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これからは「副業」が主流に? 肩書きが通用しない時代に、自分の価値を高める唯一の方法

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2015/08/20(最終更新日:2015/08/20)


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 これからやってくる超高齢化社会、それにともなう慢性的な人材不足。それは中小企業成長の足かせとなりそうだ。終身雇用制度もまた、最終局面に近づいている。経済発展を促すには、やはり雇用の多様化こそ新たな手立てではないか。 

 現状では、大きく2つの雇用形態がある。勤務期間がせいぜい3〜5年ほどの「非正規雇用」、そして勤務期限の定めのない「正規雇用」の2区分だ。安心を得たければ「正規雇用」を選ぶしかない。私たちが、多様な働き方を選べるようにするためには、現在の「雇用形態」をどのような仕組みに変えていくことが必要だろうか。 

 「自分の価値を高める方法」をテーマに、人材総合サービスを展開する株式会社サーキュレーション代表・久保田雅俊氏と、「40歳定年説」を提唱する、東京大学大学院経済学研究科の柳川教授の対談をお伝えしよう。

「副業」が、雇用の流動化のきっかけにならないか。

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久保田:これからの日本では少子高齢化が加速し、優秀な人材は、ますます人材市場から枯渇していきます。安倍政権の成長戦略でも、雇用関連の規制改革に焦点が当たっていますが、社会的にみても多様な働き方に対応できる仕組みを整える必要があると感じています。欧米と比較しても、まだまだ日本の労働市場における雇用の流動性は低い。柔軟な雇用体制や、新しい人材活用の実現ために、何ができるのでしょうか。

柳川:日本で雇用の流動化を進めるための課題は、「法人」と「個人」の両方の側面があります。

 まず「個人」の立場に焦点をあてて考えると、例えば「副業」は、個人に大きなリスクなく新しい仕事に踏み出せる方法の一つです。能力が高い人は、いきなり独立という選択が出来るかもしれないけれど、普通のサラリーマンにとっていきなり会社を辞めるのはリスクが高いですよね。家族がいたらなおさら難しい。とはいえ今後、会社の経営が傾く可能性もある、または自分のスキルが陳腐化するかもしれない。同じ会社に居続けるというのも、それはそれでリスクがあるわけです。 

 つまり、メインの仕事をしつつ、副業などで他の複数の仕事に携わって自身のスキルの幅を広げていくことが、将来的な本人の生き残り策として有効だと思います。 

久保田:確かにそうですね。でも、実際になかなか副業を認める企業は少ないというのが現状です。

柳川:企業側からすると、「自分のところで一生懸命働いてほしい」という思いで社員を採用しているので、他の仕事に意識を向けられたら困る。だから、副業にどうしても後ろ向きになってしまいますよね。しかし、外に目を向かせて他の仕事を経験させるのは、長期的に見ると企業にとっても必要なことであり、実際メリットも多いのです。

久保田:なるほど。ただ、基本的に企業の就業規則には「副業禁止」が入っていますね。従来の終身雇用制度が強く影響しています。今後、副業を認める風土を社会で広げていくにはどんな方法があるでしょうか。

 柳川:「どんな仕事でも副業OK」というわけにはいかないので、最初のステップとしては「制度上、副業は禁止」の状態からスタートして、次のステップで「認められた仕事以外は禁止」という形に、少しずつに変えていくことができればいいのではないかと思います。その際、利害双反が起きるものや、重要な企業秘密が漏れてしまうような案件は禁止であることが前提になるでしょう。しっかりと線引きをして、双方で認められるものに限って、進めていくことが第一段階だと思いますね。

社員の「副業」を認めると、メリットがある 

柳川:社員の「副業」を認めるにあたり、企業側に2つの懸念が混在するだろうと考えています。一つは「ライバル会社にいかれたらと困る」ということと、もう一つは「脇目もふらずに自分の仕事に専念してほしい」という思想です。 

久保田:確かに、経営陣としてはその思想が強いですよね。

柳川:やはり、こういう基本的な意識が変わらないと、副業なんて認められないでしょう。企業側にこれまでの考え方を改めていただき「発想の転換」をしていただくことが大切です。この「発想の転換」が企業にとって、なぜプラスになるのかというと大きな理由が2つあります。
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柳川:
一つは、「雇用の責任」にまつわる内容です。企業側に雇用の責任があり、長期雇用が前提となっていますが、今やどんな大会社だって、数年後、数十年後、どんなことが起こるか分からない時代です。

 「この会社のためだけに」と脇目もふらずに働かせたのに、社員に対して解雇やリストラを余儀なくされる状況が起きないとは限りませんよね。万が一、経営が悪化したときに備え、社員に生きるスキルを身につけさせるのは、本来は会社側が考えるべきことではないでしょうか。 また、社員に外の世界を見せることが、生き生きと働き続ける原動力になり、さらに一生懸命働くという傾向が多分にあると考えられます。

 「クビにならないように働こう」という意識下では、下手をすると組織にしがみついたり、「失敗をしないように」と働くという側面が強くなりがちです。でも、誰もがリスクを取らない働き方では、会社は絶対に伸びないでしょう。だから、多少冒険をしてくれる、リスクをとっても挑戦する姿勢を持った社員を育てていかなければならない。「会社の外でも自分の力が通用する」という自信と自力をつけさせることが必要です。 

 もう一つは、外で通用する能力や、他の仕事を社員に身につけさせる事が最終的には企業の戦力に繋がるということです。今の会社でしか役に立たないスキルのみだと、新しい事業を始める時に何の役にも立たないというリスクがあります。他の仕事の経験を通して、社員に新しいスキルを身につけさせることが会社全体のプラスになると思います。ただ、今のように人材不足だと、どうしても従業員を囲い込みがちですね。 
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久保田:経営者側としては「幹部候補の育成になり、将来的に企業の利益に繋がるだろう」という思いながらも、「もしかしたら、他に行かれてしまうのでは?」という懸念は今後も拭えないと思います。そして、柳川教授のお話のように、会社経営が悪化した後の従業員のキャリアまで考えている企業が非常に少ない。 

柳川:そうでしょうね。 

久保田:経営者の立場からいえば「自分の会社で雇ったんだから」という思いが強くなりがちですね。どんなメッセージングをしたら、経営者の意識が変わっていくものでしょうか。

柳川:考え方や意識を180度変えることは難しいでしょうから、段階を踏んで小さな変革を起こすことが、最終的に「雇用の流動化」に繋がると思います。

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