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不朽の「カンバン方式」で作る、必ず儲かる会社。“秘中の秘”のメソッド:『トヨタ生産方式の逆襲』

Shinpei Hayakawa

2015/09/25(最終更新日:2015/09/25)


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不朽の「カンバン方式」で作る、必ず儲かる会社。“秘中の秘”のメソッド:『トヨタ生産方式の逆襲』 1番目の画像
出典:www.autoguide.com

 トヨタ生産方式と言えば、あなたは何を思い浮かべるだろうか? 鉄則である「ジャスト・イン・タイム」や不朽の「かんばん方式」、「見える化」など徹底した生産の効率化だろう。

 在庫を持ち、生産プロセスが存在する業種で働くビジネスパーソンであれば、誰もが学びやヒントを得られると言っても過言ではないほど、トヨタ生産方式は優れたプロセスである。ジャスト・イン・タイムが鉄則のトヨタ生産方式を正しく運用すれば、儲かる会社に必ずなるであろう。しかし、見様見真似で扱えるほどトヨタ生産方式は簡単なものではない。

 今回紹介するのは、自身もトヨタ自動車に勤務し、様々な生産現場を見てきた著者がトヨタ生産方式の全容をまとめた『トヨタ生産方式の逆襲』という一冊である。この「秘中の秘」であるメソッドは、カンバン方式の生みの親・大野耐一氏の右腕だった父の薫陶を受け、親子2代でトヨタ生産方式の伝道者となった著者にしか書けないものである。

競争戦略のポイント「タイミング力」

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by Hugo90

 人がモノを買う際には、優先される3つの要素があると著者は述べる。それは以下の通りである。

1. 機能やブランド

 ハイブリッドカーや高級外車を買う場合に優先される要素。

2. 低価格

 スーパーの安売りで食材や雑貨品を買う場合に優先される要素。

3. タイミング

 安さを求めてコンビニを探すより「すぐ飲みたい」というタイミングを優先して、高くても自動販売機で買うなどの場合に優先される要素。


 顧客は、これら3要素を複合的に考えて購入の判断を行っている。そのため、この要素に対して、企業は市場競争を行っているのである。しかし、ある程度成長した市場では、「機能やブランド」と「低価格」で優位性を持つことが難しい。そこで、トヨタ自動車が目を付けたのが「タイミング」であり、タイミング力を追求して生まれたのが、トヨタ生産方式なのだ。

 次項では、タイミングの重要性を実例と共に見ていく。

タイミング力は、価格競争に勝る

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by Brandon Stafford

 トヨタ自動車の事業の一つにバッテリー製造がある。バッテリー市場では新車用バッテリーの価格は安く、交換用バッテリーは高く設定されていて、それが企業にとって大きな収益源になっていた。しかし収入源とはいえ、大量に交換用バッテリーを製造しても在庫過多になるリスクがあるため、バッテリー製造を扱う企業は受注生産方式を取らざるを得なかったのである。

 受注生産のため、顧客は注文から納期まで待つ必要があった。しかし顧客が求めているのは「すぐに交換したい」という早さであり、旧式や高価なバッテリーであっても早く手元に届くバッテリーが売り上げを伸ばしていた。この経験から、低価格や充実した機能よりもタイミングという要素が、購買動機に繋がるということをトヨタ自動車は知ることになる。

 その後、トヨタ自動車は、受注・生産・納期の即時対応をいかに早くすべきかを追求し始め、そこで生まれたのが、生産の効率化を図った「かんばん方式」というトヨタ生産方式の代名詞とも言える生産プロセスである。またトヨタ自動車は、かんばん方式によって売り上げを伸ばしただけでなく、製造業なら誰もが抱える欠品と在庫過多という問題も解消させたのだ。次項では、トヨタ生産方式の中核であるかんばん方式について見ていく。

必要最低限の在庫だけを持つ「かんばん方式」

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出典:www.toyota.co.jp

 複数の製品製造を扱う場合、製品ごとに全く異なる部品を使用するといったことはあまりない。また部品単体だけでなく、いくつかの部品を合わせた中間品であっても複数の製品に共通する場合がある。そのため複数の製品に共通して使える中間品や部品は、いつでも使えるように作り置きをしておけば、受注から納期までの時間を短縮できるとトヨタ自動車は考え、トヨタ生産方式の構想が練られたのだ。そこで生まれたのが、以下に示す2つのかんばん方式である。

仕掛けかんばん

 いくつの中間品を作ったのか個数を示す看板で、作り置きの中間品に付けられる。もし中間品を使う際には仕掛けかんばんを外し、その場に残して、過不足が無く再製造する量を明確に示せるようにしている。

引き取りかんばん

 いくつの中間品を何に使うのかを示す看板で、中間品を必要以上に持って行かないようにするために使用する。

 この2つのかんばん方式によって、作り過ぎによる在庫過多部品不足などの欠品といったリスクやコストを減らすことができた。もちろん、受注から製造、納期までの時間も大幅に短縮できたのである。こうしたトヨタ生産方式の導入により、トヨタ自動車は最低限の活動で利益を生むことに成功したのだ。


 今回は、トヨタ自動車の事業内でのトヨタ生産方式の実例を紹介したが、この本にはトヨタ生産方式を扱った他企業の事例も複数紹介されている。この本を読めば、モノづくりの本質を知ることができるはずだ。



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