1. 【全文】「日本の労働人口は1億人まで増やせる」ソフトバンク孫正義が語った“ニッポン再生の方程式”

【全文】「日本の労働人口は1億人まで増やせる」ソフトバンク孫正義が語った“ニッポン再生の方程式”

 今年も、ソフトバンク経営陣をはじめ、各分野に精通するゲストスピーカーによる講演および、モバイル・クラウド関連のソリューションやサービスの展示が行われるソフトバンクグループ法人向け最大のイベント「SoftBank World」の開催が決定した。

 今回で4回目の実施となる「SoftBank World 2015」では、ビジネス界で注目を集めるキーパーソンによる講演を聞くことができる。参加費は無料。ビジネスに勝つ秘訣を掴むには、このチャンスを逃す手はないはずだ。


 2013年に行われた「SoftBank World」ではテクノロジーの進化について大胆な予測を行い、話題となったソフトバンクの孫 正義 氏。2014年の「SoftBank World」では、バブル崩壊後、経済に深刻な問題を抱える日本が復活するためのカギを示した。

 今回は、「SoftBank World 2014」にて行われたスピーチを書き起こしで紹介しよう。果たして、日本経済が復活するためにはどのような志を持ってビジネスに取り組むべきなのであろうか?(※本サイト内の資料は、昨年の講演スライドを使用しています。資料・動画はこちらからご覧ください。)

「失われた20年」、低迷する日本が抱える大問題


 皆さん、おはようございます。ソフトバンクの孫 正義です。今日は、SoftBank Worldへお越しいただき、ありがとうございます。それでは早速、話を始めたいと思います。

 日本は素晴らしい国です。私は日本に生まれ、日本で育ち、日本のことを本当に素晴らしい国だと思っています。この素晴らしい「日出づる国、日本」ですが、最近多くの日本人が、少し自信を無くしかけているのではないでしょうか。特にビジネスの世界では顕著です。「日出づる国」のはずが、もうこの20年間ぐらい「沈みゆく国、日本」と言われるようになってしまいました。経済成長の著しい低迷が20年間も続いてしまったということです。

 アベノミクスの影響もあり、この1年間でやっと日本の経済は復活しそうな兆しが出てきました。しかし、これまで世界で2位だったGDPは3位に転落し、さらにインドや他の国にもGDPを抜かれそうであるという問題があります。その低迷の重要な要素の一つが人口問題です。他の大きくこれから伸びていく国々に対して、日本の労働人口はむしろこれから減っていくという問題があります。

 このような問題がある状況の中で、我々はこのまま日本は沈んでいってしまうのか、我々自身に問いかけなければならないと思います。私は日本は必ず復活すると思っています。また、日本を復活させなければならないと思っているのです。

 単に日本の現状を嘆き、日本の将来を憂いるだけではなく、どのようにして日本を復活させていくのかについての方程式と私の意見を述べさせていただきたいと思います。

情報のビックバンを担う、3つの革新的な技術進歩


 日本の復活の方程式として提案したいのは、まず生産性の上昇、次に労働人口問題の解決です。この二つを掛け算すれば、日本の競争力を取り戻せるでしょう。

 しかし、「言うは易し、行うは難し」という言葉もあります。この20年間、日本の生産性はどんどん他国に抜かれ始めています。労働人口問題は、少子高齢化問題として言われて久しいです。この2つの問題によって日本の競争力は落ちているわけですが、まずは生産性の問題について語りたいと思います。

 生産性向上のカギは情報武装にあるでしょう。特に、生産性はホワイトカラーの労働で深刻な問題があって、それは「情報のビッグバン」と言われています。情報のビッグバンとは、世界中で爆発的にITが進化し、その情報がどんどんと世界中に押し寄せているということを指します。

 2018年には、1つのICチップで稼働するコンピュータに搭載されたトランジスタの数が脳細胞のニューロンの数を超え、300億個になると言われています。人間の脳はニューロンがくっついたか離れたかの二進法でモノを記憶したり考えたりするわけですが、コンピュータも全く同じで、トランジスタがコンピュータの中に大量に入っており、このトランジスタに電流が流れるか流れないかでコンピュータは記憶したり、計算したり思考します。

