1. たわしの最高級品「棕櫚束子」は○○円! 「最高級」のウラにある、知られざる伝統工芸品のヒミツ

たわしの最高級品「棕櫚束子」は○○円! 「最高級」のウラにある、知られざる伝統工芸品のヒミツ

出典: Amazon.co.jp
 みなさんは、「たわし」の最高級品をご存知だろうか。たわしと言えば、100円ショップで手軽に購入するイメージが強い。それだけに、最高級品のたわしと言えど、高々数百円でとどまると考えている人も多いのでは。

 最高級たわしと称される「棕櫚束子(しゅろたわし)」は、高いものでなんと一つ6000円近くする代物だ。100円ショップのたわしが60個ほど買えてしまうのだから、驚きである。

 今回は、テレビ東京の番組「所さんの学校では教えてくれないそこんトコロ!」の6月5日の放送回に合わせ、棕櫚束子が最高級と呼ばれる所以、そしてそのウラにある「伝統工芸品」のヒミツを紹介しよう。

最高級たわし「棕櫚束子」に込められたヒミツ

出典:takada1948.jp

たわしは固いものというイメージが定着してしまっています。これは、柔らかくやさしい棕櫚たわしを作っている私たちが、その価値をしっかりとお客様に伝えてこなかった責任です。棕櫚という自然のやさしさと、先人たちの育んできた知恵を現代の生活に合わせて共有すること。これが紀州野上谷に生まれた職人としての使命であると考えています。

出典:高田耕造商店|棕櫚への想い -棕櫚のある生活-
 みなさんは、たわしで身体を洗ったことはあるだろうか。恐らくほとんどの人がないだろう。たわしの毛は固いため、身体を洗うと傷がついてしまうからだ。

 しかし、先に述べた「棕櫚束子」は、キメが細やかで柔らかく、またしなやかなので、身体や頭を洗うことを全く問題としないのだ。現に、棕櫚束子の製作元である「高田耕造商店」では、社員全員がこの棕櫚束子を使って身体を洗っているという。ではなぜ、棕櫚束子はここまでクオリティの高い商品なのか。

紀州産「棕櫚」の皮を使用

 100円ショップなど、安価に流通しているたわしは、一般的なパーム(ヤシの木)の繊維を用いて作られている。しかし棕櫚束子の場合、棕櫚という特別なヤシを使用している。それも、紀州野上谷というごく限られた地域に生息している棕櫚のみで作られている

 この「原材料に対するこだわり」こそ、棕櫚束子が最高級と呼ばれている一番のヒミツである。

ひとつひとつが職人によって「手作り」

 100円ショップのたわしは、機械的に作られた大量生産品であることは間違いない。大量生産が出来るからこそ、100円という価格で販売することができるのだ。

 一方で棕櫚束子は、熟練の職人がひとつひとつ丁寧に手作りしている。当然、大量生産をすることはできないため、値段が上がってしまうのは避けられない。しかしその分、棕櫚束子は「職人技」の光る逸品に仕上がるのだ。

棕櫚束子の抱える「悩み」

 伝統工芸品には、後継者不足や大量生産技術の発展など、様々な悩みがつきものである。1948年の創業以来、棕櫚束子の製造を続けている高田耕造商店も例外ではない。

職人の不足、「毛捌き機」の不足

 機械での大量生産実現により、手作りでたわしを製造する「たわし職人」が年々減少している。このたわし職人の減少により、ある一つの問題が発生した。それは、棕櫚の繊維を太さによって分別する「毛捌き機」を製造する人がいなくなってしまったということだ。

 現在、高田耕造商店で使われている毛捌き機はわずか1台だ。もしこれが破損してしまうようなことがあれば、棕櫚束子の生産数は今よりもさらに少ないものとなってしまうだろう。

「国産棕櫚産業」の縮小、棕櫚山の退廃

日本最大規模の家庭日用品産業がある和歌山県海南市は、元々は棕櫚のたわしやほうき、縄などの産業をきっかけに発展してきました。しかし、現在では棕櫚製品を製造する企業は数えるほどしかなく、紀州産のシュロを使用した商品の取り扱いは高田耕造商店を除いてありません。

出典:高田耕造商店|紀州棕櫚山再生プロジェクト
 今では大量生産が可能となったたわしだが、もちろん昔は全て手作りで生産されていた。加えて、以前は棕櫚を用いたたわしが一般的だったという。しかし棕櫚が不足し始めると、安価なパームが用いられるようになったという。そして今では、棕櫚を押しのけてパームを用いたたわしが一般化されてしまったのだ。

 棕櫚の無くなってしまった棕櫚山は、再生がなされることなく放置され、退廃してしまった。伝統の手法を守り続け、棕櫚束子を作り続けていた高田耕造商店は、失われていく棕櫚産業と棕櫚山を復活させるべく、今も様々な取り組みを行っている。

 最高級たわしの名を欲しいままにしている棕櫚束子であるが、そのうちに秘められた苦悩は計り知れない。棕櫚束子をきっかけに、日本の伝統工芸品が抱えている「今」を知るきっかけとなれば幸いだ。

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