1. 聞き上手が秘める“伝家の宝刀”! 阿川佐和子流インタビュー術:『聞く力―心をひらく35のヒント』

聞き上手が秘める“伝家の宝刀”! 阿川佐和子流インタビュー術:『聞く力―心をひらく35のヒント』

by Dick Thomas Johnson
 誰にでも苦手な人がいるだろう。だが、苦手な人が自分にとってプラスになることも少なくない。苦手な人としていた人でも、一度ちゃんと話してみたら自分の思っていた人と違ったということを経験したことはないだろうか。

 このように、会話という行為は人間関係を左右する重要な行為だ。そして喋りのプロフェッショナルである芸人や落語家というのは、ごく少数の才能がある人だけがなれる職業である。だが、聞き上手なら誰にでもなれるだろう。なぜなら、聞くという行為は自分を表現するという行為ではなく相手を認めるという行為だからだ。

 現在「ビートたけしのTVタックル」(テレビ朝日系)で司会を務め、30回以上のお見合いを経験し、聞くことのプロフェッショナルとなった阿川佐和子は、当初インタビューが苦手であった。そんな阿川佐和子が著した『聞く力―心をひらく35のヒント』では、誰もが聞き上手になれるヒントが阿川佐和子の体験談とともに記されている。阿川佐和子の体験談とそのヒントから、阿川佐和子流のコミュニケーション術を学んでいこう。

聞き上手への近道は、ただ「面白そうに聞く」こと

 阿川佐和子は、読者からの反響が大きい週刊文春の対談ページにおいて、インタビュアーという仕事を任された。しかし、その時は不安で不安で仕方がなかったという。なぜなら、前任者であるデーブ・スペクターのような斬新で鋭い質問をすることは出来ないと思っていたからだ。だが、阿川はあるインタビューをきっかけに目標を持つことが出来た。

 ビジネス書『ビジネスの父より息子への30通の手紙』(新潮文庫)という本が世界的ベストセラーになった際に、その本の翻訳者である城山三郎に阿川佐和子はインタビューをした。このインタビューが、阿川佐和子がある目標を持つきっかけとなる。

 阿川佐和子は、自分がインタビュアーとしてその本を翻訳する際に気を付けたことなど、様々なことを質問する予定であったのに、ついつい自分の話ばかりをしてしまった。終いには、当時の雑誌編集長に悲しそうな顔で「今日は阿川さん、一人で喋っていましたね」とまで言われたという。

 城山は、ただひたすら「そう」「それで?」「おもしろいねぇ」とほんの一言挟むだけで、あとはニコニコ楽しそうに阿川佐和子の話を聞いていた。しかし、それだけというのに、なぜあんなにもぺらぺらと喋ってしまったのかと阿川佐和子は疑問に思った。そこで阿川佐和子が気づいたのは、聞き上手とはデーブスペクターのように切り込んでいくことだけではないということだ。相手が「この人に語りたい」と思えるような聞き手になることが、自分が目指すべき聞き上手への道だということに気づいたのである。そして、それなら自分でも出来そうだと確信を持てた。それから、阿川佐和子は相手の話を面白そうに聞けるような聞き上手を目指すことにしたのだ。

聞き上手になればなるほど、“聞く醍醐味”を味わえる

 「面白そうに聞く」ことで、聞き上手になろうとした阿川佐和子が苦戦したインタビューを紹介しよう。

 ニヒルなことが特徴である俳優・渡部篤郎をインタビューしたときは、阿川佐和子は諦めかけたという。インタビューの際、渡部は少し斜に構えた姿勢でどんな質問にもニヒルだった。阿川佐和子の質問一つ一つに対してちゃんと答えてはいるが、テンションは上がってこない。阿川佐和子はずっとこの状態を打破しようとしていたが、結局出来なかった。だが、対談が終わった後、渡部は阿川佐和子に「非常に話しやすかった」と告げた。そのとき、阿川佐和子は気づいた。

 人は皆、自分と同じ顔で、喜んだり悲しんだり寂しがったりするとは限らない。自分が「楽しくなさそう」に見える人だって、心の中で跳び上がるほど楽しいと思っているのかもしれない。

 話を聞くことで、自分で思ってないようなその人の意外な特徴を知れるのが“聞く醍醐味”である。聞き上手になればなるほど、この聞く醍醐味を味わえるのだ。

聞き上手が実践するインタビューにおける“伝家の宝刀”

 「面白そうに聞く」ことにもコツが必要である。そのコツとは、聞いている相手の人生の癖を見つけ出すことだ。それを実感したのは、阿川佐和子が映画『そして父になる』の監督を務めた是枝裕和のインタビューを行った時だ。

 是枝は、早稲田大学文学部に入学するが、外国語が週に6時間あるためにすぐに行かなくなる。脚本の勉強をするために「YMCAシナリオ講座」に通い始めるが、1年間でやめてしまう。このような是枝の話が連続して続いた。そこで阿川は、「組織に入ると、すぐ嫌になっちゃう人なんですか?」と聞いた。是枝は「そうなんです。最近わかってきたんですけど」と返す。見ている他人はすぐにわかることでも、自分自身でやっていることはわからないものなのだ。この是枝の人生の癖を指摘してからは、会話にテンポが出てきて円滑にインタビューすることが出来た。

 このコツを正しく使えれば、たしかに相手に対して深く相手を理解していることを示すことができる。だが、「あなたってこういう人だよね」と言われてそれが違うときに人は多くの場合怒りを覚える。このコツは相当な自信があるとき以外は実践しないことをお勧めする。


 本書では、阿川がインタビュアーとして歩んできた道がユーモア溢れるテイストで描かれている。読者は楽しみながら、学びながら本書を読むことが出来るだろう。聞く力を生かして、人間関係を良好にしたいと思ったあなたにはぜひ手に取ってほしい一冊だ。


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