1. サービスローンチで必ずぶつかる壁「利用規約」。炎上や損害賠償を避けるための利用規約の作り方:中編

サービスローンチで必ずぶつかる壁「利用規約」。炎上や損害賠償を避けるための利用規約の作り方:中編

出典:www.usnews.com

 ベンチャー企業が最初に困る点の一つに、「利用規約」がある。契約書を読むのも不慣れなスタートアップ人材にとって、なかなかハードルが高そうに思える利用規約の作成。何かあってからでは遅いものの、何か起こるまで重要度が分からず、手薄な企業もあるだろう。
 
 プロに確認せず自分たちで利用規約を作ってしまうと、後々大きな失敗につながることがある。ここでは、多くのベンチャーの事例を見てきた、AZX総合法律事務所のパートナー弁護士の長尾先生による、利用規約作成についてのポイントをお届けしよう。

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一歩先を読んで「免責事項」を定める


 利用規約では、サービスの内容に応じて責任を負わない範囲を明確に定めておくことが重要です。免責規定には、もちろん法的な責任をできるだけヘッジしたいという意味もあるのですが、ユーザーからのクレームに対応するという意味でも非常に重要です。自社のサービスでどのようなトラブルが起きる可能性が高いかを予想し、適切な免責規定を定めましょう。

 以下、いくつかの免責規定の例をあげたいと思います。

 まず一般的に、サービスの中断・停止や、機器や設備の不具合に基づいてユーザーに生じた損害について、責任を負わない旨を定めます。メンテナンス期間や、サーバーがダウンしてしまったとき、「その時間サービスが利用できないことで損害を被った!」と主張されることを避けるための規定です。

 SNSやCtoCのサービスにおいては、ユーザー同士の間で何らかの紛争が生じる可能性も十分に想定されます。従って、「本サービスに関連してユーザーと他のユーザーとの間において生じた紛争等については、ユーザーの責任において処理及び解決するものとし、当社はかかる事項について一切責任を負いません」というような免責規定を定めておくことも重要です。 

 また、サービスが他企業のビジネスに利用されるような場合には、他企業が当該サービスを利用することで法令や業界団体の規則等に抵触してしまう可能性も否定できません。例えば、健康食品等の販売業者がSNS内で効能・効果に関する発言をすることは薬機法(旧薬事法)に抵触する疑いがあります。

 そのため、「ユーザーは、本サービスを利用することが、ユーザーに適用のある法令、業界団体の内部規則等に違反するか否かを自己の責任と費用に基づいて調査するものとし、当社は、ユーザーによる本サービスの利用が、ユーザーに適用のある法令、業界団体の内部規則等に適合することを何ら保証するものではありません」というような免責規定を定めておくと安全です。 

 上記は一例ですので、これを参考に自社サービスにふさわしい免責規定を考えてみてください。

意外と「炎上」が起きやすい! 権利に関する事項

出典:www.scoopnest.com

 権利に関する規定としては、サービス提供に使用するソフトウェア等の知的財産権等が、サービス運営者、またはサービス運営者にライセンスを許諾している者に帰属する旨を、確認的に規定しておく必要があります。サービス上に投稿された文章や画像・動画の権利の帰属、及び使用許諾範囲を明確に定めておきましょう。

  著作権を例にとると、著作物の創作を行った者が当初の著作権者となるため、ユーザーが自ら作成したコンテンツを投稿した場合、利用規約に特に規定がなければ、サービス運営者はこの著作物を使用することはできません。 

 法的には、投稿されたコンテンツに関する権利が、ユーザーからサービス運営者に譲渡される旨を利用規約に定めることも可能なのですが、ユーザーからの反感を買い、いわゆる「炎上」が生じる可能性もあります。特に、最近ではネガティブな情報はSNS等により拡散しやすいので、このような規定を定めることは避けておいた方が良いかもしれません。 

 とは言っても、ユーザーが投稿したコンテンツを利用したいという要望はあると考えられます。この場合には、権利が帰属するのはユーザーとした上で、サービス運営者は無償での使用許諾を受ける旨を規定しておくべきです。この点、将来的にどのように投稿内容を使用するかを事前に判断するのは困難ですので、「複製、複写、改変、第三者への再許諾その他あらゆる利用を含む」などと、広く利用許諾を受けておいた方が好ましいと考えられます。

 なお、利用規約の内容という話からは少し逸れるのですが、個別にユーザーから許諾を得て投稿されたコンテンツを使用するのが「炎上」対策としては一番安全で、プライベートな性質を持つサービスの場合にはこのような対応をした方が安全かもしれません。

特に有料サービスは注意! 登録取消手続の規定

出典:psychlaw.soceco.uci.edu

 ユーザーがサービスから離脱したいときのために、ユーザーからの登録取消しについての規定を設けておくのが一般的です。無料サービスの場合にはあまり気を使う必要性は高くないのですが、有料サービスの場合には、例えば前の月の20日までに登録取消手続を行わなければ、自動的に翌月も利用が継続する(=料金が発生する)などのルールをしっかりと定めておきましょう。 

 また、サービス運営者としても、利用規約に違反する等ユーザーのサービス利用を停止させる必要がある場合には、当該ユーザーの登録を取消すことができるように、サービス運営者からの登録取消しの規定を設けておくことが重要です。

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サービスローンチで必ずぶつかる壁「利用規約」。炎上や損害賠償を避けるための利用規約の作り方:後編(9月9日(水)7:00公開予定)

AZX総合法律事務所 パートナー弁護士・長尾卓さん プロフィール

 ベンチャー企業のサポートを専門としており、ビジネスモデルの法務チェック、利用規約の作成、資金調達、ストックオプションの発行、M&Aのサポート、上場審査のサポート等、ベンチャー企業のあらゆる法務に携わる。特にITベンチャーのサポートを得意とする。


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