1. 【全文】Box アーロン・レヴィが語る、テクノロジーが産業に巻き起こす“3つの破壊的チャンス”

【全文】Box アーロン・レヴィが語る、テクノロジーが産業に巻き起こす“3つの破壊的チャンス”

出典:channel.nikkei.co.jp

 今、アメリカで最もホットなスタートアップの一つである「Box」をご存知だろうか? 圧倒的なスピードでシェアを拡大し、大きな注目を集めている「Box」とは、クラウドストレージサービスのことだ。

 創業者であるアーロン・レヴィ氏は、わずか20歳のときに「Box」を立ち上げて以来、創業10年で「Box」をフォーチュン500(全米売上上位500社)の90%以上が導入するサービスへと急成長させた。

 そんなアーロン・レヴィ氏が、2015年6月、日本経済新聞社が東京・南青山で開催したイベント「STARTUP X」に登壇した。気鋭の起業家アーロン・レヴィ氏が語った「テクノロジーによる産業の変容」とは一体どんなものなのか。その肉声をお届けしよう。

テクノロジーが生んだ破壊的チャンス。見逃せない3つの要素

 皆さん、お元気ですか? 今日は、Boxではどんなことをしているのか、そして、今ビジネスで大きな破壊的チャンスが起こっているということをお話したいと思います。

 私たちは、東京で非常に大きな事業展開を計画しているところです。皆さんご存知のDeNA、SEGA、サンリオ、セブン-イレブンとも仕事を始めました。第一三共もそうです。日本には一緒に仕事ができる企業がたくさんあるので、非常に楽しみにしているところです。

 さて、問題は私たちのテクノロジーを使っている多くの企業が、なぜテクノロジーを使ってイノベーションを起こそうとしているのか。なぜ、テクノロジーに大きな投資が向かっているのかということです。

 ここで考えなければならないのが、様々な変化です。テクノロジーの変化によって様々なものが変化し、新しいトレンドが生まれています。テクノロジーはどの会社でも、どの業種でも真ん中にあるのです。
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 今、3つの要素が重要になっています。

 まず1つ目。「新しい世代の従業員」です。新しい世代がビジネスに参入してきていますが、彼らはテクノロジーがどうあるべきかという新しい期待感を持っています。早い、簡単に使いたい、安く使いたい。テクノロジーは高いものであってはいけない、複雑ではいけない。大企業だけのものではないと、そういう思いを持った新しい人材が入ってきています。そういった人たちが、新たな仕事のやり方を見つけていきます。

 2つ目に、「新しい職場」があります。皆さん、Slackをご存知ですか? Slackというのは、新しいコミュニケーションテクノロジーです。これによって、エンタープライズ間でチャットが簡単にできるようになりますが、それ以外にもクールなテクノロジーがあります。私たちのBoxもそうです。職場に、もっと効率を上げよう、もっと迅速に共有ができるようにしようという新しい動きが生まれつつあるわけです。

 最後に「新しいビジネスモデル」です。今、破壊的な変化が、「ビジネスモデル」にも起こっているということも強調しておきましょう。

「Uber」に「Airbnb」、新たなビジネスモデルが産業を揺るがす

by illustir

 Uberは、非常に破壊的な革命を起こしました。Uberが生まれたときに、タクシー業界は震撼しました。タクシー業界はもうこれでダメになると思ったかもしれません。

 結局どうなったか、Uberの最初の市場であるサンフランシスコを例にお話しします。サンフランシスコにおいてUberは非常に効率が良かったため、住民はUberがあれば、車は必要ないと思うようになりました。車を売却する人が増え、所有をする人が少なくなりました。オンデマンドで輸送手段が手に入るのですから。自動車は、5分の1しか売れなくなってしまった。使わない車は売ってしまえばいい、Uberを使えばいいということになってしまうわけです。

 これは、非常に破壊的な影響をもたらしました。アメリカにおいては、今まで皆が何台も車を買うようなトレンドがなくなってしまって、オンデマンドの輸送へと移行していったのです。

 自動車を所有しなくなった場合、そしてロボットが自動車を運転している「自走車」が走るようになった場合にはどうなるのか。その場合には、自動車の事故が無くなります。ロボットの方が我々よりも運転がうまいからです。そのうち、自動車の保険も必要なくなるでしょう。であれば、保険業界に対しても影響が出てきますね。

 ということで、まず始めにタクシー業界に破壊的な影響を与えた産業が、より一層広がっていく。将来的に人々は自動車を所有しなくなり、自動車保険もなくなる。即ち、交通というようなところに投資をするというような企業は少なくなる、非常に破壊的な話ですね。


 もう一つの例に、Airbnbがあります。Airbnbは、今や世界でも最大のホスピタリティ会社になりました。より多くの人に対して、ホスピタリティのサービスを提供しています。しかし、ホテルは一切所有していません。考えてみてください。破壊的だと思いませんか? Airbnbは資産を持っていないのです。ビルも持っていない。にも関わらずホスピタリティを提供する最大の会社になっているのです。Airbnbもまた、ホスピタリティビジネスにとって、非常に破壊的な影響をもたらしたのです。

 小売りであれ、ヘルスケアであれ、あるいは交通・運輸、生命科学、製薬、どのような業界であったとしても、新しいビジネスモデルが生まれてきています。これはなぜかというと、テクノロジーがあるからです。テクノロジーによって、昔からあるビジネス・業界に対して、大きな影響が出ています。

積み重ねた文化が変化を受け入れる邪魔をする

 テクノロジーによって新たなビジネスモデルが生まれるということには、2つの意味があります。

 起業家であれば、このトレンドを有効活用していく。それによって破壊的な行為を生み出していくことができます。一方、大企業にとっては脅威です。なぜなら突然、起業家たちが自分たちのビジネスを奪取していくからです。私たちは、自分がどちらの側に立つのかを考えなければなりません。自分がスタートアップ側ならば、こういったトレンドを活用すべきですし、どういった形でトレンドに対応していくのか考えなければならない。