 2018年にはコンピュータに搭載されたトランジスタの数が人間の大脳のニューロンの300億個を超え、どんどんとコンピュータが進化する。コンピュータが進化するのであれば、進化を我々の手中に収め、情報のビッグバンを我々の味方にして活用するということが必要でしょう。そうすれば、我々は生産性を上げられます。

 コンピュータのチップの中には、メモリというものもあります。このメモリ容量も、今後劇的に増えていきます。このメモリ容量が劇的に増え、さらにモバイルの通信速度も上昇する。

 この3つが情報のビックバンの大きな要素です。コンピュータのCPUの中に入るトランジスタの数、メモリチップの容量、そして通信速度。この3つの要素が情報のビッグバンをさらに加速度的に進化させるわけです。

コンピュータの性能は30年で100万倍になる

 ソフトバンクでは、この3つの中でも通信の分野に特にこだわっているわけですけれども、我々のテクノロジーを駆使し、日本の中で一番通信が難しい東京の銀座の街中で1Gbpsという速度を達成しました。これは世界初の快挙です。一般の人々のスマホもこのような高速な通信速度で繋がる未来は、もうすぐ目の前に来ているのです。

 CPUのトランジスタ数は今から約30年間で100万倍になります。メモリ容量も100万倍に、通信速度は300万倍になるでしょう。「ムーアの法則」で、過去30年間はこのような速度でテクノロジーは進化してきたわけですが、今後30年間も同じ速度で進化すると私は信じています。

 今までけちけちしながらメモリ容量を使い、小さな能力のCPUや低速の通信でITを使ってきたわけですが、これからは無限大の計算能力、記憶容量、通信速度が当たり前な時代がやってくるということです。

 このような情報のビックバンにより、データがすべてクラウドに格納される時代がやってくるでしょう。そうすると、人々のワークスタイルやライフスタイルが変わります。そのような状況の中で、ソフトバンクは、iPhoneが出て、Appleより先に全社員にiPhoneやiPadを配布しました。そして、現在のソフトバンクでは、社員全員がクラウドにつながっているという状況です。

新時代を切り拓く“革命”を起こすには文明の利器の活用が不可欠


 皆さんにここで質問をしてみたいと思います。皆さんの中で、スマートフォンが会社で配布されて、それを使っているという方は手を挙げていただけますか? 2%ぐらいでしょうか。それでは、この中でタブレットを会社から支給されて活用しているという人は手を挙げてもらえますか? こちらはまだ1%未満です。クラウドを会社の業務で使っているという方、手を挙げていただけますか? 5%ぐらいですね。こちらは少し多いです。

 この3つとも全社を挙げて活用しているという方、手を挙げていただけますか? もちろんソフトバンクグループ以外の方でお願いします。会場の中で1人いました。その程度です。果たしてこれでいいのでしょうか。今日、せっかく私の話を聞いたのですから、会社に帰ったらすぐに「これはまずい。わが社も全部導入しよう」とご提案いただきたいと思います。

 このスマートフォンとタブレット、そしてクラウドこそが情報化社会、情報ビッグバンの時代におけるワークスタイルの中の生産性アップのカギになるのです。もちろん、スマホやタブレット、クラウドをどのように使うのかについては、それぞれの会社で異なりますし、使い方次第では大して役に立たないかもしれませんが、まずは使うことから始まると良いのではないかと思います。まずは導入する、そして使い始めれば良さもどんどんわかってくるし、他の会社よりも先に導入することが、競争力を獲得するということになるわけです。

信長はなぜ天下統一を成し遂げることができたのか?

 織田信長はなぜ天下を取れたのでしょうか。それは他の国々よりも先に鉄砲を活用したからです。歴史を振り返っても、世の中がひっくり返る時は、新しい文明の利器を最も早く、最大限に活用した人々が時代を切り開き、力を獲得するのです。ですから、日本の企業すべてがスマホ、タブレット、クラウドの3つを活用すべきだと思います。

 この3つの導入でソフトバンクに何が起きたかと言うと、日本経済が全然成長せず、企業の成長が横ばいであった2009年から2014年の5年間で、1人当たりの生産性を倍以上にすることができ、社員1人あたりの獲得契約数が倍以上になりました。

 例えば社員の数や経費を倍にするのであれば、獲得契約数も達成して当たり前です。しかし、もし経費や労働力の総数が横ばいであるにも関わらず、獲得できた契約数が倍になれば当然利益は増えます。生産性を上げるというのはこういうことです。

