1. デジタル新ビジネスのカギは「再定義」:『10人に小さな発見を与えれば、1000万人が動き出す。』

デジタル新ビジネスのカギは「再定義」:『10人に小さな発見を与えれば、1000万人が動き出す。』

本書は、デジタルで変化している時代の「新常識」を正しく理解するために、エンターテインメント分野から紐解くものです。

出典:山口哲一(2015)『10人に小さな発見を与えれば、1000万人が動き出す。』
 最近、音楽業界の衰退や、テレビコンテンツの衰退などという言葉をよく耳にする。インターネット技術が発達し、無料であらゆるものが視聴できるようになった今、デジタルコンテンツというものはもはや「金」を生むビジネスではなくなってしまったと考えている人も少なくない。しかし、本当にデジタルコンテンツはお金を生まない産業なのだろうか。

 今回紹介する書籍『10人に小さな発見を与えれば、1000万人が動き出す。』では、デジタル化していく今日を生き延びていくため、そしてデジタルコンテンツという新しい波に負けないためにどう行動すればいいのかが解説されている。デジタルコンテンツを通じ、1000万人を動かすためにはどうしたらいいのか、詳しく見ていこう。

ポイントは「再定義」

 デジタルコンテンツが発展することで、音楽やテレビなど、様々なものが「手軽」に視聴できるようになった。この技術開発により、これらのコンテンツは「電子化」の一途をたどることとなった。

 では、今まで使用していたCDや液晶テレビなどの「モノ」はもう必要なくなってしまうのだろうか。事実、CDの売れ行きは悪く、テレビ視聴率も下がっているのが現状である。しかし、「完全に」必要がなくなったのかというと、そんなことはない。

 ここで考えておくべきポイントは、これらのモノは従来と同じ使われ方ではなくなってきたということだ。従来そこに存在していたニーズと、現在のニーズの違いから、これらのモノが持つ役割を「再定義」することこそが、デジタルコンテンツ産業の波に負けないための最重要過程なのだ。

「CD」を再定義する

海外ではほとんど姿を消した、全国規模のCD専門チェーン店が、タワーレコード、HMV、TSUTAYA、新星堂と4社も存続しているのは、驚きの事実です。(中略)このこと自体は、後進性と捉えるのではなく、誇りに思うべきだと思っています。

出典:山口哲一(2015)『10人に小さな発見を与えれば、1000万人が動き出す。』
 音楽産業において日本が海外と圧倒的に違うところ、それはCDが未だに生き延びているということだ。あなたは、タワーレコード渋谷店が日本の観光名所の一つになっていることをご存知だろうか。大きなCDショップが観光名所になってしまうくらい、海外にとってCDが生き残っている日本文化は意外なものなのだ。

 CDが生き残っている大きな要因として、「パッケージの機能」がある。要するに、音楽以外の付加価値が大きいということだ。ブックレットや、歌詞カードの存在は、CDが売れるためには必要不可欠なのである。もはや、音楽を聴くため、という単純な理由でCDを購入する人はいなくなってしまったのだ

 AKB48の「握手券」つきCDに関しては物議を醸しているが、CDに付加価値をもたらして販売することが、デジタルコンテンツに負けないために必要なのである。

「テレビ」を再定義する

多チャンネル化や録画機能の向上によって、視聴者が自分で視聴時間を選べるようになったことで、編成の意味も変わってきています。けれども、ユーザーにとっては、信頼できる「社会の窓」は相変わらずテレビでしょう。

出典:山口哲一(2015)『10人に小さな発見を与えれば、1000万人が動き出す。』
 大きな地震が起こったとき、あなたはどのようにして情報を得るだろうか。おそらく、多くの人がテレビを点け、「NHK」にチャンネルを合わせるのではないのだろうか。

 テレビは今でこそ、「録画」や「オンデマンド」など、その場で試聴することが少なくなってしまった。しかし、情報伝達の速さ、そして正確性に関しては健在であることから、緊急時における信頼性はインターネットの比ではない

 問題は「エンターテインメント」としてのテレビが果たす役割である。著者はテレビ局の増加について、以下のように指摘している。

テレビ番組を電波で届ける送出機能は、社会インフラとして1つか2つあれば十分でしょう。特に各県ごとに系列の地方テレビ局があるのは無駄になりはじめています。

出典:山口哲一(2015)『10人に小さな発見を与えれば、1000万人が動き出す。』
 著者は、今の地方テレビ局のあり方を全面的に否定している。地方という強みを活かさず、キー局と同じような番組制作をしているようでは、地方局が生き残る術はないということだ。

 地方なら、地方ならではの番組制作を心がけるべきだと著者は語る。地元の特性を生かし、個性とアイデンティティに富んだ番組を創ることが、現在の地方局が生き延びる手段であるということだ。


 何もかもがデジタル化されてしまう今日、インターネットにはできないことを考えていかないことには、アナログの産業に明日はないだろう。しかしそれは逆に言うと、「再定義」を仕切れていないコンテンツに手をかけることで、一大ビジネスが生まれるチャンスが存在しているということだ。本書には、文字通り「1000万人が動」くビジネスを提案できる可能性が秘められている。


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