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気鋭のマーケッターが「さとり」の次を教える。今時の若者の心を掴むマーケティング:『つくし世代』

Shinpei Hayakawa

2015/08/29(最終更新日:2015/08/29)


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by Antonio Tajuelo

 ブームの中心にいるのは、たいてい若者である。そのため、多くの企業は若者の心を掴もうとしている。しかし、今や若者文化やブームは多様化し、一言で言い表すのが難しくなってきている。常に変化し続けるだけでも掴みづらいのに、多様化すればなおさらである。

 株式会社アサツー・ディ・ケイ(ADK)の藤本耕平氏は、企業目線で若者に対するマーケティングを行っていても意味がないと考え、若者スタジオと称し、学生とともにマーケティングを行うプロジェクトを立てた。

 今回紹介するのは、ADKの藤本氏が若者スタジオを通して得られた「今時の若者像」をまとめた『つくし世代 「新しい若者」の価値観を読む』という本である。

今時の若者が持つ3つのマインド

 藤本氏は、今時の若者の価値観やマインドとして以下の3つを紹介している。

つながり願望

 今時の若者は、共働きや核家族化した環境で幼少期を過ごしてきた。そのため、人とのつながりを求めることに積極的である。また誰かとのつながりを示したいという傾向があり、SNSで写真を載せることも多い。そのため写真映えを気にする若者も多く、フォトジェニックな要素も求められている。SNSでシェアしたくなるようなイベントやアイテムなどが話題を呼ぶ理由でもある。

ケチ美学

 今時の若者は、お金を使わないことをポジティブに捉えている。そのため、若者の価値観の中に貯金や低コストなどのワードが挙げられる。レンタル高級品が流行る理由もここにある。

せつな主義

 今時の若者は諦めが早いと言われている。しかし、これは我慢強さが欠けているからではないと藤本氏は述べる。多感な10代の頃に、デフレやリストラなど社会の不安定な面をメディアを通して見てきたため、いま我慢したところで将来良くなるとは限らないと判断して行動しているのである。将来よりも今を大事にする傾向が強い。

 今時の若者の価値観やマインドを生んでいる背景には、社会に対するマイナスの強いイメージがあるようだ。

自分のものさしと周りの空気

 多くの人は自分のこだわや好みといったものさしを持っている。それは若者も例外ではない。しかし、今時の若者は人とのつながりを求めるあまり、自分のものさしが周りから浮いていないかを気にしがちであると藤本氏は述べる。

 最近、大学生の服装や持ち物が似ていることに気づいたことはないだろうか? 街を歩けば、似たような服装の若者がたくさんいる。これこそ、自分のものさしを相手に合わせる今時の若者の傾向である。雑誌等では「外さないコーデ」と紹介されるが、正確に言えば「周りから外れないコーデ」なのだ。

 また人とのつながりを強くするために、面白い内輪ネタを必要とする傾向もある。前項で挙げたSNSでのシェアなどもこれに当たる。他にも誕生日や飲み会、サプライズなども挙げられる。こうした若者を表すキーワードとして「互いに空気を読む、みんなで楽しめる、みんなで喜べる」が重要であると藤本氏は述べている。

常に「誰かのために」という意識が貪欲な「つくし世代」

 今時の若者は、「ゆとり世代」と呼ばれるほど呑気ではない。また「さとり世代」と呼ばれるほど冷めているわけではない。彼らは自分の存在意義をつくる工夫をし、人との関係を円滑にするための努力もする。今時の若者の中には、常に「誰かのために」という意識が働いているのだと藤本氏は分析する。

 つながりや共感を大事にする。だから誰かのために行動し、相手がハッピーになれば自分もハッピーになれる。こうした奉仕的な行動を気軽に行える若者たちを藤本氏は、誰かに尽くす「つくし世代」と名付ける。

 今の社会は効率化や合理性が優先され、人間関係が希薄になりつつある。また利便性を求めたITの発展によって、人同士のつながりの希薄化に拍車をかける要因となっている。こうした中で、今時の若者は人間関係に対し、パワフルでポジティブな面をたくさん持っている。こうした特徴を捉えて、アプローチすることが今時の若者の心を掴むヒントになるだろう。


 若者の中に入ることで、藤本氏は彼らは彼らなりに考え行動しているということを知った。彼らの価値観を築いているのは、今の社会環境だとつくづく感じさせる。ぜひこの本を読んで、これからの時代を背負っていく若者の姿を知ってほしい。



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