1. 数々の失敗の末に掴んだ大成功。“ビジネス界のトップスター”米Box・CEOが語った「過去と未来」

数々の失敗の末に掴んだ大成功。“ビジネス界のトップスター”米Box・CEOが語った「過去と未来」


出典:channel.nikkei.co.jp

 オンラインストレージサービス「Box」創業者、アーロン・レヴィ氏が、2015年6月、日本経済新聞社が東京・南青山で開催したイベント「STARTUP X」に登壇した。

 前編では、アーロン・レヴィ氏が語った「テクノロジーが産業に巻き起こす“3つの破壊的チャンス”」をお届けしたが、ここではイベントに訪れた人々とアーロン・レヴィ氏によるQ&Aセッションをお伝えしていく。

前編はこちら

スピーカー

米Box Co-founder兼CEO Aaron Levie(アーロン・レヴィ)氏

モデレーター

日本経済新聞社 編集局企業報道部 田中暁人氏

“破壊的変化”をもたらせる市場が「エンタープライズ」だと気づいた

田中:アーロンさん、お忙しいのにも関わらず、ご参加していただいてどうもありがとうございます。今日参加している方は学生、また起業家の方、一緒にお仕事をしたいと思っている方、あるいは投資をしたいと思っている方、たくさんおいでいただいています。ですので、今日お聞かせいただけるご意見は非常に参考になると思います。

 20歳のときに創業されて、今年(2015年)1月に上場されたということですね。おめでとうございます。

レヴィ:ありがとうございます。

田中:これまでいろんなことがあったと思います。厳しい事業の決断をされたともあるでしょう。Boxのこれまでの生涯についてお話しいただけますか?

レヴィ:Boxのアイディアは2004年時点にできていて、私は大学2年生でした。いろんなスタートアップのアイディアをトライしてみたんだけど、これが上手くいかなくて。

 大学の中のファイルをシェアしようとしても、なかなか上手くいかない。毎日毎日、ファイルの共有は何でこんなに難しいのだろうと思っていたわけです。そのうちに、ストレージコストが急激に下がっていきました。ハードドライブのコストも、どんどん下がっていきました。そして、ブラウジングテクノロジーもよくなって、インターネットアクセスもどんどん速くなった。3つの要素が揃ったわけです。

 インターネットの速度も、ブラウザのテクノロジーも、またストレージのインフラそのものも変わってきたので、今後クラウドに情報をおいて、データを必要に応じてそこから引っ張ってくればいいんじゃないか。サブドライブを持ち歩かなくても、ハードドライブがなくても、あるいはE-mailでファイルを送らなくてもいいじゃないかというアイディアが出てきました。

 そこで実際に製品を出しまして、注目を浴びました。実は億万長者の方に「ちょっとこの製品を検討してもらえますか?」とメールを送ったんです。マーク・キュバーンさんという方で、彼は投資してくれるとおっしゃって下さいました。そして、私たちは大学生なのにもかかわらず、35万ドルもの小切手を送ってくれたのです。会ったこともない人なのに、郵便で小切手を送ってくれるんです。これは、シリコンバレーならではですよね。

 その資金をいただいて、両親はカンカンだったんですけれども大学を辞めて、シリコンバレーに乗り込みました。ガレージでビジネスを始めてから、毎日毎日即席ラーメンで暮らしていました。全ての資金は、食べ物じゃなくて会社につぎ込もうと思ったのです。ほとんど毎日、ガレージで暮らすように仕事をしました。いろんなビジネスモデルを試して、ある日気付いたのです。いわゆる「エンタープライズマーケット」、ここに大きな破壊的変化をもたらすことができると。

 MicrosoftやEMC、Oracle。そういった大きな企業よりも、もっと破壊的な技術を提供できるじゃないか。例えば、GoogleやAppleと同じような破壊的な変化をもたらせるだろうということで、エンタープライズマーケットに目を向けました。今ではアメリカ、ロンドン、フランス、日本にも、1250人の従業員がいます。このように何年もかけて、グローバルに拡大することができました。

世界中で起業できる時代に、シリコンバレーを選んだ理由

田中:もう一つ質問をしたいと思います。会社を立ち上げるのは、世界中どこでも可能だと思います。でも、わざわざシリコンバレーの真ん中で立ち上げたわけですよね。シリコンバレーじゃなきゃいけなかったんでしょうか? Google、Boxもそうですけど、シリコンバレーにいることの利点は何ですか?

