1. 毒舌家・古市憲寿が斬る! 「だから日本はズレている」:東京オリンピックから見える日本のズレ

毒舌家・古市憲寿が斬る! 「だから日本はズレている」:東京オリンピックから見える日本のズレ

by striatic
 最近、2020年開催の東京オリンピックに関するニュースを見ていて「この国は大丈夫なのか」と思ったことはないだろうか。厳格な審査、シミュレーションを経たのにも関わらず、総工費高騰によって白紙に戻された新国立競技場のコンペ案。今回の問題は、準備を綿密に進めれば必ず回避できたはずだ。また新国立競技場の建設が白紙化されたことで、2019年ラグビーワールドカップで新国立競技場が使用出来なくなってしまった。

 なぜ、そのような事態がおこってしまったのか。それは、この国には様々な認識のズレがあるからだろう。日本にあるズレの原因に詳しいのは、社会学者である古市憲寿だ。古市が著した『だから日本はズレている』では、様々な日本のズレがシニカルに指摘されている。日本のズレが垣間見えた2020年夏季オリンピック招致活動から、どのようなズレがあるのか古市の指摘を参考に紹介したい。

独自性がなく、ヤンキーノリのズレたオリンピック招致活動

全く日本独自性がない

出典:古市憲寿(2014)『だから日本はズレている』
 振り返ってみると、日本のオリンピック招致活動は「日本に目標を!」「日本中にひとつになる喜びを!」と暑苦しいナショナリズムを煽るようなコピーが多かった。古市はこのコピーに対して、発展途上国を含めたどんな国でも掲げることが出来るかっこ悪いメッセージと指摘し、3・11を経験した国として、新しい資本主義とエネルギー政策の在り方を示すような独自性がある招致活動をすべきだと批判している。

 この暑苦しいコピーは、ライバル国と比べて低い東京オリンピックの国内支持率を上げるための目論見もあった。古市は、EXILEが招致活動の応援キャラクターを務めていたことなどから、ヤンキーノリの招致活動が多かったことを指摘している。だが、支持率50%の戦いではなく、限りなく100%に近い都民の賛同を得るための作戦において、このマーケティング戦略はとても適切と言えるような戦略ではない。しかも、2020年夏のオリンピックは茨城ではなく東京で開催するのだ。ヤンキー票ではなくて、スポーツが嫌いな人まで取り込めるような戦略をすべきだと古市は批判している。

 もっともこの後は、2012年のロンドンオリンピックを境に「この感動を、次はニッポンで!」というシンプルなものに切り替わっていった。晴れて2020年は東京オリンピックに決まったわけだが、それが実際どのようなオリンピックになるのか未知の部分が多い。非常に心配である。

押しつけがましい日本

 オリンピックは、正しい「ニッポン」の姿をPRする絶好のチャンスだ。だが、上記に挙げたことからもわかるように、どのように海外にPRされるのか心配である。日本は昔から、対外的に自分たちを発信するのが決して上手な国ではないと古市は指摘する。このことは、国際文化振興会の活動とクールジャパン戦略からわかる。

日本が孤立していった原因

 国際文化振興会とは、戦前に日本という国を他の国に理解してもらうために発足した機関である。だが、日本文化を「正しく」理解させるためには予算が少なすぎた。それは予算のせいだけではなく、日本側が「良い」と一方的に考える日本文化を伝えようとするばかりの、上から目線での押しつけであったと古市は指摘している。

 このことから、日本の文化は正しく海外の国々に理解されることなく、1933年に日本は国際連盟を脱退し、国際社会から孤立してしまうのである。さらに古市は、戦前のどの文化政策にもマーケティング視点と効果測定をしようとする意志が欠如していたと指摘する。

迷走するクールジャパン戦略

 クールジャパン戦略とは、ジャパンブランドを確立させ、そのジャパンブランドを活用することで外貨を獲得する戦略である。また、そのジャパンブランドの確立をめぐる会議での迷走が押しつけがましい日本を象徴していると古市は指摘している。その会議の2013年時の議事録が、抽象的すぎて何度読み返しても理解できないとのことだ。

 例えば、突然「日本のパンとスイーツというのは世界一なのだ」と言い張る評論家がいた。彼女が日本のパンとスイーツが世界一だと思い込むのは勝手だが、世界ではそう評価されてない以上とても内向きな議論だ。海外で実際に「ジャパン」が、どう受容されているのかという視点が完全に欠如している。この評論家のような内向きな偏った考え方をした人々で会議が進められており、それぞれのクールジャパンのイメージが違うため抽象的になっているのだと古市は指摘する。

 この2つの日本の押しつけがましい姿からわかることは、日本には「正しいと自分が考えるものは、喜んで受け入れてもらえるはず」という勘違いが戦前から根づいているということだ。

勝ち取った2020年夏季オリンピック

 ここまで、日本に生まれるズレの原因のひとつである押しつけがましさを紹介してきた。だが、日本が2020年夏季オリンピックを勝ち取った背景には、成長した日本の姿も写しだされている。その姿が見えるのが、オリンピック招致のプレゼンテーションだ。海外から求められている「ニッポン」を日本人自身がうまく演じきったのだ。それを象徴するのは、滝川クリステルが発した「お・も・て・な・し」という呪文、異国情緒あふれる奇妙なおじぎだと古市は指摘する。海外のニーズに合わせた結果、日本は夏季オリンピックを勝ち取ることが出来たのだ。


 本書では、このような日本のズレの原因がシニカルに具体例とともに、いくつか紹介されている。本書を手に取ってみた方は、古市の皮肉を楽しみながらも日本のズレの原因を理解できるだろう。ぜひ手に取って、もしかしたらズレているかもしれない自分と日本のズレに気づいてほしい。


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