1. ルールがないなら、独自の考えを――”体育会系”代表理事が語る、正しい仕事の「根性論」【後編】

ルールがないなら、独自の考えを――”体育会系”代表理事が語る、正しい仕事の「根性論」【後編】


 根性を持って仕事することは確かに大切。だが、「一生懸命続けてさえいれば、必ず成果は出る」と思い込んでいては危険――。チャリティーランニング大会を企画・運営する一般財団法人PARACUPの代表理事、森村ゆきさんは、仕事における「根性の使い方」についてこのように語っている。

 「バスケ一筋だった」学生時代で培ってきた根性を武器に、仕事を始めたばかりの頃はとにかく時間をかけ、一心不乱に仕事に取り組んできた森村さん。しかし、それでも成果が出ない時、彼女は一生懸命頑張ることが仕事の目的ではないことに気づいたと言う。自らの失敗経験から導き出した、仕事における根性の正しい使い方について彼女にうかがってみた。




――森村さん自身、やみくもにやり続けるだけの働き方ではダメだと気づいたきっかけは何だったのでしょうか?

 前職で営業を始めたばかりの頃は一生懸命だったけど、やり方については深く考えずにいたから、思うように結果が出なかった。そこで、上手くいっている先輩に秘訣を聞いてみたところ、その人はいつも上司に良いやり方を聞いていたんです。でも、私はそれを恥ずかしいことだと思ってしまった。スポーツでも、上手い人にやり方を聞くのをためらってしまうこと、ありますよね? これは、自分のプライドが邪魔をしているからなんです。

 何を聞いていいのかわからないし、そういう人の多くはそもそも「自分はできる」と思っていますから。だから、やってみてできなかったことに対して、「できないんだ」と認めるのもなかなか難しいでしょうね。でも、仕事における目的は「自分が一生懸命頑張ること」ではなく、「成果を出すこと」。そこをはき違えてはいけないんです。

 そんな私に先輩は、「それだけやって成果が出なければ、やり方が間違っているか、成果が出るまでもっとやり続けるしかない」と言ってくれました。その時に初めて、一生懸命やっても結果が出ないのは、努力が違う方向に向かっているからだと気づいたんです。軌道修正をしながら仕事をしていくために、まずは自分で立ち止まって考えて、上手くいっている人がどんなやり方をしているのかを聞くことが大切だと教えられました。

 社会人にとっては、仕事を通して自らが成長していくことが人生の楽しみでもあるはず。それに、お金をもらっているからには成果を出さなければいけない。そう考えれば、「自分のプライドが邪魔して聞きに行けない」なんて感情自体、ありえないと気づきますよね。


――では、森村さんが考える理想的な“根性”の使い方は?

 根性は、誰でも持っているはずなんです。だけど、以前の私もそうだったようにほとんどの人が「指示してくれさえすれば、100%どんな辛いことでもやりますよ」というスタンスで、「自分で考える」ということをしようとしない。特に、根性だけでやってこれちゃった体育会はね。社会に出ると、スポーツのようにルールなんてないし、やり方をコーチみたいに教えてくれる人もいないから、何をすればいいのかわからず困ってしまうんです。

 極端な話、スポーツと違ってビジネスでは、相手の準備が整っていない内にスタートを切るのもありだし、人数制限だってない。「正々堂々と戦うことが正しい」という考えを持ち、そこに100%力を注ぐのは間違った根性の使い方だと思っています。特に、ずっとスポーツをやってきて、根性もやる気も向上心もある人が社会に出ると伸びない理由の一つは、そこにあるんじゃないかと思ったことはあります。

 部活をやっていた人ならわかると思いますが、監督のことは盲目的に信じてしまいますよね。反抗なんてありえないし、それが常識だと決め付けてしまっている。でも、社会では言われたことだけをやればいいなんて、ほぼありえない。スポーツでも、一流の選手は監督から与えられたこととは別に、独自の考えを持っているもの。そういう風にしていかなきゃいけないですよね、スポーツでも、仕事でも。


――森村さん自身、これまでを振り返って「働くこと」に対する考え方はどのように変わっていきましたか?

 学生の頃は、「仕事は楽しいものだ」と思ってはいませんでした。会社の選び方も、どんな仕事をするのかもわからなかった。とにかく会社に入って、与えられた仕事をやっていけばお給料がもらえるものだと考えていましたね。自分が創意工夫をして作っていくものだとは思っていなかった。

 だけど、PARACUPの運営に携わり始め、色んな人達と出会う中で考え方が少しずつ変わっていったんです。そもそも、当時はランニング大会をつくること自体がすごくクリエイティブでした。一つ一つ自分で考えて決めていくこと、そしてそれがちゃんと形になることがすごく面白いと感じるようになりました。


――今後、PARACUPをどのようなイベントにしていきたいと考えていますか?

 もっと多くの人にランニングを楽しんでもらいたいですね。そして運営メンバーには、イベントを一から作り上げていくことの面白さを実感してもらいたい。このイベントを通して彼らには、私のように仕事の楽しさに気づいてもらい、将来の色んなことに活かしてもらえたらと思っています。

 また、PARACUPで集めたお金によって、世界の子どもたちに提供できる選択肢の幅を広げていきたい。彼らは生きるか死ぬか、学校に行けるか行けないかという選択肢の中で生きています。しかし、集めた寄付金によって教育が受けられるようになると、例えば今まではゴミ拾いしか仕事がなかった子どもも、勉強して字が読めるようになり、ファーストフード店で働くことができるんです。このように、子どもたちの人生の選択肢が増えていくきっかけを生み出していきたいと考えています。

森村ゆき(もりむら・ゆき)さん プロフィール

一般社団法人PARACUP 代表理事
2004年、人生初のマラソンとしてホノルルマラソンに出場。その後、「走る喜びを多
くの人と味わいたい!」という思いから、RUNとチャリティーを融合させた「PARACUP~世界の子どもたちに贈るRUN~」を友人達と立ち上げる。自身も走ることを楽しみ、多くの人に走る楽しみを伝えるとともに、「走ることで人生を変えよう!」を提唱している。

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