レヴィ:シリコンバレーには、ベンチャーキャピタリストも起業家もいますし、メンターもいます。また、非常に多くの優秀な人材がいるので、自分たちの企業を作るのにも役立ちます。シリコンバレー発ではなくても素晴らしい会社はあります。例えば、スウェーデン発のSpotifyや、日本発の楽天もそうです。起業は世界中どこでもできますが、アメリカにいるのであれば、通常はシリコンバレー発になります。日本だったら東京に来るということと同じです。

 世界中、どこにいたとしても成功することはできますが、ここでカギとなるのは、グローバルなビジネスを作りたいのか、あるいは自分のマーケットだけにフォーカスをするのかという意思決定です。日本で起業するのであれば、自分は日本向けの製品を作りたいのか、それとも世界中をターゲットしていくのか、これが重要になります。文化的な側面も出てきますし、あるいは、どのような形で流通させていくのかも考えなくてはなりませんね。

これからの起業の分かれ目は、新たなテクノロジーに対応できるか否か

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質問者A: まず、他の企業との差別化要因と、競合優位性を教えてください。次に、今後の御社のコンシューマー、そして教育機関へ向けての戦略を教えていただけますか。
 
レヴィ:まず競合優位性についてお話しします。

 私たちは非常に複雑なニーズを持ったエンタープライズをターゲットにしております。セキュリティーの要件もあり、コンプライアンスの要件もたくさんある。ビジネスのサービスを展開するのに難しいところをターゲットにしています。その中で、非常にエレガントで使い勝手のいい製品を提供しようと心がけています。

 また私たちは、銀行でも、製薬業界でも、あるいは政府官公庁でも使えるようなセキュリティーを持つことにもフォーカスしております。これが我々のユニークなところだと思います。

 そして、コンシューマー市場に関してなんですけど、我々はコンシューマーには入りません。なぜかというと、戦略的な優位性がその市場では持てないと思ったからです。一方で、エンタープライズ市場であれば、非常にユニークなアドバンテージを持っていると思っています。

Box導入で、日本の将来はどうなる?

質問者B:Boxのようなソフトウェアがあることによって、我々は規範から外れる、脱出できると思っておりますし、狭いオフィスからは離れられると思っております。例えば、日本だと9時~5時までずっと同じところにいっぱなしという状態があり得ると思いますが、そこから脱却をするようなトレンドが進んでいるのではないでしょうか。ご自身は、日本の将来の仕事環境はどうなると思いますか?

レヴィ:非常にいいポイントだと思います。皆さんの方がよくご存知のように、日本の企業というのは、非常に価値の高いスキルを持っています。ただ、新しい仕事のやり方に対して、対応できていないところがあると思います。仕事のスタイルやプロセスが20年も50年も前のもので、どうやって革新をもたらすのか、これが大きな課題になります。

 日本の企業も、新しいテクノロジーを使って従業員を変え、仕事のやり方を変えて、それによってモダンな経済に対応するべきではないでしょうか。レガシーな考え方から離れて、将来へと向かわなければいけない。モビリティであったり、クラウド化だったり、コラボレーション型だったり、ヒエラルキーを少なくしたりという対応を進めるべきです。これによって、多くのレガシーなビジネスには破壊的な影響があるかもしれませんが、先ん出る企業になるか、過去の遺物になるか、ここに差異が生まれると思います。もうすでに日本のビジネスの方々も考えを馳せていると思いますが、革命のための努力が必要ですね。

Boxの強み:過去の知見を持った人材がいるスタートアップ

質問者C:顧客の獲得についてです。お客様の獲得にユニークな方法を持ってらっしゃいますが、なぜ口コミで売るという方法に行き着いたのですか?