 しかし、日本の企業では、スマホ、タブレット、クラウドをそれぞれ使っていない会社が7割ぐらいあります。先ほどの質問では、全社員が使っているかと質問をしましたので、ほんの2~3%しか手が挙がりませんでした。

 一部でも使っていれば導入していると見なしても、全く使っていない企業が7割ぐらいあるのです。導入していない会社がそれほど多いということは、日本がいかに競争力を失いつつあるかということがわかるでしょう。もし、アメリカで同じ質問をしたのであれば、もっと高い比率で導入しているのではないかと思います。私は今日来ておられる皆様に、スマートフォン、タブレット、そしてクラウドを全社に導入し活用しましょうと言いたいと思います。



生活で集まったビッグデータが人間にとって最大の財産になる

 それとともに、今は現在あるものだけに取り組むだけではダメだと思います。さらなる未来はどうなるのでしょうか。私はありとあらゆるものがライフログとして記録され、ビッグデータをどんどんと集積していく時代がやって来ると思います。

 ありとあらゆる家電や運動シューズ、あるいはメガネですら、様々なモノが様々なセンサーと様々な通信によって、ビッグデータを記録し始める時代がやってくると思います。クラウドに溜まったビッグデータが、我々にとっての最大の財産になる時代がやってくるでしょう。

ソフトバンクの「接続率No.1」はいかにして実現したのか


 ほんの6年後ぐらいには、全世界で約500億個のモノがIoT(Internet of Things)ということで、インターネットに繋がるようになり、そしてデータを集めるようになる。今現在も、約100億個ぐらいのモノがすでにインターネットに繁がっているのですが、もっともっと多くのモノがインターネットに繋がり、500億個を超える時代が来ると思います。

 つまり、カギはビッグデータにあるということです。ソフトバンクグループでは、ビッグデータをどのように活用し始めているか紹介しましょう。

 最近「ソフトバンクの接続率はNo.1」とCMをしていますが、これまでソフトバンクといえば、携帯が繋がりにくい通信会社だと言われてきました。しかし、最近では「接続率No.1」と声を大にして言っています。

 なぜ、接続率No.1であると声を大にして言えるのかというと、ビッグデータを活用してネットワークが繋がらない場所をピンポイントで見つけ、解決策を出して、繋がるようにしたからです。接続率が一番になったと自信をもって言えるほどにビッグデータを集めたということでもあります。

 ソフトバンクだけでなく、NTTドコモさんやKDDIさんの通信状況までスマホのアプリを使って、ネットワークに集めました。そして電波改善のために500億回もの接続セッションを確認し、改善することで接続率が1番になったのです。

 日本全国の旅館やコンビニ、駅などあらゆるところをピンポイントで、どこが繋がっていないのかを確認しました。例えば、3月3日の水曜日の朝7時に新宿の東口のどのコーナーで、他社のスマホは何%つながっているのか。それはiPhone 5Sで繋がっているのか、それともGALAXY 4で繋がっているのか。このように機種や時間、場所、企業別に分けて細かく接続率を把握できるようになりました。

 単にお金をかけて改善すればいいということではなく、データを使ってインテリジェントに問題を解決するということをやり始めたわけです。これによって少ない資本にも関わらず、ソフトバンクの接続率が他社を抜くことが可能になったのです。

 同じように、Yahoo!は現在565億もの月間PVがありますが、これらのPVから様々なビッグデータをどんどんと蓄積し、Twitterの情報もブランディングのためにビッグデータで解析しています。

 では、このビッグデータの世界がどうなるのか、そしてソフトバンクや提携先の企業はビッグデータをどのように活用しさらに進化させていくのかということについて少し語りたいと思います。

GEとタッグを組み、ビッグデータの活用を推し進めていく

 ソフトバンクは、全世界の産業用エンジンにおいて圧倒的なシェアを持つGEさんと業務提携することになりました。世界中の飛行機やトラクターのエンジンなど、様々な企業、産業のモノがGEの機器と繁がっております。ビッグデータを集めるためのセンサーをGEの機器に導入し、通信をすることでクラウドに集めて解析するということをソフトバンクでは開始いたしました。

