1. 「棲み分けるか、共生するか」――薄利の奪い合いから脱却する3つの企業戦略:『競争しない競争戦略』

「棲み分けるか、共生するか」――薄利の奪い合いから脱却する3つの企業戦略:『競争しない競争戦略』

by jurvetson

 事業には、「市場」という自社の価値をどの枠組みのなかで提供するかというカテゴリ分けがある。そしてその市場規模や競合他社とのシェア争の厳しさは様々である。しかし、どの市場にも共通することがある。それは市場内で売り上げやシェアの多くを占めるリーダー企業の存在だ。

 どの企業もがリーダー企業になれるわけではない。リーダーになれるのは一社のみ。ましてやリーダー企業の売上やシェアが拡大するにつれて、市場から蹴落とされる企業が出てくる。資本主義の宿命だ。消費される資源の質を取っても量を取っても、リーダー企業に遠く及ばない企業は多い。そうした企業が、市場で生き抜くためにはどうしたら良いのだろうか? 答えは、競争しない戦略にある。

 今回紹介する書籍は、市場において弱い者が強い者に逆転勝利するといったドラマティックなものではない。小さな企業がいずれ大きな企業となるべく、挑戦を続け成長するために、生き残ることを前提とした戦略書『競争しない競争戦略 ―消耗戦から脱する3つの選択』という一冊である。

 今回は、3つある競争しない競争戦略を項ごとに戦略を1つずつ紹介していく。

市場にリーダー企業を参入させるな!:「ニッチ戦略」

出典:imgarcade.com

 ニッチ戦略とは、競合他社と直接的には競争せずに棲み分けた特定の市場に注力することである。ニッチ戦略では、自社の持つ市場にリーダー企業を参入させず、自社の利益を向上させることが目的となる。そのために必要な項目として2つの観点が本書で挙げられている。

質的コントロール

 これはリーダー企業にはなく、自社にしかない設備やスキルといった資源を最大限に生かし、リーダー企業が新規事業として開拓をしづらくするという方法である。例えば、タカラベルモントという企業は技術やニーズを理容師や美容師の使いやすさにこだわった理美容椅子を作り、国内シェアの6~7割を占めている。

量的コントロール

 これはリーダー企業にとってメリットが感じられないほど小さな市場を作り出すという方法である。市場規模が大きく利益率が高いと、質的コントロールがなされていてもリーダー企業は資源をフル活用して参入してきてしまう。例えばスノーピークというキャンプ用品メーカーは、ハイエンドなキャンプ用品という絞った市場を作り、そこでブランドを確立させた。

 質的コントロールと量的コントロールは、どちらが欠けてもニッチ戦略は成り立たない。またニッチ戦略は、常に磨きをかけていかないと競合他社に追い抜かれてしまう危険もある。しかし十分にニッチ戦略を行うことが出来れば、特定市場において自社ブランドを確立し、利益や名声を得ることも可能になるのだ。

リーダー企業の足を引っ張れ!:不協和(ジレンマ)戦略

by lsgcp

 リーダー企業は、市場においてシェアや売り上げを伸ばすために同質化戦略という手法を取ることが多い。同質化とは、自社製品に他社製品が持つ魅力となる部分を加え、他社の持つ顧客ニーズおさえることにより自社へ乗り換えさせるという方法である。しかし対処法はある。それは、リーダー企業が同質化によって自社の価値を失うように仕向ける不協和戦略である。具体的には、以下4つの不協和戦略がある。

1.企業資産の負債化

 リーダー企業やそのグループが持つ資産を競争上価値を持たないようにする。

2.市場資産の負債化

 同質化するとリーダー企業の顧客が持つ企業イメージや製品イメージを変えるような戦略を出し、それらを競争上価値の無いものにする。

3.論理の自縛化

 リーダー企業が顧客に対し発信していたイメージや製品と反する戦略を打ち出し、リーダー企業が安易に同質化出来ないようにする。

4.事業の共食い化

 リーダー企業の製品やサービスと共食い関係にあるような製品やサービスを打ち出し、同質化によってリーダー企業の事業が成り立たないようにする。

 一つ目の企業資産の負債化で有名な例は、インターネット専業のライフネット生命である。ライフネット生命は営業職員を持たないため、人件費がかからず、その分保険料が安い。また特約などを廃止し保険を分かりやすくした。これまでの生命保険会社は人を使った営業中心で特約ありきの事業であったが、ライフネット生命の戦略によって、その企業資産の価値を落とされたのである。

 不協和戦略では、リーダー企業の強みを弱みに変えさせ、リーダー企業の弱みを自社の強みにすることが重要となる。そのためには、リーダー企業の強みを洗い出し、負債化させる戦略を立てることが必要となる。

リーダー企業に守ってもらう!:協調戦略

出典:kids.britannica.com

 ここまででリーダー企業に競争させない戦略を見てきたが、最後の一つはリーダー企業と共生するという戦略である。リーダー企業とは競争するのではなく、共生することによって競合他社からの攻撃を防ぐというものだ。協調戦略にも4つの戦略がある。

1.コンピタンスプロバイダー

 自社のコアコンピタンスとなる技術分野に関し、競合他社から積極的に業務受託するという方法である。GE(ゼネラル・エレクトリック)はエンジン開発において、他社からメンテナンス事業などを受け持ち、市場で寡占状態を生んでいる。

2.レイヤーマスター

 競合他社の持つ機能の一部を自社で代替し、市場で寡占状態を生み出し利益を上げる方法である。例えばセブン銀行は、銀行の持つATMという機能を代替し、セブン銀行利用時に発生する手数料で利益を得ている。

3.マーケットメーカー

 競合他社に対し新たな機能を提供することで、利益を上げる方法でレイヤーマスターに似ている。楽天は、バスのチケットをオンライン販売するサービスを打ち出し、中小バス会社の顧客増加と手数料による利益の獲得を行っている。

4.バンドラー

 競合他社の製品を自社でも取り扱いリーダー企業や強い企業と協力体制を固めるという方法である。グリコは自社商品の菓子ボックスの中に他社の協力企業の商品も入れることで、その協力企業を競合他社にスイッチさせないようにしている。

 協調戦略では、自社の強みとなる資源を明確にし、他社に組み込む方法を考えていくことが必要となる。


 これから自社を成長させていくためには、まずはリーダー企業との競争を避け生き抜くことが必要だ。成長を続ければ、いつかリーダー企業となる日も来るだろう。ぜひ『競争しない競争戦略』を読んで、リーダーとなる日まで生き抜いて欲しい。


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