レヴィ:重要なのは、テクノロジーがあって、もっと口コミができるように最適化をすることです。あるいは、セールスプロセスに対して最適化をするということが必要になるわけです。

 私たちのテクノロジーというのは、個人間で使われます。そこで私たちは、簡単に共有ができるように最適化しようと思ったのです。使える人と使えない人が分かれないようにし、誰とでもシェアができるようにということを考えました。そこでまず、Boxを無償で共有してもらおうと思ったのです。どんなソフトであっても、できるだけ幅広く使ってもらいたいのであれば、そのニーズに合わせることが重要です。

田中: Boxは顧客リストが素晴らしいですよね。政府機関もお客様になっていますし。また、NTTコミュニケーションズともパートナーシップを発表したばかりですけれども、いずれも日本の伝統的な日本企業です。Boxはまだ若い会社ですが、従来型の組織に、どうやってセールスをしているのでしょうか。若い会社として難しさと、それから優位性はどこにあるのでしょうか? 

レヴィ:若い会社であれば、メリット面もあればマイナス面もあります。一つの私たちが抱えていた課題というのは、これまで素晴らしい業績を上げてきたと言っても、この業界にいる歴史のある企業とは時間が違います。MicrosoftもOracleも1980年代からスタートしています。当然それに投資する企業もいるわけです。

 それで、まず私たちはチームに経験のある人を雇って、いわゆるレガシーな会社と同じような仕事ができるようにしました。もう一つ、ソフトウェア会社の人たちを雇いました。このバランスをとったわけです。新しいスタートアップと仕事をすれば、新しい思想、新しいアイディア、新しいテクノロジーが手に入るというメリットがあります。そして、Boxには実際に経験を持った人もいるので、いわゆる旧態依然の仕事をすることもできるという重要なバランスを打ち立てたわけです。

スタートアップを構築する「4つの教訓」

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質問者D: 私は起業したばかりでいろいろアイディアがあるので、実現させたいと思っています。ご自身は様々なアイディアを試して、そしてうまくいったアイディアがBoxだったとおっしゃっていましたが、また起業するとすれば、再び同じことをやりますか? それとも違うやり方でトライしますか?

レヴィ:一般的なアドバイスにさせてください。スタートアップを構築するときのアドバイスとして、起業しようと思うときに基本的に3つ考えたいことがあると思うのです。

 まず第一に、常に十分な技術のトレンドがあって、その波に乗れるかどうか、それを確信することです。つまり、追い風が吹いている、向かい風じゃないということを確認しなくてはなりません。

 2つ目は、本当にいいチームがいるかどうかです。私の場合は、3人の友人がいました。一緒に高校に行った、中学生からずっと一緒の友人なんです。起業するのは大変なことです。しかし、友人がいれば難しい時代も乗り越えていけるんじゃないかと思います。

 そして3つ目。本当に自分がやりたいことをやるということです。Boxを立ち上げてから、もう10年半が経ちました。熱意がなければ10年半も続きません。10年経って、退屈になってしまうということでは困ります。

 3つと言いましたが4つ目もありました。常に経済的な視点で「破壊的な影響」を探すということです。代替案よりも10倍は良いものを狙うこと。2倍ではいけません。世界中に多くのものが溢れています。何かを売ろうと、売り込みをかけています。ということで、自分のやってることが目を見張るくらいすごくて、他を大きく凌ぐというものでなければなりません。

 自分がまた起業するのであれば、こういった4つの教訓を満たすようなものを探すと思います。

田中:他にその4つの教訓を満たすようなアイディアはあれば、皆さんに話していただけますか。そうすれば、第二のBoxが始める人々が増えると思いますが。

レヴィ:どの業界であったとしても、いろいろなところが繋がってきていると思います。例えばバーチャルリアリティ。Oculus Rift、Samsung、Google、そしてMicrosoft、これらに企業によって、土台が築き上げられています。バーチャルリアリティの話が出てから30年になるのですが、今初めてバーチャルリアリティが実際のものになるかもしれないというところに来ています。

