1. 時価総額は5兆円。タクシー業界に乗り込んできた新星「Uber」の破壊的なビジネスモデルに迫る

時価総額は5兆円。タクシー業界に乗り込んできた新星「Uber」の破壊的なビジネスモデルに迫る

出典:nypost.com
 
 破壊的なビジネスモデルとして、世界中の注目を浴びているUber(ウーバー)。既存のタクシーのポジションを奪いかねないサービスであり、世の中の交通事情までも変えてしまうほどの勢いがある。

 Uberはなぜここまでの躍進を遂げたのか、ここから数年はどのように事業を展開していくつもりなのか、その戦略と破壊的なビジネスモデルに迫ってみよう。

時価総額は5兆円。飛ぶ鳥を落とす勢いの「Uber」


 Uberが提供する基本的なサービスは、スマートフォンのGPS(位置情報機能)を使ってハイヤーやタクシーを呼び出し、指定した場所から乗車することができるという、コンセプトとしては非常にシンプルなものだ。

 Uberのアプリを使用すれば、車両の現在位置、到着までの時間、目的地までの概算料金、ドライバーに関する情報まで知ることができる。また、支払いは事前に登録したクレジットカードなどから自動的に引き落とされ、領収書もアプリやメール上で発行される。

 Uberは2009年に米国サンフランシスコで創業し、翌年から営業を開始している。2011年にはゴールドマン・サックスをはじめとする投資銀行や、Amazonの創設者であるジェフ・ベソス氏などの投資家から、30億円以上の資金調達をした。

 Uberは2014年あたりから爆発的な成長を遂げ、この1年間でサービスを提供している都市は約100から250まで増加した。昨年度末の企業価値(時価総額)は日本円で約5兆円にまで到達し、まさに飛ぶ鳥を落とす勢いの企業である。

顧客の「あったらいいな」を叶えるサービス

 では、Uberのビジネスモデルを簡単に説明していこう。

 まず、Uberの対象となる顧客は一般消費者とビジネスユーザーだ。Uberの価値提案は、安全性や快適性、オンデマンドによる利用、利便性や透明性といったところにある。展開している都市の交通事情にもよるが、なかなかタクシーがつかまらない、料金が不透明であると不満をもっている消費者にとっては、Uberは非常にありがたいサービスだろう。

 チャネル(流通経路)はスマートフォンに搭載されているモバイルアプリ、顧客との関係は自動化されたヘルプサービスが中心となっている。Uberの中核となる収益は運賃の一部であり、天候や交通事情などの需給関係によって料金は変動するようだ。

 一方、このUberのビジネスモデルを運営していくために必要なリソースは、研究開発を含むIT基盤の構築や、保守に関するものが大半を占めているのではないかと推測される。特に、ドライバーに関する情報のデータベースは、価値提案の拠り所となる重要な知的リソースとなる。

 Uberのパートナーは、Uberのビジネスに欠かすことのできないドライバーをはじめ、PayPalのような支払決済、American Expressのようなクレジットカードのリワードプログラムを提供している企業だ。

他社の追随を許さない革新的なビジネスモデル


 Uberのビジネスモデルは、文字通り「タクシー業界に乗り込んできた破壊的イノベーション」といわれることがあある。

 『イノベーションのジレンマ』で一躍有名になったハーバード・ビジネススクールのクリステンセン教授が設立した会社、INNOSIGHTのパートナーであるアンソニー氏は、3つの点からUberのビジネスモデルを評価している。

 1つ目は、多くの人に需要のあるモノを、より簡単に手に入るようにしたという点である。Uberは、タクシーをつかまえるという誰にとっても面倒な作業を、優れたユーザーインターフェースを持つモバイルアプリで解決してみせた。

 2つ目は、競合他社にとって模倣困難なビジネスモデルである点。Uberのモバイルアプリを支える強力なIT基盤は、他社には模倣が容易くない。さらに、契約するドライバーが多くなるほどサービスの価値は高まるという、「ネットワーク外部性」の効果を持っている点でもUberは強い。「ネットワーク外部性」が一定の閾値を超えれば、eBayやヤフオク!がオークションサイトの市場をほとんど独占しているように、Uberがタクシー業界の市場を独占する可能性さえ出てくる。

 3つ目は、「動機の非対称性」が存在している点だ。破壊的イノベーションには2つのタイプがあり、従来の業界が対象としていない非顧客を対象とするタイプと、ローエンドの市場を対象とするタイプに分けられる。しかしUberの場合は、既存プレイヤーと同じ土俵で真っ向から戦っている。事実、各国でUberと既存プレイヤーとの様々な軋轢が生じているが、上記2つの点も相まって、Uberは激戦区でも爆発的な成長を遂げることができている。

「Uber」が見据える未来とは

出典:www.technobuffalo.com
 
 Uberが次に狙うものは一体何なのだろうか?

 今「コンテキスト・アウェア・コンピューティング」という概念が注目されている。この概念を提唱しているリサーチ会社・ガートナー ジャパンは、「コンテキスト・アウェア・コンピューティング」を「場の空気を読むテクノロジー」と表現している。

 具体的には、モバイルデバイス、GPS、ネットワーク、センサーといった技術を組み合わせることによって、「どのような嗜好を持った人が、現在どこにいて次に何をするのか」を予測しようとするものである。Uberのビジネスモデルは、この技術を上手く駆使した良い例であり、今後もこの分野を伸ばしていくことだろう。

 さらに、Uberは近い将来「自動運転技術」も視野に入れているようだ。CEOのトラビス・カラニック氏は、自動運転車が実用化された暁には、Uberを全て自動運転車に置き換えると公言している。

 コロンビア大学の分析によると、自動運転車の実現により、マンハッタンのタクシー需要は現在の1.3万台から0.9万台に減少し、平均待ち時間は5分から36秒にまで短縮、コストはマイル当たり4.0ドルから0.5ドルへと低下すると予想している。夢のような話が現実味を帯びてきているのだ。


 Uberのターゲットは巨大なタクシー市場だが、Uber自身は旅客業ではなく、情報サービス業だ(日本では旅行業として登録されている)。Uberを旅客ビジネスとして考えると、交通インフラ、法的規制、業界ルール、生活習慣などの様々な要因が存在するため、今後各国でどのようにサービスを展開していくか見物である。

 いずれにせよ、テクノロジーを最良の顧客経験に活用するという考え方には、多くを学ぶことができるのではないだろうか。


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