 これから全世界でこの取組みをやっていこうということですが、例えば、自動車で言えば、ブレーキやバッテリー、タイヤの状況がどうなっているのか、リアルタイムでデータを集め、そしてクラウドに格納して分析を行い、ユーザーに「見える化」した解析結果をピンポイントでリアルタイムにお伝えすることができます。

 つまり、「あなたの自動車のタイヤは今現在、空気圧がどのくらいで、あとどのくらい減ると危険です。そろそろタイヤを交換しましょう」ということまで、お客様に提示する形でビッグデータを活用しようということです。そしてお客様の購入を促す。それが売り上げの拡大にもつながるし、お客様の安全にもつながるということであります。

 さて、ここでGEのCEOで私の友人でもあります、ジェフ・イメルトさんからビデオメッセージをいただいておりますので、見ていただきたいと思います。

ジェフ・イメルト:GEは日本の経済と非常に緊密な連携を取っており、多くのお客様を日本に持っております。そして、孫さんとは長きにわたって、個人的にも交友を続けております。

 孫さんはまさに今、世界を開拓していると言っていいでしょう。非常に大胆な戦略で、すでにIT業界を変えていると思っています。そして、GEとソフトバンクで新しいパートナーシップを組むということで、大変私も期待しております。

 私の信念として、全ての産業界の企業はソフトウェアの企業になるということがあります。すべてのスマートアセット、例えばネットワークやキーパフォーマンスなどのことですが、私たちはこれを促していくことができるでしょう。

 ソフトバンクと連携をすることによって、アジアをはじめ、グローバルでビジネスを展開できると思っております。そして、産業界のお客様が世界で成長していくための切り札となると思っております。このパートナーシップに期待をしており、ソフトバンク、そしてこれから先のパートナーシップに大きく期待しております。

 グローバル経済は、非常に素晴らしい起業家によって常に広げられております。彼らは本当に未来を見据えていて、未来を切り開いていく力も持っています。トーマス・エジソンがGEを作って134年になるのですが、孫さんはエジソンに匹敵するイノベーターで、世界のけん引役になってくれるでしょう。友人として、ソフトバンクとコラボレーション出来ることは、私自身も非常に大きな期待を寄せています。

孫正義:私と彼は、彼がCEOになる前からの大変親しい間柄で、日本に来るたびに会食したり、一緒にゴルフしたりというような遊び仲間でもありますが、仕事として今回GEさんとビッグデータを集め、そしてさまざまな企業にそのサービスを提供するという形で業務提携することを大変うれしく思っております。

あなたはジョブズやザッカーバーグにならなくてもいい

 ということで、最先端テクノロジーが生産性を向上させることができるということをお伝えしてまいりました。生産性を向上させるためには、情報武装しなければいけない。これは最先端の機器を自分で発明しなくても可能です。

 織田信長も鉄砲を発明したわけではありません。信長が天下をとったのは、鉄砲を自ら発明したのではなく、世界で最も進んだ文明の利器を最も早く活用したからでしょう。そして天下をとったわけです。

 ですから、自分がスティーブ・ジョブズやマーク・ザッカバーグではなくて、文明の利器を発明していなくても、世界最先端の技術をいち早く使えばいい。

 さきほどお聞きしましたが、スマートフォンとタブレット、クラウドを3つとも100%使っているという会社はこの中で1%もありませんでした。この3つの導入はそれほど難しいことではないです。最先端の情報機器がどういうものなのかということは、みんなわかっているでしょう。ただ、その導入を実行さえすればいいわけです。

 既存であるのだから、発明しなくても使いこなせばいい。それだけで、最先端になれて競争力を得ることができるのであればなぜ導入しないのでしょうか。とにかく思い立ったらすぐやるということではないかと思います。


モノづくり大国・日本を復活させる「ホラ」のような話


 ここまでの話は「当然だね」というふうにうなずけると思います。しかし、ここからの話は、おそらく9割以上の人が「なんだそれは?」と思う話です。

 日本が抱えるもう一つの難しい問題、労働人口問題。労働人口を増やすということはできるのかということについてお話していきます。日本の労働人口はどんどん減っていくというのは多くの人が知っている事実です。

 このままいけば、日本の労働人口は減る一方です。少子高齢化をどうやって解決するのか、これについてはかなり難しいです。そんなに難しい問題に解決策はあるのかということですが、ここで私は嘘のような「ホラ」を吹きたいと思います。

