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「自分でやったほうが早い病」は今すぐ上司を辞めろ。今すぐだ!:『できる上司は「教え方」がうまい』

Shinpei Hayakawa

2015/09/01(最終更新日:2015/09/01)


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by David Holmes2
 部下に仕事を教えて任せたときに、仕事が遅いからといって自分で仕事をしてはいないだろうか? これでは、仕事を教えた意味も任せた意味もない。プレイヤーとして優秀だったマネージャーにありがちな問題だ。いわゆる「自分でやったほうが早い病」である。

 仕事が遅いからと口出ししたり、助け舟を出したりするのは、短期的成果や効率を考えた見方である。マネージャーである以上は、長期的な視点で部下の仕事ぶりや成長を見届けるべきだ。しかし、時間をかけたからといって成長するかわからないのも事実だ。

 今回紹介するのは、部下を成長させる「教え方」に注目した『できる上司は「教え方」がうまい 「自分で動ける」部下を育てる』という一冊である。

「自分でやったほうが早い病」は上司失格

 部下に仕事を教えても、自分と同じレベルに達するまでには時間がかかる。そのため部下が仕事に慣れるまでは生産性はなく、「自分でやったほうが早いのではないか」と思いやすい。しかし、これで手を出してしまうと部下の成長には繋がらない。また、本来抱えなくてもよかった仕事まで抱えるようになり、自分の仕事さえ満足にこなせなくなってしまうのである。

 仕事を教わった部下が成長するまでは、手出しや口出しを我慢して見守ることが、自分にとっても部下にとっても大事なのだ。また教えるという行為そのものは、部下だけでなく自分の成長にもつながる。人に物事を教えるためには、頭の中にある知識や経験を整理する必要がある。それによって基礎基本を再認識し、初心に立ち返ることが可能になるのである。

 教える側にとって教えるという行為には、知識の整理や伝え方の訓練など、様々な利点がある。そのため、部下に何かを教えるということを率先して行なって欲しいと著者は述べる。しかし、再度注意したいのは、必要以上の口出しや手出しは無用ということである。

上司が部下に仕事を教えるときに、気をつけるべき3つのポイント

 本書では、部下に物事を教える際に注意しなければいけないポイントを紹介している。前項で述べた「口出しや手出しは無用」というのもポイントの一つである。それ以外のポイントを以下3つ紹介する。

1.一度に教えるものは3つまで

 学校の授業のように、物事は順を追って説明していく必要がある。しかし、順を追って説明したからといって、1から10まで全部を一度に叩き込んでも意味がない。例えば営業であれば、最初は「名刺をもらうこと」をゴールにして、その部分だけを教えるのである。一つひとつ教えることで基本が身につきやすく、応用が利きやすくなる。

2.部下の反応を鵜呑みにしない

 せっかく教えても部下の反応がイマイチだと、「教え方が悪かったのか」と不安になりやすいが、単に反応が薄いだけかもしれない。逆に、反応が良いからといって実際には身についていないということもありうる。リアクションだけでは理解度を測るのは難しいのだ。どうしても気になるのであれば、ノートを取らせるなどして理解度を確認するのが良い。

3.「質問がこない」=「理解できた」ということではない 

 質問出来る人というのは、「どこまでが理解できていて、どこからは理解できていないのか」と把握できている人である。そのため、本当に理解が早い人ほど質問は多い。もし質問が来ないのであれば、「よく分からないから質問すらできない」という状態なのかもしれない。一つひとつ再確認するなどして、理解できているか確認するべきである。

 こうしたことを見逃していると、せっかく部下に何かを教えたとしても手応えを感じられず、意味のないものになってしまう。そのような状況を避けるためにも、上司が部下をしっかりと見ることが重要である。

タイプ別「部下への教え方」

 これまで部下に教えることの大切さや注意点を紹介してきた。しかし、もう一つ大事なことがある。それは、どの部下に対しても同じ教え方をしてはいけないということだ。人によって理解度や受け取り方は様々である。本書では、著者が部下をいくつかのタイプに分けて、それぞれに合った教え方を述べている。そのうち4つを以下に紹介する。

1.教え方に文句をつける部下

 こうした部下には上下関係を徹底させ、即効性のあるノウハウを教えさせることで、納得せざるを得なくするのが効果的である。

2.根拠のない自信がある部下

 あえて自由にやらせ、失敗を通じて素直に教わることの大切さを学ばせる。

3.頑張りすぎる部下

 頑張りすぎることによって起こる空回りやリスクをただ伝えるのではなく、その頑張りが無駄ではないことをはっきり伝え、その上でアドバイスする。

4.すぐにリスクを考えてしまう部下

 失敗しても上司がフォローすることを伝え、安心して新しいことに挑戦できるようにする。

 これ以外のタイプも本書では挙げられているが、実際こうしたことに気を配りながら部下に物事を教えるというのは、骨の折れることである。しかし、普段から自分も少しずつ学びながら部下と向き合っていくことで、いずれどんな部下にでも物事を有効的に教えることができ、引っ張っていくことが可能になるのだ。


 この本には、当たり前と思えることも多く書かれている。しかし、それを実践できるかは別である。著者も本書の最後で述べているが、ぜひこの本を読んで実践して欲しい。



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