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「素直さ」が強いメンタルをつくる――ストイックなあなたに、メンタルトレーニングのススメ【後編】

Yudai Imamura

2015/03/09(最終更新日:2015/03/09)


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 今回のインタビュー相手は、アスリートだけでなくビジネスマンへのメンタルトレーニングも行っているというメンタルトレーナー、石津貴代さん。海外では、ビジネスマンがメンタルトレーニングを行うことは一般的らしい。だが、具体的にはどのようなトレーニングを積めばいいのだろうか?

 石津さんによれば、ビジネスマンの置かれている立場によってメンタルトレーニングの内容は大きく異なるそうだ。また、これまで数多くの方のメンタルを見てきた石津さんは、成功している人のメンタルには共通点があると語る。彼女の言葉から、どんなジャンルにも通用するメンタルの鍛え方を探っていく。




――お客様によってトレーニングの内容も異なるとのことですが、事業責任者や役員など、リーダー層の人に対してはどのようなトレーニングを行っていますかか?

 リーダー層には、自己肯定感が足りていない方が多いです。皆さん大変な努力をされてトップに立っているから、一見自信があるように思えますよね。でも実際には、本人は自分の能力に不満を感じていたり、「理想の自分になるためには、まだまだ実力が足りていない」と思って自らを追い込んだりしています。だから、「このままこの会社を続けていけるかな」とネガティブにもなってしまう。

 上の立場に立たれている人は、抱えているものがすごく多い分、自分に構う時間がないんだと思います。会社のことや部下のこと、家族のことを考えて毎日一生懸命働いていますけど、自分のことになるとわからなくなる。経営者としての自分には自信があるけど、一個人としての自分を考えると途端に不安になってしまうようですね。

 そこで、自己肯定感を高めるために自分の長所や成功パターン、あとは生まれた時から現在までの成功体験を全部、バーっと文字に起こさせます。その人がこれまで、どれだけのことをやってきて今に至るのかを整理してもらうのです。

 すると次第に、「よくやってきたなー」と感じるようになり、それが落ち着いて自信のある心理状態に変わります。自然とモチベーションが上がったり、自分に対する否定的な感情が取り除かれたりして、「俺、結構頑張ってるじゃん」と安心して帰る方がたくさんいらっしゃいますね。リーダー層の方達は一度これまでやってこられたことを認識して、さらに自信をつけて上のステージに行く、という作業が多いと感じます。


――では、営業マンの方にはどのようなトレーニングをしていますか?

 営業マンの方には、まずは自分の強みをしっかりと確認してもらいます。お客様で特に多いのが、保険業界の営業マン。彼らが対象としているお客様はすごくタイプの幅が広いから、自分と相性が合う年代や性別があるんですよ。そういうところも営業をする上では強みになるから、把握しておけばすごくプラスになりますよね。でも、皆さんそういうことを全く考えず、やみくもに頑張っているんです。

 だから、例えば自分のハマっている趣味は何かとか、自分がすぐ仲良くなれる年代層や性別とか、過去の経験から自分はどうやって結果を出していたか、とかを一度全部整理させます。そして、それを今のビジネスにどう繋げられるか考えていくと、新しい営業スタイルが生まれてくるんですよね。

 自分の持ってる本質や、好きなこと、得意なものを全部融合したスタイルなので、営業マン自身が楽しんで仕事ができるようになる。それがお客様にも伝わるので、「気が付くとお客様から紹介を受けました」とか、「お客様が楽しそうに話してくれる」という声をよく聞きますね。


――U-NOTEは、ある程度仕事にも慣れ始めた社会人3年目くらいの人をターゲットとしています。仕事に対して“マンネリ感”を抱き始めるのもこの世代には多いと思うのですが、そのような時のモチベーションを保ち方を教えてください。

 大前提としてあるのが、その人がその仕事を好きだということ。メンタルトレーニングは目標達成や自己実現のためのトレーニングなので、「目標ありき」になっています。なので、目標がない人にはトレーニングができません。それを前提とした上でのモチベーションを高めるための方法は、「目的(目標)と手段」を常に分けて考えることです。

 例えば、「可愛い水着を着る」という目的のためにダイエットをする女性がいたとします。しかし、「水着を着る」という〈目的〉を見失ってしまうと、食事制限しなきゃ、トレーニングしなきゃ、と〈手段〉ばかりに目が向き、義務感ばかりがどんどん募り、モチベーションが低下していくんです。ビジネスでも同じ。もしこのような状態に陥ってしまったら、「元々何のためにやりたかったんだっけ?」と当初に抱いていた目的を再認識してみるといいですね。

 おそらく社会人の方も、最初は会社に入って、自分の理想としているビジネスマン像を持っていたはず。でも実際に仕事をしてみて現実を見ると、「思っていたのと違う」と感じることが多いのでしょう。そんな時は、自分がこの先どういう人生を歩んでいきたいのか〈目的〉、そうなるためには今の仕事にどう取り組んでいけばいいのか〈手段〉、ということを改めて考えると、モチベーションが向上するのではないでしょうか。


――これまでアスリートからビジネスマンまでたくさんの方のメンタルトレーニングを担当してくる中で、仕事にかかわらず成功を収めてきた人のメンタルには、何か共通点があると感じましたか?

 間違いなく言えるのは、「素直」なことです。トレーニングを始めてからすぐ結果が出る方に共通しているのは、ものすごく人の話を聴いて、言われたことをとりあえずやってみるところ。そのトレーニングに効果があるのか判断するのは、やってみてから。でも効果が薄い人の多くは、「今の自分にそのトレーニングは必要ない気がする」などと理由をつけ、トレーニングをやるかやらないかを自分で決めてしまいがちなんですね。

 学生スポーツチームへ指導していても、1軍と2軍の境界線に近い実力がある素直な子は、こちらの指導を即実践して、あっさりと上の子を抜いてしまうことがよくあります。でも逆に、プライドが高い人は下の子に抜かれてから焦り始めるんです。元プロアスリートの方に話を聞いてみても、「メンタルトレーナーがチームにいたけど、現役の頃は恥ずかしくてやらなかった。あの時メンタルトレーニングをやっていれば、まだ現役でやれたと思う」と言う方が結構多いんですよね。

 だから、結果が出ない、成功しない人に多いのは自分のプライドを大事にしているタイプでしょう。メンタルを鍛えるためには一度弱い自分と向き合わなければならないので、素直さよりも自分のプライドを守ってしまう人にとっては、あまり効果は期待できません。「とりあえずやってみて、良いか悪いかは後で考えよう」ぐらいの気持ちで取り組んでもらえればいいと思います。素直な方は本当にすぐ結果が出るので、見ていて面白いですね。

石津貴代(いしづ・たかよ)さん プロフィール

Lieto-Mental Conditioning 代表 メンタルトレーナー
1979年生まれ。20歳の頃から務めていたスポーツ番組のラジオパーソナリティの仕事を通して、大舞台で力を発揮できないアスリートを目の当たりにしてきた。その経験から、目標・夢を実現するための「メンタルの重要性」に気づく。25歳で会社員を辞め、メンタルトレーニング・カウンセリング・コーチングを学び、数多くのトップアスリートがいる現場にて実習を積んだ後、独立。現在はプロ野球・プロテニス・ラグビー等のトップアスリート、経営者やリーダー層のトップビジネスパーソンを中心に50名以上と個人契約。ジャンルを問わず、様々な方へのメンタルトレーナーとして活躍中。

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