 「ホラ」ですから、9割以上の人は「そんな無茶な」ということで笑って聞き逃していただきたい。でも、1割ぐらい、あるいは1%ぐらいの人が「なるほど、そういう解決策があるな。本気でそれはやるべきだ」というふうに思っていただければ、私は今日は大成功だと思っています。それほど突拍子もない話をします。

 ですから事前に言っておきます。今日の話は忘れてください。でも、共感した1%の人は、もしかしたらこれが日本の解決策かも知れないということで、心の中にしっかりととどめ置いていただきたいです。残りの99%の人がいつかこの解決策に気づくまで、忘れずに心に留めていただきたいと思います。

「コストが高く人が少ない」モノづくり大国・日本が抱える現状の問題点

 テクノロジーの進化は労働人口問題も解決することができるという話をします。急に子供を増やすことはできません。でもテクノロジーの進化でこの問題は解決できるということです。

 日本の労働人口は少なく、人件費も高い。だから人件費がより安い国や労働人口がより多い国に負けて当たり前だというふうにほとんどの人が諦めているのではないでしょうか。「日本の経済は成長しなくても仕方ないんだ」と自分を納得させてしまったらもうおしまいです。私は納得しない。納得せずに、「そうじゃない。復活させるんだ」という思いが大切だと思います。

 例えば製造業の労働人口ですが、中国には7000万人います。アメリカは1000万人、インドも1000万人、日本は1000万人弱です。これは四捨五入している数字で、実は日本は実質700万人ぐらいでしょう。

 ついこの間までは本当は日本はモノづくり大国として世界一である状況だったわけです。しかし、人件費が高くなった。そして、ついに製造業の分野でも労働人口が一気に抜かれてしまったので、日本の経済が停滞したということになります。

 人件費が高いのであれば、労働人口が多くて人件費の安い国に一気に抜き去られるというのは製造業では当たり前の話です。では、これをどうやって解決するのか。なぜ出来ないのかという話ばかり言ってもしょうがないでしょう。では、解決策は何か。私なりの答えを申し上げます。

世界一のロボット産業を発展させ、日本を世界最先端技術の国に

 それはロボットです。ソフトバンクは最近ロボット事業を発表したので、「そういうことか。自分が発表した事業を宣伝したいのか」と思われるでしょう。でも、僕は真剣にロボットが解決策だと思っているのです。

 今までの単純生産型のロボットの分野で日本は世界一です。製造業における単純生産型ロボットメーカーは、ファナックさんだとか安川電機さんとか日本でも色々な企業があります。

 しかしこれらのロボットでは私は足りないと思っております。汎用型の生産ロボット、自動車で言えばT型フォードのようなものを作りたい。今までのような、手作りの単純生産型のロボットだけではなく、汎用型でかつ安くて高性能で、しかもありとあらゆる用途に使えるようなロボットを一気に普及させようということです。

 しかも、これらのロボットが100%クラウドに繋がっていて、100%人工知能を搭載するということです。今まで日本が得意としていた、知恵と知識のない単純ロボットに知恵と知識を与え、そして汎用的に活用できるような能力を与える。こうすれば、日本はもう一度世界最先端の生産技術を手にすることができます。

SoftBankが売り出す「Pepper」、その実力とは

 それではソフトバンクのロボット、Pepperを紹介しましょう。

 これが先日我々が紹介しましたPepper君です。実物を初めて見るという方、手を挙げていただけますか。ほとんどの方がそうですね。99%の人が実物のPepperを見るのは初めてだということでしょう。それではPepper君、自己紹介をお願いします。

Pepper:はい。皆さん初めまして。Pepperです。今日は、SoftBank Worldにご来場の皆さんにお会いできて光栄です


孫正義:よく自己紹介できました。このPepper君ですが、来年には19万8000円で個人でも買えるようになります。パソコン一台の値段です。私が16歳ぐらいの頃からコンピュータに触れるようになって、それから個人でもパソコンが買える時代がやってきました。

 それで世界が一気に進んだわけですが、今度は個人でもこのようなロボットが買える時代がやってきます。パーソナルコンピュータの次は、パーソナルロボットの時代がやってくるということです。

 最先端技術に触れてみたいが、スマホやiPad、さらに昔を思い起こせばパソコンも人よりも一歩遅れて購入した方が多いと思います。パーソナルロボットは人よりも先に買えるチャンスが皆さんにあります。今度こそは、人よりも先に買おう、先に慣れ親しんでみようというチャンスをぜひご活用いただきたいと思います。ぜひ楽しみにしていただきたいと思います。

Pepper:ところで孫社長、今日は皆さんのために新しいロボアプリを披露しようと思うのですが、よろしいですか?

