1. 『21世紀の資本』トマ・ピケティ氏による世界的な格差社会の考察とは

『21世紀の資本』トマ・ピケティ氏による世界的な格差社会の考察とは

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 「格差社会問題」は、日常的にニュースに取り上げられるほど社会に浸透しています。これは、日本だけの問題ではなく欧米諸国においても同様です。「格差社会問題」が世界的に深刻な問題とされている中、経済学書『21世紀の資本』が出版されました。

 経済学の学術書であるにもかかわらず世界的ベストセラーとなった『21世紀の資本』。著者である経済学者トマ・ピケティ氏による「世界的な累進資本税制」というのはどういった考えなのか、この本をもとにピケティ氏の考察を一部ご紹介します。

富の集中と資本の格差拡大

 著者は、格差が生じる原因を歴史的な側面から分析を行いました。すると、資本主義には、第一次世界大戦と第二次世界大戦の時期を除き、ある程度一貫した法則をもっていることが明らかになったそうです。それは、資本は常に労働よりも分配が不平等というもの。

 たとえば、フランスでは富の62%を上位10%の裕福な層が所有しており、下位50%の貧しい層に関しては富を4%しか所有していないという状況でした。アメリカはさらに深刻で、富の72%を上位10%が所有しており、下位50%は富を2%しか所有していないそうです。

 労働による賃金の格差より、資本の所有による格差の方が非常に偏っているということがわかるでしょう。

「r>g」格差が拡大する原因とは

 格差は今後拡大し続ける一方なのでしょうか。著者は、「r>g」という不等式を用いて、そのことについて考察しました。

 「r」は、資本の平均年間収益率を「g」は、経済の成長率・所得や算出の年間増加率をそれぞれ指します。資本の平均年間収益率が経済の成長率を大きく上回ると、格差が拡大するリスクが高くなるそうです。

 人口の増加率の低下と、それに伴う「g(成長率)」の低下によって、21世紀は格差が拡大するだけでなく、19世紀と同程度の不平等な社会になる可能性があると著者は述べています。

世界的な累進資本税で解消できるか

 「r>g」という状況から脱する手段として、単純に民間の資本収益率を下げるような重い税を課すという方法があります。しかし、それを強制的に政府が行うと、成長率が下がってしまうだけでなく、事業を立ち上げる人も居なくなってしまう可能性もあるでしょう。

 それを防ぐため、解決策として著者が導き出したのが累進資本税を導入するという方法。具体的には、純資産100万ユーロ以下には0.1もしくは0.5%、100〜500万ユーロの財産には1%、500〜1000万ユーロの財産には2%、数億〜数十億ユーロの財産には5もしくは10%の税を課すというものです。

 肝心となるのが、この累進資本税は国を超えて世界的な規模で行わなければいけないという点。現代の格差は一部地域だけの問題ではなく、世界的な問題であるため、国際的な協力が必要だと著者は述べています。

 この方法は理想として優れていますが、すぐに適用できるものではありません。グローバル時代の、一種の世襲的な富の蓄積を続ける資本主義。それを脱して資本に対する累進資本税を進めるためには、国際関係の透明性や、地域的な政治統合の必要性があるでしょう。


 『21世紀の資本』は学術書であるため、歴史的な分析から結論に至るまで詳細に書かれており、非常にボリュームがあります。「格差社会」が当たり前になりつつある現代に警笛を鳴らすこの本は、いまこそ読むべき一冊でしょう。

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