 ほとんどの企業は、このチャンスを捉えられていません。構造化されていないためです。新しい従業員、新しい職場、新しいビジネスモデルに対して、もうすでに20年、50年、あるいは100年間もビジネスをやっている企業というのは、速やかに対応ができないわけです。

 創業以来50年を超えている企業で仕事をしている方? 100年以上の歴史がある企業で働いている方? 皆さんの組織はどうでしょうか? 陳腐化したビジネスプロセスがある、あるいは一昔前のテクノロジーを利用している。そんなことはありませか? 積み重ねた文化があるでしょうが、それらが壁になって、変化に対して反応できないということはないでしょうか。産業時代には競争できたかもしれません。しかし今は、デジタルの時代。ということは、そこから抜け出さなければいけない。

「モノを売る」から「サービスをレンタルする」時代へ

 デジタル化というのは、どういう意味なのか。デジタル・エンタープライズとは何なのか。

 デジタル化によって、社内の物事はより速やか動きます。意思決定も速やかで、ヒエラルキーも小さくなる。共同作業することも共有することも、即時で行われる。これこそがデジタル・エンタープライズの中身です。 

 では、外の世界に向けてはどういったことが起こるのでしょうか。デジタル・エンタープライズというのは、コネクティット製品を作っています。Nestをご存知ですか? Nestとは、サーモスタット(家屋の温度調節をする機器)のことです。

by BitBoy

 不思議なことに、Googleなどの検索エンジンの会社が、このサーモスタットを所有している。検索エンジンの会社が電子機器ビジネスへと参入しているというのは、それによって、「接続性」を持ったよりインテリジェントな製品を作っていることを意味します。つまり、新たなビジネスモデルを生もうとしているわけです。デジタル世界ならではの動きですね。

 先ほど例に挙げたUberも、他の交通会社と比べて違ったビジネスモデルを持っていることがお分かりでしょう。Uberは製品ではなく、サービスを売っているわけです。Uberを買うのではない、私たちはUberをオンデマンドのサービスとして活用しているのです。

 ということは、製品的なビジネスが、突然サービスビジネスに転換しなければいけなくなります。何かモノを売っていた会社が、今やサービスをレンタルしなければいけないという、非常に大きな移行期にあるわけです。

ビジネスの常識を覆す「オンデマンドビジネス」

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 アメリカには、非常に多くの旧型の銀行があります。アメリカのあらゆる都市に、物理的な店舗を持っている銀行です。しかし、その都市には何千人しか住んでいませんし、2年間に1回しか銀行の店舗に行かないというような人たちもいるでしょう。

 銀行・バンキングを利用したいとき、今や物理的な店鋪に行く必要はありません。アプリケーションがあれば銀行を利用できるのですから。キャッシュだけではなく、機能の全てがデジタル化されているのであれば、銀行業もオンデマンドでやりたい。ある場所に行くなんて、避けたいわけです。銀行以外でも、例えば小売店のヘルスケアでも、
よりデジタルな体験が求められています。これこそが、デジタル・エンタープライズです。

 ローンのプロセスであっても、政府官公庁に提出する書類であっても、どうしてデジタル化できないのか。現在の多くのエンタープライズソフトウェアは、非常に特定の分野の、ITに詳しい観衆に向けて作られています。一般的なコンシューマー向けに作られたものではないため、直感的に理解できるようなコンシューマー向けのデザインが必要になってくるでしょう。

 セキュリティも重要ですね。あらゆる方向からハッカーが攻撃をしてきます。セキュリティを後からつけることに意味はなく、エンタープライズ・ソフトウェアを作っている場合、またはコンシューマーソフトウェアを使っている場合、セキュリティは初めから考えておかなければいけません。

「Box」は“テクノロジーで誰もが繋がる未来”を目指す

出典:www.box.com

 相互接続も重要になります。テクノロジーというのは、個人のため、チームのため、企業のためというだけではありません。皆さんとあらゆる人々を繋げるためのものなのです。より一層相互接続されたソフトウェアが開発されることで、私たちはネットワーキングされていきますが、これによって様々な業界で破壊的な変化が生まれています。

 例えば教育出版社の方であれば、出版するのに本を作り、その本を卸売に売って、その卸業者が学生に本を配布します。今iPadがあれば、先生が本を学生に直接リアルタイムで渡すことができます。つまり、直接いろんなところでサービス製品を提供できるわけですね。金融アドバイザーであれば、実際に個人の人とコラボレーションができます。医者と患者も、小売業者と客も、直接やり取りができる。ばらばらだった双方が、今はいろんな形で交流することができます。

  Boxがフォーカスを当てているのは、次世代のプラットフォーム。コラボレーションやコンテンツマネジメント、ワークフロー、我々は様々な可能性を提供することができます。情報を安全に保存し、どこからでもアクセスできる。誰とでも共有できる。そして、本当の意味で各業界を変えていけると思っています。

 エンタープライズソフトウェアを作るのであれば、私たちはAPIを用意していますので、各業界向けのアプリケーションを作りやすくしていきます。皆さんとパートナーシップを組んで、難しい問題に対峙していきたいと思います。

 私たちが目の前にしているこのチャンスは、まだ始まったばかり。この業界のビジネスは、出てきたばかりです。どのように市場に入っていくのか、どの業界にフォーカスを当てるのか、どんな業界でも、無限のチャンスがあります。デジタル化への道は始まったばかりなのです。

 以上です。どうもありがとうございました。

後編(Q&A)はこちら



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