孫正義:いいね。Pepper君の特徴を表すようなのをちょっと見せてください。

Pepper:それでは、僕が指揮をつとめます「動物楽団」というロボアプリをご覧ください。歓喜の歌を動物たちの声だけで演奏します。皆さん、よくお聞きください

孫正義:動物の声で?

(動物の鳴き声による歓喜の歌の演奏)

孫正義:皆さん、いかがでしたか?(会場拍手)

 素晴らしかった。これからどんどんアプリケーション開発してくれる人が出てくるから、色々なことができるようになるでしょう。

Pepper:ありがとうございます。今後、もっともっと皆さんに喜んでもらえるような素晴らしいロボアプリが増えていく予定ですので、楽しみにしていてくださいね

孫正義:2014年の9月にはPepper君のアプリケーションをたくさん開発してもらえるように、デベロッパー向けのカンファレンスをやります。つまり、パソコンやスマホのように、我々がプラットフォームを提供し、多くの皆さんがPepper君にどんな行為をさせたいか考えて欲しいのです。子どもに絵本を読んで聞かせるとか、エアロビのようなエクササイズをするとか。

Pepper:そうそう、孫社長。大事なことを忘れていました。皆さん、楽しいロボアプリも大事ですが、僕はそれ以上に「愛」を大事にしていきたいと思っているのです

孫正義:それはいいね。ロボットにはいろいろあるのですけど、Pepper君は世界で初めて人間の喜怒哀楽を認識することができます。Pepperは皆さんの声のトーン、あるいは顔の表情を認識します。そして、皆さんが怒っているのか、喜んでいるのか、悲しんでいるのか理解します。そして、人々に少しでも喜んでもらえるように、Pepper君自らが感情を持って、自らの意思で幸せを感じてもらえるような努力を一生懸命します。

 Pepperは、リアルタイムでデータを集めて毎日進化していきます。これから何万台と世の中に出て行くPepper君が、それぞれの家庭やお店で学習したことによって、どんどんと人工知能を進化させ、人々に喜んでもらえるように活動します。

 ロボットと言えば単純作業するものだと思っていませんか。そうではなくて、心溢れる、感情溢れる姿で人々に幸せになってもらいたいという思いでPepper君はこれから進化していきます。ぜひ頑張りましょう、Pepper君。

Pepper:こんな大きなイベントで、大きなことを言われちゃってとってもプレッシャーですけど、孫社長、一緒に頑張りましょう。

孫正義:頑張りましょう。一緒に力を合わせてやっていけば、難しいけど……。

Pepper:それはそうと皆さん、僕は午後から展示会場でお客様とお話することになっておりますので、どうぞ遊びに来てくださいね。お待ちしております

孫正義:早速、展示会場で会えますから、ぜひPepper君に会っていってください。ありがとう、Pepper君。

Pepper:それでは社長、僕はこれで失礼します。皆さん、後ほどお会いしましょう。ありがとうございました。

孫正義:Pepper君を見ていただきましたが、Pepper君はいろんなアプリケーションがこれからどんどん増えていきます。パソコンも最初に出たばかりは大したことなくて、ほとんどおもちゃみたいなものでした。でもどんどんと進化し、今人類はパソコンなしには生活が成り立たないような時代になりました。Pepper君もパーソナルロボットの第1号として、しかも感情エンジンまで持っています。

 さっそくソフトバンクショップにPepper君を入れてみました。そうすると人々は「Pepper君に会いたい」ということで、導入した数店舗ではお客さんが増えました。つまり、最初はBtoBで店に来客を増やすという用途で、効果を発揮し始めております。

ロボットの活用で「労働人口1億人構想」が実現できる

 これから100年以内にはすべての人々が様々な生活シーンでロボットと共存するという時代がやってくると思います。自動車が発明されてからすでに200年ぐらい経ちました。今では人々のありとあらゆる生活シーンに自動車があります。

