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導入されても使えないなら意味がない。男性も利用できるはずの「育児短時間勤務制度」の現状

Haruka Sato

2015/04/13(最終更新日:2015/04/13)


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by Manu praba

 仕事も子育て、どちらも諦めずに両立したいと願う人々の強い味方、それが育児短時間勤務制度だ。それまで一部の企業のみが実施していた短時間勤務が制度化し、大企業では2010年に施行され、中小企業では2012年に施行された。

 これは、3歳までの子を養育する労働者について、勤務時間の短縮制度を設けることを事業者の義務とする制度である。これによって、労働者には1日の所定労働時間を原則として6時間とする措置が必ず用意されることとなる。
 
 厚生労働省の調査によれば、平成24年度には62.4%の事業所がこの制度を導入しているということだ。子を養育する労働者であれば、男女ともに利用できるはずのこの制度だが、果たして活用されていると言えるだろうか?

利用者はやはり女性がメイン

 この制度が義務化される以前から、短時間勤務制度をおいている企業もあった。2009年3月に行われた21世紀職業財団の調査によれば、この制度を利用できる状況にある女性の利用率は7割を超えている一方で、男性はわずか1割強となっている。

 利用者の大半が女性であるという状況は、制度が義務化された現在も変わりがない。2012年度の人事院による調査によれば、育児短時間勤務制度を新たに利用した職員は、前年度より73人増加した390人であったが、その内訳は男性10人、女性380人と圧倒的に女性が多い。

 一体何が、男性の短時間勤務制度取得を妨げているのだろうか?

なぜ、男性が短時間勤務制度を利用しがたいのか

 男性が短時間勤務制度をなかなか利用できない原因は、以下のようなものだと考えられる。

1. 家計への影響

 短時間勤務制度を利用すれば、労働時間は確実に短くなる。それに従って、多くの企業では給与も減ってしまう。

 子どもが生まれれば当然何かとお金がかかるものだ。子どもや家庭を思う気持ちがあれば、一層金銭的な不安が重くのしかかってくるのではないだろうか。

2. 認知度が低い

 2013年度の厚生労働省の調査によると、現在の勤務先の制度の内容について「あまり知らない」「まったく知らない」と答えた男性正社員は74.9%にものぼる。

 短時間勤務制度という措置が法律で義務付けられたこと自体に対しても「あまり知らない」「まったく知らない」と8割弱の男性が答えている状況では、たとえ子どもと関わる時間を増やしたいと考えていたとしても、その手段を見つけられないだろう。

3. 業務の性質上、所定の時間内に終わらない

 業種や業務内容によっては、育児短時間勤務制度で定められている6時間程度で終わらせるのが難しい場合がある。これは、制度を運用するにあたって企業側でも苦労している点であるようだ。

 21世紀職業財団の調査では、制度運用で苦労していることとして「業務の違いにより、制度の利用しやすさに差がある」と答えた人事担当者は58.1%と最も多い。

 それに続く41.9%となっているのが、「代替要員を確保することが難しい」ということ。これらの問題をできる限り解決するため、短時間勤務制度を利用している人の8割弱は「仕事を効率的に進める」よう気をつけているが、それでも補えない場合は利用を断念するしかないだろう。


 以上に述べた3つ以外にも、職場に迷惑がかかる、その期間どのように評価されるかわからないなど、制度利用後の職場関係やキャリアについての不安を持っている人もいる。

 男性が「あえて」育児短時間勤務制度を利用していないというよりも、利用しやすい仕組みができていないために利用できていない、と認識すべきではないだろうか。

 そんな中で、賞与や評価基準を勤務形態に関係なく一律にしているサイボウズや、6時間労働制を導入するが、給与は8時間労働と同じ水準で支払われているスタートトゥデイなどの企業がある。

 義務化された制度を導入するだけでは意味がない。今後は、制度を利用しがたくしている要因を取り除ける企業が、よい人材を集め成長していくことになるだろう。

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