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新たな水族館・博物館が地方活性化の起爆剤に! 水族館大国・日本で大企業が挑む、水族館のカタチ

Shinpei Hayakawa

2015/08/11(最終更新日:2015/08/11)


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by nubobo
 水族館や博物館は、学術的な研究が目的とされる学習施設の一つである。そのため、学校の社会科見学などで誰しもが一度は足を運んだことがあるだろう。しかし、これは日本特有なものなのだ。

 2011年の国際水族館フォーラム(IAF)の確認によると、世界で計431館の水族館が登録されており、その内およそ2割近い70館という水族館が日本国内にあり、国別では水族館数世界No.1なのだ。博物館であっても37都道府県に設置されているという。ここから分かる通り、水族館や博物館は世界的に見ても日本人にとって身近なものである。こうしたものを観光資源として進化させ、より人の集まる場所にできれば、地域活性化の起爆剤になるのではないだろうか?

 今回は、2015年8月11日放送のテレビ東京「ガイアの夜明け 地方を変える! 新たな水族館・博物館」に合わせ、これまでの博物館や水族館の常識を破る、新時代の水族館や博物館の取り組みを紹介する。

北陸新幹線でつなぐ官民一体の地方再生

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by rail02000

「京都水族館」と「福井県立恐竜博物館」の間では、「入場料相互割引制度」によってお客さまによりお得に両館の異なる魅力を体験していただけます。また、「すみだ水族館」と「福井県立恐竜博物館」の間では、3月14日(土)の北陸新幹線開業による東京都と福井県とのアクセス向上により、相互地域のお客さまにご来館いただきやすくなります。

出典:「福井県立恐竜博物館」 × 「京都水族館」「すみだ水族館」 年間パスポート ...

 2015年3月に北陸新幹線が開通し、福井ー東京間のアクセスがしやすくなった。また2023年には敦賀方面まで開通する見通しが立てられており、京都や新大阪までの開通も期待されている。この北陸新幹線開通は、中部・北陸地方への観光客増加などの経済効果を生む足掛かりとして注目度が高い。

 そして、この北陸新幹線開通と開通地域沿線への注目度を利用する形で、地方活性化を狙う施設がある。それがすみだ水族館・京都水族館・福井県立恐竜博物館という3つの施設だ。各館はコラボレーションして、今年から全館で使用できる年間パスポートの新制度を導入している。地方同士が助け合う――新幹線が新しい地方再生の形を可能にした。

 また2014年度の地域ブランド調査によると、福井県は知名度や魅力のランキングにおいて、47都道府県中45位という結果が出ている。だからといって、国や県などの行政が努力して地方再生を促すことは容易ではない。このコラボレーション企画は、そうした地方再生の課題を打破するものとしても注目がされている。実際、恐竜博物館は県立の施設であるが、水族館は両館とも民間企業が運営するものなのだ。これは行政と民間企業がタッグを組むという、これからの地方再生に必要な在り方の先駆けとなっている。

大企業が取り組む、新時代の水族館のカタチ

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by nontaw

「また来たくなる」水族館。
水族館を記憶に残る、そして居心地のよい空間にすることが私たちの目指す姿。
「カフェもあるからちょっとお茶をしに水族館に行こうか?」。そんな身近な存在になりたいのです。

出典:オリックス オリックスストーリー すみだ水族館

 前項で挙げた「すみだ水族館」と「京都水族館」は、実は両社とも同じ企業が運営しているということをご存知だろうか? それは、金融サービスやレンタカー事業を展開するオリックスグループである。

 以前オリックスグループは、公共施設等に民間企業が資金を提供し、施設整備と公共サービスの提供を行うPFI(プライベート・ファイナンス・イニシアティブ)という事業手法に携わっていた。その際、新江ノ島水族館に出資者として事業参画したことがある。そこで、オリックスグループは「学術的な研究のためだけの水族館である必要はない。新たな価値を生み出せばビジネスチャンスにつながる」という考えを持つようになった。つまり水族館や博物館は、学習のためだけでなく人々の憩いの場や娯楽施設でもあるということだ。

 オリックスグループは、これまでの学習施設を前提とするのではなく「人の集まる観光資源」としての水族館を運営すべく、すみだ水族館では館内の見学ルートを置かず自由に見て回れるようにし、ソファや十分なスペースなどを置いてくつろぎの空間作りを行った。こうして最初から観光資源として活用するというのは、今までの水族館や博物館には見られなかった取り組みである。一度、行政の施設と関わったことがある企業だからこそ見えてきた、地方再生への新しい挑戦の形だ。

新時代の博物館像へ挑戦する国立科学博物館

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by Kentaro Ohno

当館の展示総合テーマ「人類と自然の共存をめざして」に基づき、最先端の科学的知見をふまえた新しい展示にリニューアルすることにより、子供から専門家まで多様な人々が先端的な科学の世界を楽しむことができ、科博や科学との“対話”を育むことができる場となることを目指しました。

出典:地球館リニューアル -国立科学博物館-

 ここまで、民間と行政のコラボレーションや民間企業による地方再生のための水族館・博物館事業を見てきたが、行政が主体となった挑戦がないわけではない。

 東京・上野にある国立科学博物館と言えば、知っている人も多いだろう。各地方の水族館や博物館が観光資源として活用されていく中で、国立科学博物館も去年の秋ごろリニューアル工事を開始し、今年7月に再開館された。新設の目玉として、人工衛星の観測データや衛星写真をほぼリアルタイムで見ることが出来る「観測ステーション」や、動物の剥製展示を様々な角度から見えるアスレチック形式の「親と子のたんけんひろばコンパス」といった利用者が楽しめる要素が満載となっている。

 民間と行政が互いにはないアイデアを学び合い、時には協力することで、これからの地方再生はやりがいや面白みのあるものになるだろう。


 既存の価値に縛られず、新しい価値を創造する。身近なものであるからこそ、大きな起爆剤となる。またそこには行政と民間の協力があってこそ成り立つ。観光資源として新たな価値を持つ水族館や博物館は、これからの地方再生のカギとなっていく。

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