1. 移住したい国9年連続1位「マレーシア」が抱える、巨大な都市計画「イスカンダル計画」の全貌に迫る!

移住したい国9年連続1位「マレーシア」が抱える、巨大な都市計画「イスカンダル計画」の全貌に迫る!

by Kit4na
 財団法人ロングステイ財団の調査によると、オーストラリアやハワイといった人気地域を抑え、日本人が住みたい国ランキングで9年連続1位に輝いているのが「マレーシア」。多民族国家であり、日本よりも物価が安いことが人気の秘密だ。新興国地域と言われている東南アジアの中で、最も注目が集まっている国といっても過言ではない。

 そんなマレーシアは今、ある大きな「改革」に乗り出そうとしている。その名も「イスカンダル計画」だ。第一次アニメブームを作ったとされる某SFアニメを彷彿とさせる計画名だが、内容もやはり壮大である。今回は、2015年7月27日放送のテレビ東京『未来世紀ジパング』に合わせ、そんなマレーシアが持つイスカンダル計画の全容についてお伝えしていこう。

ショッピング、娯楽、大学まで……イスカンダル計画の全容

出典:investiniskandarmalaysia.wordpress.com
 イスカンダル計画の全容はこうだ。まず、イスカンダル計画の舞台となるジョホール州のうち、5つの重点開発部分を決める。そして、その地区ごとに特化する内容を決め、2025年を目処に開発を進めていくというものがイスカンダル計画だ。

 例を挙げるとすれば、A地区であるジョホールバル市には貿易センターやショッピングモールの設置、B地区であるヌサジャヤ地区にはファミリーテーマパークや大学の設置を行っている。イスカンダル計画は、重点開発を行っている地域ごとに、何が設置されるのかが全く違うのだ。

 また、ジョホール州全体でも「コンドミニアム」の建設が着々と進められている。重点開発部分だけでなく、ジョホール州全体がこのイスカンダル計画により、ボルテージの上がった都市となっているのだ。

舞台はシンガポール中心からバスで1時間「ジョホール州」

 マレーシアのジョホール州一帯(面積は 2,217k ㎡で、東京都とほぼ同じ面積)に開発を進めている一大都市開発プロジェクトです。開発期間は、2006 年から 2025年の 20 年間で、累積投資額 10 兆円、計画人口 300 万人ですので、その規模がお分かり頂けると思います。

出典:2013年9月マレーシアの巨大都市開発「イスカンダル計画」
 イスカンダル計画はマレーシアのプロジェクトではあるものの、その内容にはシンガポールが大きく関わっている。ジョホール州は、シンガポールとの国境に位置しているため、シンガポールからの人の流入を意識した計画となっている。先ほどのイスカンダル計画において、A地区に貿易センターを設置したのはこれが理由だ。

 シンガポールは土地が少ない。しかし、経済成長を遂げたシンガポールにはある意味で“余裕”がある。そういったシンガポールに「投資してもらおう」というのがイスカンダル計画の狙いのひとつだ。

 2018年には、シンガポールとジョホール州を走る電車「RTS」が開通予定だ。シンガポールからの経済流入は、マレーシアの掲げるイスカンダル計画において極めて重要な存在だろう。

イスカンダル計画に参入する「日本企業」たち

三井物産は、イスカンダール地域のメディニ地区の都市開発を行っているメディニ・イスカンダール・マレーシア社に20%出資しており(病院事業を共同推進するカザナ・ナショナル社の子会社が60%出資)、同社を通じてスマートシティ(環境配慮型都市)の開発を推進しています。

出典:事業紹介 | マレーシア - 三井物産株式会社
 イスカンダル計画は、これだけ壮大なプロジェクトである。日本企業たちの目も、もちろんこのイスカンダル計画の動向を掴んで離さない。三井物産は自社の掲げる「スマートシティ」の実現に向け、イスカンダル計画のB地区にあたるメディナ地区の開発に出資した。

 また同じくB地区に存在するファミリーテーマパーク内には、サンリオの顔ともいえるキャラクター「キティ」を中心にしたテーマパーク「サンリオ・ハロー・キティ・タン」が建設されている。三井物産が2013年に進出を決めたのに対し、このテーマパークは2012年オープンだったことから、サンリオがイスカンダル計画への参入において一歩先を行く形となった。

 日本の最大級ショッピングモールチェーン「イオン」に至っては、ジョホール州内に既に5つのモールを抱えている。日本でイオンが「大衆向け」としてブランドが確立しているのに対し、ジョホール州でのイオンの立ち位置は「高級スーパー」となっているから驚きだ。日本企業の進出も、イスカンダル計画を大きく後押しする形となっている。

イスカンダル計画は本当に成功するのか

 ジョホールではイスカンダル計画を背景に、すでに多数のコンドミニアムが建設中です。これらのコンドミニアムは、2014年頃から徐々に完成を迎えることになりますが、「一体、誰が住むのか?」という素朴な疑問があります。コンドミニアムの購入者は、そのほとんどが外国人投資家であり、その数は10万人を超えています。実際に自分で住むため、すなわち、実需の購入は極めて僅かです。

出典:スペシャルコンテンツ - グローバルプロパティ
 ここまでの話を聴いていると、イスカンダル計画は非常に魅力的なもののように思える。イスカンダル計画は新興国ビジネスの集大成のような、壮大で夢のあるプロジェクトだ。事実、個人投資家たちも、不動産投資にこぞって詰め寄っている。

 しかし、イスカンダル計画の全てが計画通り進んでいるというわけではない。ジョホール州の治安の悪さはマレーシア内で折り紙付きで、現地の人は誰も住もうとは思っていない。さらに言えば、お隣シンガポールの人たちも住む意欲を見せていない。シンガポール内の公営住宅のほうが、安くて便利だからだ。そう、コンドミニアムを作ったはいいが、住む人がいない可能性があるのだ。

 加えて、現在のジョホール州での主な交通手段は車である。電車などのインフラが整っていないため、これらの地区を移動するのには何かと手間がかかってしまう。どれだけイスカンダル計画の重点開発部分の開発が進んでいったとしても、そこに向かう客がいなければ話にならない。これらの問題を解決しない限り、イスカンダル計画が生むのは「ゴーストタウン」なのだ。


 “イスカンダル”の本来の意味であるアレクサンドロス大王は、かつて「侵略者」と呼ばれていた。イスカンダル計画が迎える顛末は、ある意味で他国の企業に「侵略された」空虚な都市群の完成なのかもしれない。

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