1. 経営トップが明かす、日本最強「メディア商店」の不思議な“ビジネスの秘密”:『TSUTAYAの謎』

経営トップが明かす、日本最強「メディア商店」の不思議な“ビジネスの秘密”:『TSUTAYAの謎』

出典:www.flickr.com
 インターネットの普及が進み、本やCDといったものは売れなくなってきている。こうした時代の流れの中で、あえてリアル店舗を開き、業績を伸ばしている企業がある。誰もが一度は耳にしたことがあるだろう店舗――TSUTAYAである。

 TSUTAYA創業者である増田宗昭氏は、土建屋を営む親の下に生まれ、小さい頃から家業を通して商売というものを見てきた。そして増田氏は、商売に大切なものは利他的な視点を持って、人間としての欲求を満たすことであると考えた。

 インターネットの普及した現代において、なぜ増田氏はリアル店舗にこだわるのか? 今回は、その理由を理念や実際の事業展開を基にまとめた『TSUTAYAの謎』という一冊を紹介する。

なぜ、TSUTAYAはリアル店舗を出すのか

 増田氏は、ネット上でのオンライン店舗とリアル店舗の強みを次のように述べる。

「ネットは、低コストで在庫を圧倒的に多く持つことができ、いつでもどこでもアクセスして購入できる利便性がある。一方、リアル店舗は、すぐに商品を得られる即時性と、直に買い物のワクワク感を味わえる直接性という優位性を持っている」

 どちらにも利点があるのに、なぜリアル店舗を強く押し出すのだろうか? 増田氏は、リアル店舗を持つ理由として企業のブランディングを挙げている。リアル店舗は、その企業の世界観や雰囲気を作り出し、顧客に体験してもらうことが出来る。それにより顧客に企業を理解してもらい、親しみを持ってもらうことで自社商品のユーザーになってもらえるのである。顕著な例で言えば、Appleの持つアップルストアである。

 顧客との直接な接点を持つことは、企業イメージを浸透させ、特定のシーンにおいて自社を選択させることに繋がる。「DVDを借りるなら、TSUTAYAへ」といったものだ。

 次項では、増田氏は実際にどのような店舗を出しているのか紹介する。

トータルな生活提案でオンライン店舗と勝負する

 TSUTAYAの大本であるカルチュア・コンビニエンス・クラブ(以下CCC)は、事業の一つとして蔦屋家電という家電量販店を東京に出店している。これは以前からあるものではなく、前述した通りインターネットが普及しオンラインでの売買が普及していく中で、あえてリアル店舗として出したものである。

 インターネットの普及によって売買される商品の物量は増え、コストは減り、利便性が増した。だからといって、「リアル店舗もオンライン店舗と同じ土俵で戦おうとしてはならない」と増田氏は述べる。では、どう戦うのか? 増田氏は「モノではなく、トータルな生活提案で勝負するべき」と教える。

 リアル店舗に足を運ぶ人は、実際に商品に見て触れて体験するといった楽しみを求めている。その楽しみを増やすことが出来れば、自然とリピーターや口コミによるニューカマーを増やすことが出来るのだ。実際、蔦屋家電ではライフスタイル毎に家電を展示し、関連する雑貨などを販売している。一例としては、男の料理というコーナーには男性向けの調理家電や道具と料理本が置かれている。

 自分の好みにマッチした商品で作られた空間を体験できる。これが増田氏の考えるモノの物量ではなく、トータルな生活提案で勝負するリアル店舗ならではの戦略である。

人に求められるリアル店舗の生み方

 前項までで、リアル店舗にこだわる理由と具体的な戦略を見てきた。これほど利点があるなら今すぐにでも戦略を立てたいと思う人もいるだろう。しかし、リアル店舗を成功させるためには大事なものがある。それはニーズとマッチしているかだ。

 チェーン展開する店舗に多いのは、様々なニーズに対応しようとして店の独自性が失われ、企業のブランディングに繋がらなくなってしまうという場合である。増田氏は、そうならないようにレンタルショップであるTSUTAYA以外のリアル店舗は、個店として地域に根差した形を取っている。そのため出店地域のニーズとリアル店舗がマッチしていない場合のリスクが大きい。

 このリスクに対し増田氏は、地域における顧客ニーズを知るためのTSUTAYAならではのツールを紹介している。それはT-カードである。元々は、DVDやCDをレンタルするための会員カードであったが、今では多くの企業と提携し様々な商店でポイントカードとして使用されている。そのためT-カード利用により蓄積される購買履歴というビッグデータを基に、特定の地域における顧客が持つ消費行動の特徴やニーズを捉えることが出来るのだ。


 インターネットが普及する現代において、TSUTAYAが行う事業戦略は流れに逆らうものではなく、時代の流れに沿ってマッチしたものである。この本を読めば、これからの時代を生き抜く戦略の一端を知ることができるはず。


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