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工場に家庭用炊飯器が60台! 長崎ちゃんぽん「リンガーハット」のユニークな“工場”戦略とは

Yasutaka Nagataki

2015/08/21(最終更新日:2015/08/21)


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工場に家庭用炊飯器が60台! 長崎ちゃんぽん「リンガーハット」のユニークな“工場”戦略とは 1番目の画像
出典:www.myt875.com
 長崎ちゃんぽんと言えば、「リンガーハット」である。日本国民であれば、一部のちゃんぽん通を除いて全員がそう答えるのではないだろうか。

 聞けば、長崎県民もリンガーハットのちゃんぽんが一番おいしいと口をそろえるのだとか。チェーン店として本場の人にここまで認められているリンガーハットは、いったいどのようにしてこのような地位を築き上げることが出来たのか。

 リンガーハットが大きな成功を遂げた理由の一つに、ユニークな「工場」を展開させているということが挙げられる。今回は、2015年8月23日放送のTBS『がっちりマンデー』に合わせ、リンガーハットの持つユニークな「工場」を紹介していく。

チャーハンを作るのは……家庭用炊飯器?

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出典:www.flickr.com

テレビ取材などでもおなじみの、リンガーハットのチャーハンライン。
60個のジャーがターンテーブルの上を60分かけて1周し、炊き立てのごはんが完成します。1分ごとに炊き上がってくるごはんを、
チャーハン担当のベテランさんが、とてつもないスピードで具材を炒めて混ぜていきます。
その凄さに、見ていて溜息がもれるほど・・・

出典:工場紹介:株式会社リンガーハット
 リンガーハットと言えば長崎ちゃんぽんなのは言うまでもない。と言っているところ申し訳ないのだが、リンガーハットの工場で一番特徴的なのは、チャーハン用に炊く「ごはん」の現場である。

 普通の工場ならば、大釜の中にお米を投入し、炊飯するのが定石である。一度に大量の炊飯が可能で、一見すれば工場で生産するうえで一番効率的な方法であると感じられる。しかし、リンガーハットの工場は違う。

 リンガーハットの工場での炊飯方法は、ベルトコンベアに家庭用の炊飯器を60台並べる、というものである。普通に家電量販店で売っているような炊飯器を、リンガーハットの工場では60台も並べている。なぜ、リンガーハットの工場はこのような形をとることにしたのか。

大釜で発生する「ムラ」の排除

 大釜で炊飯をすると、どうしても外側と内側で炊き上がりに「ムラ」ができてしまう。この状態のままチャーハンにしてしまうと、食感から味までバラつきが生まれてしまう。

 リンガーハットの工場ではこれを家庭用の炊飯器で行うことで、ごはんをムラなく炊き上げることが出来ている。しかしそれでは生産量が圧倒的に低くなってしまうので、60台をコンベアで循環させているのだ。

 普通、ごはんを炊くのには60分程度かかる。そのため、60台が1時間かけて1周するようにコンベアを回しておけば、1分に1炊飯器分のごはんが炊き上がる。それを全て別の調理器具に「人力で」移し替える。1分に1台ペースで炊き立てごはんが周ってくるため、作業員のスキルは相当高いようだ。

大型の調理器具は全部「自社製品」

 普通の工場だと、調理器具はそれ専用の製造業者に発注し、作ってもらう。わざわざ自らが工場の製品を作ろうなどと、誰も考えないはずだ。しかしリンガーハットはそれをやってのけた。

 リンガーハットの工場では、大型の調理器具は全て「自社製」となっている。「回転野菜炒めマシーン」や「自動餃子焼き機」など、他社にはない製品をリンガーハット自らが製作している。なぜこのような、ある意味で手間のかかるようなことをわざわざ行っているのだろうか。

長崎ちゃんぽん「リンガーハット」以外思いつく?

 少し話を変えてみよう。長崎ちゃんぽんと言えばリンガーハットなのはこれまで再三お伝えしてきたが、そもそも長崎ちゃんぽんと言われてリンガーハット以外になにか想い浮かぶという人はどれくらいいるだろうか。

 おそらく、ほぼすべての人が全く思い浮かばないことだろう。そう、リンガーハットには「競合」が存在しないのだ。ここに、調理器具が自社で製作されていることのカラクリがある。

 ちゃんぽんとは、炒める作業と煮る作業が入った、本来ならばチェーンで展開するのが少々難しい料理である。それを実現させた技術力もさることながら、リンガーハットがすごいのは他社を「参入させない」力である。工場で使われる器具を自社で製作することで、他社が参入する敷居を高く設定できているのだ。ちゃんぽんチェーンはまさに、リンガーハットの独占状態と言っても過言ではないだろう。


 リンガーハットの工場戦略は、一朝一夕で他社がまねできるものではない。だからこそ、長崎ちゃんぽんというニッチな市場においても、一つのおおきなチェーンとして成立することが出来ているのだ。

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