階。

 全てこれらを順序良くやっていくことが良いとは限らない。しかし組み合わせたり、順番を変えたりすることで業績に何らかの好影響を与える。

 確かにこれらは科学的に厳密な概念であるとは言えない上、項目間の境界は曖昧である。しかしここでの目的は、分類することではない。ここでの目的は6つの項目に照らし、焦点化の精度を上げることなのである。

 タイトルに「行動分析学」と入っているだけで、心理学の専門用語や意味のわからない公式が多様されていたりするのではないか?と心配するかもしれない。しかし筆者が解説していることは、「目標に対してどうアプローチするかの行動を決める」という極めてシンプルな事柄である。


 この本を読んだことを機に、心理学の一分野である「行動分析学」という新たな側面から部下指導に勤しんではみてはいかがだろうか。

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