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1日1組だけに、最高の福島の味を。福島の食材を守る“オトコ”、フレンチシェフ・萩 春朋に迫る

Yasutaka Nagataki

2015/07/27(最終更新日:2015/07/27)


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1日1組だけに、最高の福島の味を。福島の食材を守る“オトコ”、フレンチシェフ・萩 春朋に迫る 1番目の画像
出典:www.facebook.com
 福島県いわき市に、1日に1組しか入れないことで有名なフレンチレストランがある。「Hagiフランス料理店」だ。1日に1組しか入れないのは、その日に一番美味しい野菜や果物を収穫、それを調理して料理を出すからだ。その日一番美味しいもの以外を提供しないため、必然的に1日1組しか料理を堪能することはできない。

 オーナーシェフ・萩 春朋(はぎ はるとも)は、フランス大統領やモナコ公国大公に料理を提供したことがあるほどの実力者だ。そんな萩 春朋は、一体どのような思いでレストラン「Hagiフランス料理店」のコンセプトを確立させたのか。今回は、2015年8月1日放送のテレビ東京『Crossroad』に合わせ、萩 春朋の考えるレストラン「Hagiフランス料理店」のあるべき姿、そして福島を想う“オトコ”としての萩 春朋の姿をお伝えしていく。

地元の出会い、地元の素材があって成り立つHagi

 野菜や果物の生産者の方へ会いに行き、素材に出会い、栽培方法や品種、美味し良い時期などを教わっています。皆さんのこだわりが、旬のメニューを開発する原動力にもなります。畑の上だからこその発見はたくさんあります。いわきの食材の美味しさを伝えられることも料理人として大事な使命だと思っています。

出典:出会素材収穫 of Hagiフランス料理店HP
 先にも述べたように、Hagiフランス料理店で使われている素材のほぼ全ては、福島県でその日に採れた新鮮な野菜を用いている。当然ながら、「その日一番美味しい」の判断は萩 春朋本人が行うため、萩 春朋は予約がある日は毎日多くの農家へ通う。 

 萩 春朋が福島県の農家へと足を運ぶ理由は、新鮮な素材を確保するためだけではない。農家の人と実際に話をして、農場の様子を実際に観察をすることで、そこから新たなメニューの発想を得るという目的もあるのだ。自分の頭の中・厨房の中だけにとどまらず、実際に足を動かし生の野菜に触れて確かめる、そんな姿はまさしくシェフの“鑑”と言えるだろう。

Hagiを創ったきっかけは「東日本大震災」

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出典:www.facebook.com

 震災によっていつもあるものが無くなってしまい、料理人として地元の素材を守っていく重要性を感じた。料理人として何が出来るかではなく、繋ぐための重要な役割があるのではないか。難しい料理ではなく生産者の形を壊さずに生産者が笑ってくれるような料理を提供しようと考えた。

出典:未来を考えるプロジェクト 報告ノート(3) 萩春朋 ... - 辻調理師専門学校
 萩 春朋がレストランを始めたのは、これが初めてではない。萩 春朋は、1998年に「ベルクール」というレストランをオープンしていたのである。地元の食材を使うということに関しては現在と変わらないものの、当時は対象も地元の人だったという。

 しかし、2011年3月に起きた東日本大震災をきっかけに、萩 春朋の中で何かがかわった。流通が途絶え、同時に客足も途絶えた中で、萩 春朋は地元の食材を「生産する」という立場の人の気持ちを考えた。その結果、萩 春朋は生産者が丹精を籠めて作った食材を、外の人に“最高の形で”提供することが今の自分にできることだという結論に至った。経営するレストランの名前を「ベルクール」から「Hagiフランス料理店」へと変え、地産池消ではなく食材を調理して外へ発信していくようにコンセプトを転換した。
 
 萩 春朋本人が行なっているブログには、「いわきの生産者」というタグが存在しているほどに、地元食材・生産者の紹介がなされている。それだけでなく、Hagiフランス料理店で料理を出される時に、用いられている食材の産地・農家についての説明は欠かさず行っているのだとか。

「加工品」で素材の味をもっと多くの人へ

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出典:www.hagi-france.com

 震災後には全く野菜が売れなかった時期がありましたから、特に佐藤さんや白石さんのようにJA(農協)に卸していなかった農家ではどうしようもなくて、作った野菜を“廃棄”して畑に戻すという状態でした。そういう姿を見ていて、野菜の美味しさをずっと残していけるような商品を作れないかな、と思っていて。試しに加工品を作って、農家の方にプレゼントをしたのがきっかけです。

出典:地元農家との交流から生まれた1日1組限定のレストラン | ココロココ 地方 ...
 福島の野菜を外の人に知らせるためには、必ずしもお店に来てもらって料理を出さなければならないというわけではない。萩 春朋は今、料理だけでなく「加工品」販売にも力を注いでいる。加工品とは、コンフィチュールやドレッシングなどのことを指す。これら加工品からは、萩 春朋のシェフという肩書にとらわれず、純粋に福島の食材を皆に楽しんでほしいという想いが伝わってくる

 現在、これらの加工品はHagiフランス料理店の店頭や生木葉ファームという農場などで買うことが出来る。もし興味がわいたという人がいれば、ぜひとも一度手に取ってみるべきだろう。


 萩 春朋のシェフとして、そして一人の福島を想う“オトコ”として、地元の食材を外の世界へアピールしたいと想う気持ちこそが、萩 春朋を最高のシェフにしている。純粋に地元を想うココロというのが、地元の発展にそのままつながっているのだ。今後の萩 春朋、そしてHagiフランス料理店の展望からは目を離せない。



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