1. なぜリクルートはイノベーションを起こし続けられるのか? 表彰制度を“フォーラム”と呼ぶ理由に迫る

なぜリクルートはイノベーションを起こし続けられるのか? 表彰制度を“フォーラム”と呼ぶ理由に迫る

 近年、さまざまな企業で、ナレッジマネジメントや企業ビジョンの浸透を促すための施策が行われている。社員一人ひとりが持つ知識や経験を、どのように会社全体で共有するか。あるいは、企業のビジョンをどうやって社員に広めていくか。これらは重要な課題になっている。

 リクルートグループでも、上記2つの視点から、「トップガンアワード」という表彰制度を運営してきた。しかしこの4月から、イノベーションのさらなる加速を意図して、その仕組みを大きく変えるという。 


 ナレッジマネジメントのあり方は、過去とこれからでどう変化するのか。リクルートホールディングスコンピスタンスマネジメント部の巻口隆憲氏に話を聞いた。 

多様なジャンルのトップ事例を共有する

 リクルートグループで実施されてきた「トップガンアワード」。これは、顧客接点(トップガン)の分野を中心に、新サービスや新商品につながる成果を出した案件を選出するものだった。しかし、2015年度からは名称を「フォーラム」へと変更。あわせて、「制度の規模を大きく広げる」と巻口氏はいう。 

 「これまで行ってきた顧客接点のほかに、「テクノロジー部門(エンジン)」、「事業開発・改善部門(グロース)」、人事・財務などの経営スタッフを対象とした「経営基盤部門(ガーディアン)」という3部門を追加。計4部門において、それぞれ同形式の施策をスタートします」


 フォーラムでは、リクルートグループ各社から、それぞれエントリーを受け付ける。その後、審査を重ねて、最終的に選出される案件は10件前後。各部門において、広く共有すべき「兆し」といえるような新規事例を中心にピックアップするという。

 ではなぜ、ここに来て4部門へと対象を広げたのだろうか。巻口氏は、その理由を以下のように説明する。

 「顧客接点だけでなく、ITや事業開発、経営スタッフなど、さまざまな分野のスキルが競争優位を作り出しています。そのため、多様な分野のプロフェッショナルを発掘して、そのジャンルごとを共有することによって、よりスキルを共有することによって、よりスキルを高めていくことを考えています。そこで、対象部門を増やし、各ジャンルの“トップオブトップ”といえるスキルや事例を共有することにしました」(巻口氏)

 さらに、4部門に増やしたことで、今まで以上に従業員全員がアイデアを生み出しやすくなる環境も期待できるという。

 「自分とは別ジャンルのトップスキルを見ることで、『あの人たちと組めばこんなことができるんだ』という発見が生まれます。それにより、ジャンルを超えたチーム作りが促進され、クロスファンクションが起こりやすくなるはず。いわば、“異脳”の人たちが集まったチームを形成しやすくなると考えています」

 各ジャンルのトップオブトップを共有することで、その分野全体のスキルを底上げする。さらに、ジャンルを超えた知識共有をすることで、異分野のチーム化を円滑にする。1部門から4部門に規模を拡大した背景には、このような考えがあったようだ。

名称変更にこめられた、フォーラムの意義

 「フォーラム」では、大きな変更点がもうひとつある。それは、すべての案件が選出された後、新たに議論の場を設けたことだ。

 「トップガンアワードをやってきて、社員からよく聞かれたのが、『なぜそんな高い目的を掲げたのか』という言葉でした。困難な目的を設定した理由や動機、どうしてその案件をやり遂げられたのか、というストーリーですね。この“why”の部分こそ、もっとも共有すべき要素。そこで今年から、事例を紹介するだけでなく、議論の時間を追加して、より深くwhyの部分を捉える機会を作りました。名称を“アワード(賞)”から“フォーラム”(公開討論会・評議会)へと変えたのも、そのような思いがあります」

 「フォーラム」では、東京国際フォーラムや豊洲PITなどの会場を使って共有会を行う。議論に参加するのは、特定の社員や外部の識者などに限られるが、それでも、「その模様をなるべく多くの社員にライブで見てもらうことが大切」と巻口氏は語る。

 「議論を見る中で、それを自分の仕事に照らし合わせてほしいんですね。自分のロールモデルになる人や案件を探して欲しいんです。高いスキルを身につけたり、高度な案件をこなしたりするには、自分なりのwhyを見つけることが必須。そのためにライブの場では、一人一人がストーリーを“自分ごと”として考えてもらえると嬉しいですね」
 案件やスキルを共有するのはもちろんだが、もっとも共有したいと考えているのは、その案件を達成した人たちの動機やストーリー。議論によってそれをつまびらかにし、その場にいる社員たちが自分なりの「why」を見出す時間としていく。

 過去の事例を共有するのであれば、イントラネットなどを使う形でも可能といえる。その方が時間も短く、従来の業務にも支障が出ないはずだ。しかし、重視するのは、能動的に共有すること。巻口氏は、「ティーチングではなく、ラーニングの場を作りたい」と語る。

 「私たちの企業の特徴は、『個の可能性に期待し合う場』であると考えています。そういった企業文化の中で、社員が自分なりの高い目的を見つけることは欠かせません。それこそが、新しいイノベーションの原動力になります。今回の制度変更は、様々なジャンルのトップレベルを選出して、彼らのwhyを共有することが最大の理由。それにより、自分なりの高い目的を見つける場になればいいと思っています」

 各個人が高い目的を掲げ、成長の機会を作る。そのためのロールモデルを共有することもナレッジマネジメントのひとつといえる。そういった施策は、やがてイノベーションを加速させることにもつながるはずだ。リクルートの「フォーラム」は、そんな機会を作る場となるだろう。


(提供:リクルート)

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