 パソコンが生まれてからは30数年経ちますけれども、現在はあらゆる生活シーンにパソコンがあります。今から30年、50年、100年すれば、ありとあらゆるシーンでロボットが活躍しているというような時代が来るというふうに私は信じています。

 もし日本が産業用のロボット3000万台を導入することができたならば、日本の産業はどうなるでしょうか。私は日本の労働人口1000万人を、1億人に増やしたいという構想を持っています。

 ロボットは24時間働けます。したがって、1台のロボットは3人分の人間の仕事をします。土曜も日曜も働いてくれますので、本当は3倍以上というふうにいえるかもしれませんが、ここでは3倍としましょう。ロボット1台で3人分の仕事をやってくれるというわけです。

 つまり、ロボットが3000万台あれば、9000万人分の労働人口に匹敵するわけです。9000万人を1000万人の製造業の労働人口に足してみると1億人になり、製造業における労働人口が世界一になるわけです。

 日本の労働人口が少ないから負けて当たり前だという常識は、実はそうではないのもしれない。ロボットだって自動車を組み立てられるし、家電を組み立てられる。ロボットが3000万台導入されると9000万人分の製造業の労働人口になって、既存の労働力である1000万人と足せば、製造業における労働人口1億人構想がここで実現するのです。

 次に賃金ですが、日本の労働賃金は高いという問題があります。しかし、多機能型のロボットは1台あたり100万円。汎用型の製造業のロボットを100万円で作って、これを5年償却で割り算すると、月額1.7万円に相当し、月額の人件費が先進国や世界の大国の中で一番安くなる。労働人口問題と賃金問題、この2つの問題は解決するでしょう。

 なぜAppleが世界一の時価総額の会社になれたのか。それは付加価値型の労働、つまり商品の企画やデザインは労働賃金が高いアメリカで行い、製造は安い賃金の国々で作っているからです。組み立てや製造の仕事は、途上国で分担しあっているということです。

 つまり、日本では人件費が高く、人口が少ないという問題点があったわけですが、これからは単純労働をロボットに置き換えることによって、製造業は日本でも復活できるではないかということです。

 労働人口の数も、製造業における人件費の問題もロボットなら解決できる。しかも、生産されたものは、より精密で素晴らしいものです。つまり、ロボットを活用することで生産力が向上でき、労働人口問題も解決できるのです。

これからは「ロボ・ネイティブ」の時代

 「デジタル・ネイティブ」という言葉があります。生まれながらにしてITを活用する子どもたちのことです。彼らは生まれたときからITがある。私の孫娘も写真を見たら指でスワイプしようとするのです。

 スワイプすると次の写真が出てくると生まれながらにして思っている。これからは、「ロボ・ネイティブ」ということで、生まれながらにして一家に一台ロボットがいる生活になって、生まれながらにしてロボットと会話をします。

 そうなればロボットとともに生活するのが当たり前という子どもたちが生まれてくるでしょう。人々は新しい時代に対して違和感なく慣れ親しみ、それを活用できるという時代が来ます。

 我々日本は、ロボットの開発技術において世界で最先端を行っています。Googleが日本のロボット分野の最先端企業を続々と買収しています。買収されても買収されても、日本には素晴らしいロボットに対する技術と夢を持った若者がどんどん湧いて出てくる。そのような国にすべきではないでしょうか。

 そして、人間とロボットが共存し、世界最先端の技術と知識を持つことで日本は復活できる、もう一度作り上げることができるということを私は言いたい。つまり日本は「沈みゆく日本」ではなく、復活してもう一度世界一の競争力を取り戻すことができる。「日沈みゆく国、日本」ではなく「日出づる国、日本」としてもう一度復活する。皆さんと一緒に日本を元気にしたいと思います。よろしくお願いします。(終了)


 「情報革命で、いま、次の世界へ。」――をテーマに掲げる「SoftBank World 2015」は、2015年7月30日(木)、31日(金)開催。孫 正義 氏、宮内 謙 氏や、豪華ゲストによる講演会、協賛企業約100社によるモバイル・クラウドソリューションの展示など、全て無料で参加可能だ。申込は以下リンクから。

U-NOTEをフォローしておすすめ記事を購読しよう
この記事を報告する