 ロボティクスや人工知能・機械学習にも注目しています。バーチャルリアリティ・ロボティクス・人工知能の3つの領域が組み合わさるという無限の可能性も、今後10年で出てくるでしょうね。

どんなに成功している会社でも、何十もの困難に直面した過去がある

質問者E:私は、オンデマンドのフードデリバリーサービスを始めました。しかし、非常に難しい局面があり、1年かけてサービスをやめることを決意しました。御社は成功を収めていますが、それと同時に、悪い経験もされているのではないかと思います。そこで質問ですが、困難をどうやって克服されてきたのでしょうか。

レヴィ:なぜあなたの事業は上手くいかなかったのでしょう。

質問者E:コストの問題がありました。我々のサービスは他社と比べて高く、リピートには繋がらなかったのです。

レヴィ:食事をオンデマンドで、携帯を使って発注をしたことのある方、手を挙げてください。あまり多くの手が挙がってないですよね。でも、これはいい兆候なのです。将来に向けて成功するのであれば、かつ今やってる人が少ないのであれば、実際に事業を始めることができると思います。もちろん日本の会社全て知っているわけではないんですけれども、でも考えなければいけないポイントは、どんなに成功を収めた創業者でも、10や20、上手くいかなかったアイディアを持っていたということです。

 マーク・ザッカーバーグも大学や高校でいろいろとやったのですが、上手くいかなかったものがたくさんありました。Uberの創業者、トラビス・カラニックがUberを始めたのは、確か33か34歳の頃でしたが、その前の10年間に何十もの失敗経験があったわけです。問題に直面したりアイディアが上手くいかなかったりという場合は、他の会社、成功を収めているどの会社も、創業者はまさに同じような問題に直面したことがあるということを思い出してください。

アーロン・レヴィ流、ビジネスの種の見つけ方

質問者F:ビジネスの種は、どうやって見つけるのでしょうか? 成功を収められるようなアイディアを見つけるのは、とても難しく感じます。

レヴィ:一つは、身の回りの世界を眺めて、想像力を働かせること。今上手くいっていない、改善できるであろうと思われるものを考えてみます。どれくらい駄目なのか、どうやったらもっと効率化できるか、そういった規模を考えるといいかもしれません。

 あとは……、これはあまりおすすめしないのですが、各業界を調査してみると、多くの場合、規制を受けている様々な古い業態があります。つまり、近代化できていない銀行とか、医療関係とか、保険とかそういった業界です。まだまだ遅れている業界を、将来どのようなイノベーションで変えていくか考えたとき、アイディアが生まれますね。起業家の皆さんの中には、古い業態からチャンスを見出した方もたくさんいます。

大きなビジョンを示せば、人が集まってくる

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質問者G:グローバルな事業拡大をするときに、どんな問題がありましたか?

レヴィ:グローバルに事業を拡大するときに考えなければならないのは、どうやって一貫した文化を、いろいろな大陸、拠点、国、地域で作っていくかということです。どんなスタートアップでも、もちろんそれぞれ文化が違います。仕事の仕方、仕事への姿勢、スタイルも会社ごとに違います。グローバルに事業を展開しようとするときに、その地域にはその地域なりのスタイルがあるので、そこに注意を傾けます。

質問者H:今ではBoxはグローバルな会社になっていますが、まだ有名ではなかったとき、どのように人材を確保したのでしょうか。

レヴィ:大事なのは、事業が“人が来たいと思う”いいストーリーを、つまりビジョンを指し示すことです。私たちは、ファイルの共有をしません。ファイル共有で話したって、誰も興味を持ってくれないので、テクノロジーでどんなことができて、ビジネスがどう変わるかという話をします。テクノロジーでお客様がどんな成果を享受できるかという話をして、人材を集めました。まずは大きなビジョンを持つことですよ。

田中:ありがとうございました。ぜひまた日本に戻ってきてください。(終了)


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